信長を包囲せよ
第48話 17-1
河内高屋城でお菊は心眼、弥生らと明智光秀の代理の溝尾茂朝らに挨拶に行ったがお菊は茂朝とは何の会話も無くお菊が感じるには何かすっきりせずに終わった。
ただ、お菊、おいちと雑賀衆、お凛ら堺衆は石山本願寺の命で直ぐに本願寺へ帰還したのである。
お菊らが本願寺に戻って間もなく、1572年の初夏だが高屋城の畠山秋高、高政兄弟の支援に来ていた三淵藤英、佐久間信辰(信盛)、溝尾茂朝(明智光秀)の部隊も京に撤収したのである。
三好康長と三好義継もそれに合わせて軍を撤収させたのである。
結局、高屋城は河内における幕府、織田信長の城として摂津中島城と共に残ったのである。
ただこれに対して本願寺の中でも三好三人衆にも誰も咎める声を上げなかったが。
お菊だがひとり何か違和感を感じて居たが。
それでもお菊だがやっと静かになるかと思えばそうならなかった。
本願寺に戻ると加賀越中(石川県富山県)の一向宗に荷駄を運ぶ手伝いを任されたのである。
石山本願寺に集まったたくさんの物資を支援のために送るのだが淀川を船で上り京の南の巨椋池を経由して陸路乗せ換え逢坂を通り琵琶湖の大津まで運び更に琵琶湖の水運を牛耳る堅田衆の船に乗せ換えて移動し越前の朝倉領の大浦湊で降ろしてまた陸路を加賀越中に届けるのである。
運ぶのは加賀越中の一向宗が欲しがった鉄砲などの武器であった。
お凛ら堺衆は堺に戻り堺で生産された追加の鉄砲、硝薬、弾を集荷した後、淀川を上る川船に本願寺の支援物資と共に黙々と積み込んだのである。
「お凛の奴、意外と馬力はあるな」
「堺衆は米とか酒とか鉄砲とか意外と重い物を運ぶから力はあるんだな」
積み込みを手伝った小次郎と平助が感心しながら言った。
「まぁ、お菊とおいちは馬力は無いな」
「動きが早いのは取り柄だがな」
平助と小次郎は重い荷物に四苦八苦するお菊とおいちを見ながら言った。
「ふぅ。積み込んだで。ちゃんと加賀越中まで届けてや」
お凛は後は任せたと言わんばかりにおいちとお菊に言った。
「お任せや!アンタも来たらええのに」
「ウチは船は絶対に乗らん!ここまでやね」
船が嫌いなお凛はおいちの誘いも断り船に乗るのを拒否したのである。
「おいち。あたしも本音を言うと行きたくない」
しかしお菊も小声で言ったのである。
「なんでやねん。この航路はめちゃくちゃ安全やで」
おいちは怪訝そうな顔をしたが
「これさ?おかしくない?」
お菊は口を尖らせたのである。
織田信長だが京から東の琵琶湖を含む近江は浅井長政の小谷城以外はほぼ押さえていた。琵琶湖も信長の勢力圏である。
なお信長は石山本願寺とは和睦したが長島願証寺とは敵対している。加賀越中の一向宗も今は国を接してないので争っていないが本来は信長の敵である。信長が敵対する朝倉義景もかっては加賀の一向宗とは争っていた。
しかし信長は甲斐の武田信玄と同盟していた。武田信玄は越後の上杉謙信と敵対、信玄から信長は謙信を牽制して欲しいと頼まれていた。だから謙信を牽制するため謙信に逆らう越中の一向宗門徒衆に物資を送るのを信長は許可したのである。
朝倉義景だが以前は加賀の一向宗と敵対していたが今は組んでいるとも噂されていた。朝倉に荷駄が横流しされる可能性もあったが信長はそれでも信玄を気遣って加賀越中に物資を届けるのを許したのである。
信長の許可も取っており河川航路なので安全とおいちは言ったつもりであった。
「明智殿の坂本を通るんでしょ?あそこには行きたくない」
「心眼さんやおふうさん、阿形さん吽形さん小次郎も来るんやで!大丈夫やって!」
おいちは軽く言ったが
「なんか安全の割には随分と面子が充実してない?」
「!ま!何があるか分からんしな!」
おいちはなんか言い訳がましく言った。
「ところで弥生さんと冬さんはどうしたのかな?別の船に乗ってたけど?」
「弥生さんと冬さんは今回は別の任務やねん!」
おいちは軽く返したが
「なんか隠し事してない?」
おいちにお菊は顔を思いっきり近付けたのである。
「ない!いひひ!」
おいちが笑ってごましたが。
「怪しい。小次郎に聞くかな。でもあいつ政治はからっきし疎いからな」
「お菊殿!お気持ちは察しますが作戦の手前おおっぴらに出来ないのです。ご容赦を!」
今回のおいちの副官の船団長が横から入ったのである。
(おいちの奴、一応雑賀の姫だから作戦絡みでなんか隠し事があるんだろうな。なんか最近は理由有りの戦ばかりだしさ)
お菊だがぶつぶつ思いながらもこの日はとりあえず下がったのである。
翌日早朝、船団は本願寺の湊を出て淀川を琵琶湖を目指して登ったのである。
「よかったわ!アンタがおらんと暇つぶしにならんからな!」
おいちはお菊が文句を言いながらも乗船したのに安堵してたが。
「暇つぶしの相手とかひどくない?もう。まぁ仕方ないよ。これが仕事だもん」
「そ!うまく行けば4日で越前大浦に着くわ。荷駄を降ろしたらすぐに大阪に帰れるし」
おいちは軽く言ったが
「すぐに大阪に帰れるってほんと?」
お菊が聞くとおいちはぎくっとした後
「ほんま!」
軽く返したが。
「おいち!心眼殿の船に乗った女子(おなご)は誰よ?」
おいちはお菊の問いに再度ぎくっとしたが。
お菊は心眼らの船に見た事が無い女子が乗るのを見たのである。
「お菊!勘違いやって!男の船に女子は乗せないがな!」
おいちはとぼけようとしたが
「あんたの立ち位置は分かるけど何か企んでるでしょうが!あんた嘘をつくと顔にすぐに出るからさ!」
「そ、そのお。雑賀の衆もお金を稼がなあかんやろ?だからちょっと難しいお仕事もせねばね。えへ!」
「なにさ?その難しい仕事って?」
お菊が怪訝な顔をすると
「お菊殿!私が話しましょう。実は」
おいちの横に居た船団長が話を始めたのである。
1572年の春だが顕如は表向きは織田信長と友好を演じていた。正式に和睦まで行い信長が京に屋敷を建てた頃は信長に茶器や軸を送り重臣の下間頼龍をも使者に遣わせた。
信長の力で将軍になった足利義昭も最初は信長とうまくやっていたが延暦寺の焼き討ちの頃からすれ違いが始まっていた。義昭の配下の奉公衆の中でも信長のやり方を野蛮で強権的と感じ反発する者が現れたのである。
義昭も自分の思うように政治をやらせてくれない信長に不満を募らせていたのである。
義昭だが密かに事もあろうが敵だった朝倉義景、浅井長政、三好三人衆や松永久秀、石山本願寺にも味方するよう声を掛けていたのである。
遠くの甲斐(山梨県)の武田信玄や安芸(広島県)の毛利輝元にも自分に味方するよう声を掛けていた。
義昭だが将軍の権威を盾に密かに信長に反抗する機会を伺っていたのである。
石山本願寺だが今まで敵だった義昭からの密書にどう返すか散々揉めたが決断したのある。
義昭だが延暦寺の天台座主だった覚恕から信玄に権僧正という高い官位を与えてもらったのである。覚恕は正親町天皇の弟だったので顕如は朝廷の意思も感じたつもりであった。
信玄だが権僧正になったのもあり延暦寺の再建を主張し信長の延暦寺焼き討ちを天魔の所業と非難したのである。
更に顕如の正室の如春尼は信玄の亡き正室の三条の方の妹であった。顕如も信玄に付くしかなかったのである。
「本願寺は武田と組むの?心眼殿が朝倉義景公の一乗谷、長政公の小谷城、飛騨の武田領の高山城に行くの?で、その間は(琵琶湖北端の)越前大浦湊で待機?すぐに大阪に帰れないじゃん!おかしいと思った!」
船団長から話を聞き終えるとお菊は膨れたが
「仕方ないやん。(本願寺の)お偉いさんが決めた事やで」
おいちは悪びれず言ったが。
「なんで隠したのよ?素直に言ってくれれば良いのにさ」
「だって信長公の気が変わってウチらを捕まえようとしたら力で突破せねばあかんやん!アンタがおれば突破できるから来て欲しかったんやで!」
「信長公の勢力圏から逃げるなんてそう簡単に行かないってさ!」
お菊は再度膨れたが。
「で、あの女子は誰なのよ!」
「甲斐から信玄公の親書を持って来たって」
「武田領にある諏訪大社の歩き巫女とか言う間者(スパイ)です」
おいちと船団長が返すと
「あの娘はこれからどうすんの?」
「詳しくは知らん。心眼さんと一緒に行動するって」
「将軍様の(返しの)親書を持ってるので武田の支配地域まで護衛するとか」
おいちと船団長が再度返すと
「もう!なんかとんでも無い大事(おおごと)じゃん!」
お菊は膨れっ放しであったが。
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