第10話 4-3

 この日はたんぽ槍を使っての修行である。今までもやっているので何でもない修行だが

「今日はお互いに向き合って手合わせしましょう。敵のたんぽ槍の動きを読んでそれをたんぽ槍で防ぎながら隙を見て突くか足を切り払います」

 参考に清澄と悠然が手合わせして見せた。

「本気出しちゃだめですよ。特に突きは修行でもケガしますよ」

「胴丸をちゃんと着てくださいね。あと顔は絶対ダメですよ。お嫁に行けなくなりますからね」

 清澄と悠然が牽制した。


 お菊だが他の女子と軽く手合わせした後

「お菊!相手してや!」 

 お凛に手合わせの相手を頼まれたのである。

「良いけど?」

「謝謝!行くで!やああ!」

「わ!」

 お凛だが本気で来たのである。お菊は慌ててたんぽ槍の動きを合わせるが防戦一方である。

 お凛だが薙刀の経験があるようで慣れた手つきでたんぽ槍を操ったがお菊はそれを器用にかわしていたのである。

(さすがや!ホンマに人を殺ってんな!早いしちゃんと抑えてるわ!)

 お凛はお菊に感嘆するもますます燃え上がったのである。

「凛凛!力入れすぎ!ちょ待ち!」

 逆にお菊はお凛に慌てて返したが。

「こら!お凛!加減しなさい!」

「これは練習ですよ!」

 清澄と悠然もお凛に注意したが

「ウチはあんたの本気が見たいねん!」

 お凛はお菊に怪しく言うとお凛は何度かお菊と手合わせした後に

「おりゃあ!」

 手早くお菊のたんぼ槍を横に無理にそらして隙を一瞬作ると自分のたんぽ槍を振り下ろしたのである。

「痛い!」

 たんぽ槍はお菊の右肩に降ろされお菊は痛さで尻持ちしたのである。

「こら!お凛!本気出したらダメですよ!お菊に謝りなさい!」 

「上半身はダメ!お顔を狙ったら絶対にダメです!」

 清澄と悠然が怒ったが

「へへん!すまんね!お菊の可愛いお顔はちゃんと外してるから安心せいな!でもとりあえずウチの勝ちやね」

 お凛は勝ち誇ったように言ったのである。

 しかし

「いや。お菊の勝ちだね」

 悠然が言うと

「何でやねん!ウチがお菊の肩に当てたやろ!」

 お凛が怒ると清澄はお凛の胴丸を指差したのである。

「へ?」

「お菊のたんぽ槍がお凛の横腹に先に当たってる。お凛がたんぽ槍をそらした瞬間にすぐに折り返しで入ったね。薙刀ならお凛が先に斬られてるね」

 悠然が言うと確かにお凛の胴丸に真横からたんぽ槍が当たっていたのである。

「な!アホな!」

 お凛は全く気付かなかったのである。

「と言う訳だ。お凛。一生懸命は良いがほどほどにな。あとお菊。相手が固い甲冑だと斬れない時もあるので継ぎ目か足を狙え。分かったか。」

 心眼が間に入ったのである。

「くうう!悔し!お菊。参ったわ!」

 お凛は悔しそうにお菊に詫びたのである。

「お菊?大丈夫かいな」

「いたた。大丈夫。」

 お菊は京香ら他の女子に起こしてもらったのである。

「ふふん。おもろいな。甲冑の継ぎ目なんて戦場では狙えんちゅうの。今度はウチがお菊とやらの相手をさせてもらおかな」

 様子を見ていたおいちはにやにやしながら小声で言った。

 

「よし!今から30分ほど再度立ち合いしますよ。一休みしてから足腰を鍛えるため走りますからね!」

 悠然が言うと

「うわあ。走るの苦手」

 女子はぶうぶう言ったが

「文句言わない!若い子は鍛えないとダメですよ!私たちと元気に走りましょう!」

「一汗かいたら今日はお風呂もありますからね!がんばりましょう!」

「はああい」

 みんな力なく清澄と悠然に返したのである。


 走りが終わると走り慣れてないのもあってみんなくたくたである。お菊だが自分の坊の桜花院に戻って風呂に入れたが地方の末寺から来ている女子の坊には風呂が無いので石山本願寺内の坊用の巨大な共用浴場に行くのである。お菊だがみんなに誘われたので一緒に行ったのである。

「いやあ!気持ち良いね!これしか楽しみがないね!」

「ほんまやね!」

 奈阿とこずえは湯船に浸かると嬉しそうに言った。

「あはは!ほら!」

「こら!かけるな!お返しや!」

 大風呂でひなたとまえこのように他の女子もはしゃいでいた。

 確かに桜花院の風呂も良いが共同浴場には広くて足を伸ばせる良さがあった。

「あれ?凛凛は?おいちもいないけど?」

 お菊が気付くと

「あの子たち家に帰ったそうだよ」

「びっくりしたわ。家に風呂があるって何やろね。お金持ちの道楽かいな」

 奈阿と京香も呆れていた。

 お菊も自分の坊に風呂があるが場の空気を読んで黙っておいたが。

「そう言えば走る修行も気付いたら出てなかったよ。やだね。特別待遇かいな」

「でもその割には言葉使いはお下品だったけどね」

 千代目とお静が言うと女子は大笑いしていた。お菊も苦笑いである。

「それにしても六花仙になりたいなんて。正気じゃないよ」

「血を見たら気持ち悪いよ。晒し首とかあの生臭いのあたし超苦手」

 みずなとたまの会話にみんなうなずいていた。お菊は苦笑いだけである。ここの女子の実家の寺院は地方では裕福で彼女らはあまり世界を知らないのである。


「ねぇ。お菊って本当に殺されそうになったってそんなひどい目にあったの?」

 ひなたが小声で聞くと

「うん。仕方ないよ」

「すごいよね。死ぬのが嫌だからって相手を返り討ちで倒しちゃうなんて」

「お菊って物静かでそんな風に見えないわ。父上様と母上様は?」

 お静とたまがお菊に聞くと

「あはは。父上母上は私が小さい頃に亡くなってるの。義姉もこの前に戦死しちゃったから今はここの坊に住み込みなの」

「ごめんね!嫌な事を聞いちゃって!」

 ひなたと他の女子たちもお菊に詫びたのである。


「ねぇねぇ!ところで清澄さんと悠然さんが言ってたけど来週から男子と一緒に修行が始まるって!」

 千代目が嬉しそうに言うと

「楽しみやね!」

 まえこも続いた。

「良い人が見つかるまで実寺(家)に帰れないよね」

「ほんと。見つかるまでずっと大阪にいようかな?」

 たまとみずなが言うとみんな大笑いである。お菊は苦笑いだが。

「お菊も良い人見つけようよ。心機一転だよ」

「あはは。そうだよね」

 ひなたが気遣ってくれたのである。


「ところで前から思ったけど奈阿とこずえと京香って大人やね。うらやましいわ」

 まえこが自分の平たい胸に手を当てながら溜め息をついた。

「わたしもまだ平たいからなぁ」

 たまが続くとみんな苦笑いしたが

「心配ご無用!女子は15を過ぎると一気に大人になるねん!」

 こずえが返すと

「そうそう!一気に伸びるよ。あたしなんて大きくなり過ぎたかな?あはは」

 奈阿だが大きな胸を隠す事なく堂々と立ち上がって披露したのである。女子はみんな拍手喝采である。

 お菊だがここの女子たちの勢いに終始たじたじだったのである。



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