第9話 4-2
女子の共同修行だが1週間も経つとみんな慣れて来てお互い近くなったのである。それは良い事だったが修行に緊張感が無くなりあと女子の悪い癖 おしゃべり に心眼らは苦労するのである。
「戦は一人ではできない。みんなと共同で力を合わせて戦うのだ。そのためには、こら!だべってないで人の話を聞きなさい!」
特に一番強面で腕が立つが実は話があまり上手くない心眼が逆に女子に振り回される羽目になっていた。
石山本願寺だが地方に多数の末寺を持っていた。特に大きく有力な末寺の子息子女を石山本願寺に呼んで修行させるのは末寺同士の子息子女の縁故の面倒を石山本願寺が見る事で石山本願寺と末寺の強固な上下及び寄進などの関係を維持するためである。女子の修行と並行して行なわれている男子の修行を途中で一緒に行い修行名目で つがい になってもらい実家に帰ってもらうのである。
だから実は石山本願寺も末寺の子息子女を即戦力の兵としては期待していなかった。石山本願寺も即戦力の兵は傭兵や志願して来た者やこの縁故で友好的になった各末寺の地域から志願して来る兵や僧兵に期待していたのである。
特に女子は肉体的には男子に勝てないのは石山本願寺も承知である。戦の素性がある者が見つかれば運が良いと思っていた程度である。
心眼だが今回の女子の面子を見て目に掛けていたのは大柄で落ち着いてる奈阿とこずえであった。お菊だが弥生から光福寺の初陣で松永兵を4名も葬ったと聞いていたが修行では素早い動きは感じたが体がまだ小さく腕力も不足しておりまだその片鱗を感じられなかったのである。
またみんな和気あいあいで仲が良いのは良いが奈阿とこずえ以外はあまり修行に気が乗っていない感じでもあった。
「奈阿とこずえ以外はあまり覇気を感じない。お菊も最初は行けるかと思ったが最近はいまいちだ」
心眼は小声で横に居た弥生に正直に言ったのである。
「久々に同じくらいの子と一緒で楽しいんでしょう。ちょっとやる気がないだけですよ」
「楽しいのは結構だがやる気がないでは困りますがな」
「ところで男の子との修行は何時頃から?」
「来週後半くらいですかな」
「信長公は近江大津に張り付いてるようですね?」
「信長公だが比叡山に籠城する朝倉義景公の大軍に手が出せず長期対峙で苛立ってるようで。いずれにしろこの戦は長引きそうですな。しかしせっかくの勝てそうな戦なのに朝倉義景公が思ったより軍を動かさないのに比叡山も苛立っているとか」
「顕如様ですが信長公と仲直りされるようですが」
「信長公め。朝廷をうまく動かして我々(石山本願寺)と和睦するよう圧をかけたようですな」
「そうなるとお菊の町の住人は犬死になってしまいますね」
弥生が嫌味を言ったが
「我らの教義は 進むは極楽 退くは地獄。戦は長く続き兵は不足する。この子たちに手伝ってもらうしかないと顕如様たちはお考えのようだが」
心眼がそう言うと弥生もそれ以上は言うのをやめたのである。
この日のだらだらした修行は信長の戦況のようにだらだらと終わったのである。
ちょうどこの頃追加で2人の新たな修行希望者の連絡が心眼に来ていたのである。
ただこの2人は石山本願寺の末寺の出ではなかったが心眼だがだらりとした女子の気を引き締めるため受け入れたのである。
数日後のいつもの修行で
「今回集まってもらった諸君だが仲が良いのは結構だがちょっと覇気を感じない」
心眼が言うと
「男が戦をするのは分かるけどなんで女までも戦に行くのですか?」
「あたしたちまだ子供ですよ?」
「いきなり六花仙を目指せなんて無理ですよ」
お静、たま、みずなや他の女子が心眼に口を尖らせたのである。
「そうね。でももしあなたたちのお寺が襲われたら戦う必要はあるわ。あと本来なら戦に行く必要はないけど今は織田と本願寺は戦になっていて人手も足りないわ。それだけよ」
弥生が間に入ったのである。
「でも男相手じゃ腕力じゃ勝てないです」
小柄なひなたが言うと
「だから薙刀で対抗するのよ。あなたなら出来るわ。お菊」
弥生の突然の振りにお菊は窮したが。
「我々を支援する堺の豪商や雑賀衆からも今日から新たに修行の仲間が来る。心するように」
心眼が言うとまず1人を紹介した。
「今日より新しく入るのはまずはお凛だ」
「今日からよろしくや!ウチ親が堺で商い(あきない)してんねん!家から通うから!」
13歳でお菊と同じ年である。外見はふわっとした少し波が入った長い金髪で派手で華やかな南蛮人との混血(ハーフ)だが喋りは少しくどい(コテコテ)の堺の言葉であった。一応修行なので坊で寝泊まりするのが決まりだがお凛は家から通うと言う言動にみんな驚きつつ何かあるとも感じていたが。
お凛だがお菊の横に座ったのである。
「お菊です。よろしくね」
「よろね。凛凛って呼んでや」
お凛はちらっとお菊を見た後、不愛想に返したのである。
「なんで商家の子が修行なんてすんの?」
みずなが聞くと
「泥棒が来たら斬り捨てるんや。堺は門徒宗も多いし。あとウチ六花仙になりたいねん」
「あのう。なんで六花仙になりたいの?」
「かっこええやん!」
ひなたの問いにお凛は軽く返したのである。
「でもさ、人を殺めるんだよ」
お菊が暗い顔で言うと
「阿弥陀如来様のためなら仕方なしやで!あんたまるで人を殺めた事あるみたいに言うやん!」
お凛がお菊に絡むと
「そうね。彼女は仕方なくそうしたわね」
弥生が暗い声で返すと
「はい?」
今度はお凛がぽかんとしてしまった。
「え!」
他の女子も驚愕である。事情を知っていた奈阿とこずえだけ素知らぬ顔をしていた。
「好きでやったんじゃないよ。私を殺そうとしたから反撃しただけだよ」
お菊が暗い顔で返すとお凛は急に態度を改め
「いやあん!なんやお菊!仲良くしよ!人をぶっ殺す時が来たら初めてで怖いから立ち会ってや!」
お菊にすり寄ったのである。
「だからあたしも人を殺めるの嫌だって!」
お菊も軽すぎるお凛に苛立ってしまったのであるが。
一同苦笑いであるが緊張した場は打ち解けたのである。
「こらこら。喧嘩しない。ところでもう一人はどうした?」
心眼がお凛とお菊の間に入ってなだめると清澄と悠然にもう1人の件を聞いたのである。
「もう着いてるはずですが……」
清澄と悠然もおかしいなと言った顔をしていた。
「いきなり遅刻か。まったく。仕方ないかな」
なんか心眼が訳ありそうに言った。
しばらくして廊下をドタバタと走る人の気配がすると
「すんません!遅れたわ!ウチのバカ馬が道草したねん!」
短髪のお菊と同じ年頃の元気そうな娘が息を切らしながら飛び込んで来たのである。
「遅いぞ。時間に遅れるのは戦では勝敗を決する事があるぞ。今後は気を付けるように。雑賀衆の鈴木御壱(おいち)だ」
「遅れてメンゴ!みんなよろね!」
おいちは心眼の説教など気にせず目配せ(ウィンク)しながら可愛げ(チャ-ミング)に返したのである。
「軽い……」
「軽過ぎる……」
おいちの態度に一同みんな唖然としていたが。
「これおいち。こういう時はきちんと謝りなさい」
心眼が呆れ気味に再度間に入ると
「あら?みんな遅れてごめんなさいね!ぺこり」
おいちは少し恥ずかし気に素直にみんなに謝ったのである。一同再度苦笑いである。
「気に入らんわ。あのノリ」
お凛だけは不快そうに言った。
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