第31話 茂み注意報


「着いたみたいだよ、春。」


美波の声で目を覚ます。


「……あぁ、」


正味考える事がありすぎてあまり寝れなかった。

二時間くらいは目を瞑っただけだったな、


「大丈夫、春?」

「うん、余裕だよ」

「じゃ、降りよっか」


……なんか自然にエスコートされてる。

髪も短いし、美波の方が男っぽい、、、て言ったら怒られるか。


美波に引っ張れるままバスから降ろされ、何時間かぶりに外に出る。


空気は新鮮で、見慣れない景色はしおりで見た物より遥かに綺麗だった。


「ん〜っ、空気が美味しいな〜」


体を伸ばしながら自然の空気を堪能する。


全身でマイナスイオンを感じる……きもちぇ〜


たまには一人でチルするのも悪くないな。

そうしていると突如肩に腕の重みがのしかかる。


……俺に肩を組む相手なんて一人しかいないよな


「よう、春!先週ぶり!」

「うぇっ!?お前かよ立喜、」

「なんだよ嬉しいだろ?お前友達いなし、」

「いや完全に学人だと思ったわ、あと勝手に断定すんな」


またどうせ学人だろうと思ってたら、まさかの

立喜だとは、こいつ無駄に顔いいしちょっと目立つんだよな。


「学人はどうした?俺、今一人でチルってるんだよ」

「そう言うなよ、学人は女子と話してたぞ」

「女子?」


学人が女子と?珍しくはないけど、なんか気になるな。


つい学人を探してしまったが、ここからは見つからなかった。


まぁ、気にする事じゃないか。


「それより〜、彼女が探してたぞ〜」

「だから彼女じゃないって、」

「いや〜、いいよな彼女、俺も欲しいな〜。

はっ、考えてたら宮前先輩に会いたくなってきた。」


こいつ鼓膜どころかうずまき官まで壊れてるっぽいな、離れとこ。


会長に思いを馳せてキモい事になってる立喜をおいて一人になれる空間を探す俺。


「は〜るくん♡」


……oh really?絶対来るとおもたけど、

今は会いたくなかったなぁー、、、


「あ、碧ちゃん?俺今一人になりたい気分なんだよね、」

「じゃあ大丈夫だね、私と春くん、二人で一つでしょ?」


そんなプリキュアみたいな存在だったの俺ら?

……よし、話逸らすか。


「碧ちゃんはバスどうだった?景色とか楽しめた?」

「ううん!ゴミだった!春くんに会えないし、」

「満面の笑みで言う事ではないよ碧ちゃん、、、」


友達いたんだよね?てか転校初日にできたって

言ってたもんね?逆に怖いよ?


「あ、碧ちゃんは友達いたんじゃ?」

「うん!いるよ?」


……もしかして友達の判定が俺と違うかも知れないな。


「碧ちゃん、友達の条件とはズバリ?」


俺的には気軽に話せたり、遊んだり出来たらそれはもう友達だけど、


「一緒に遊んだり、話したり?」


あれ?意外とまともだな。


「じゃあバスの中でも話したりしたよね?それは楽しくなかった?」

「うん、春くんいないし、」


碧ちゃんの中の俺優先順位たっか。

悪い気はしないけど、



「春くん、さっきから変だよ?早くいこ?」

「いこって、どこに?」

「どこでも良いけど〜、そこの茂みとか?」

「茂みに入って何するのさ」

「えぇ〜、それ聞いちゃう♡?」


すいません聞いた僕が間違ってました。

だってその反応は、そらね?あれだよね?


「……碧ちゃん、俺あっち戻るね?」

「春くん緊張してるの?大丈夫だよ、怖いのは最初だけだし、」


今の所ずっと怖いんですが。


「ほら、一緒なら怖くないよ?」


……なんか、いつもと違うな。


いつもならちょっと拒否したら碧ちゃんすぐ分かってくれるんだけど、今日は中々ひかないな。



だんだんと碧の顔から冗談味が抜けてくる。


「大丈夫だよ春くん♡」


あ、碧さん?なん──つ!?


瞬間、手を掴まれ引き込まれそうになる。


そして純粋な柏村春はようやく事を理解した。


(これ、ガチなやつ?)


碧はもう状況なんてお構いなし見たいな感じで迫ってきた。


「あ、碧!?ダメだって!」

「んふふっ、最初はキスからだよね♡」

「そういう問題じゃない!」


唐突にはじまるマジのレ◯プ、俺の貞操が危機に晒される。

クソッ!また同意なしに初めてが頂かれてしまうッ!


「ん〜っ、」

「碧ちゃん!やめっ──」


「なにしてるの?柏村くん、」


声がする方へ目を向けると、腕を組んでこちらを見下ろす黒峰さんがいた。


「こんなとこでなんて、貴女は野生動物にでもなったの?」

「なに?雅には関係ないでしょ?」


どうやら黒峰さんは状況を理解しているようだ。助かった、黒峰さんマジありがとう!


無意識に黒峰さんに縋るように足元に寄る。


「ふふっ、こんなに怯えて可哀想に、」


そうすると黒峰さんはしゃがみ込み、俺の方をジッと見つめてきた。


「く、黒峰さん?」

「どうしたの?柏村くん、」


なんか目が碧と変わんないような気がするんですけど……気のせいだよね?


「春くんから離れてくれる?雅、」

「嫌よ、そうしたら貴女はまた襲うじゃない」


俺もそう思います。

……でも碧にやられるって、、、あれ、これ役得?


「もうしないよ、雅の邪魔が入ったし、、、まだ時間はあるしね。」

「そう、なら行きましょっ柏村くん。」

「へっ?どこに?」

「どこって移動よ、泊まるホテルに」


そういえば修学旅行でしたわ、移動は確かクラスごとにだったよな。


「じゃ、じゃあね碧ちゃん、また後で」

「……うん、」


流石の碧ちゃんも堪えたらしい。口数が少ない、





バスを止めた場所からホテルまでは歩きらしい。

良い気分転換にはなるが、少しバスでの件とは別に悩み?ができた。


さっきの碧との事だ。


なんだか、引っ掛かるんだよなぁ。


隣を歩く学人を見て、ふと質問を投げかけてみた


「……なぁ学人、女性から男性へのセクハラ、、、

とかってやばいと思う?」

「はっ?」


俺からの質問を聞いた瞬間、聞き間違えかと顔をしかめる学人



「ほんとに悩んでるんだ、聞かせてくれよ」

「お前の情緒が気になるけど、、、まぁダメなんじゃないか?てか普通に犯罪だろ。」

「……だよなぁ」


それは分かっているつもりだ。だからこそ学人に聞いて再確認する事でもっと分からなくなった。


碧からされた行為は普通にやばい事だ。でも俺的には嫌なわけじゃない、あの状況、そしてこの

関係でする事ではないと思ったから拒んだ。



頭では犯罪だと理解出来ている、それが常識で、人として社会に適合した形だ。



……なのに、俺は心でちっとも嫌がってないし、おかしいとも思えない。だと感じて疑わない、碧には今までと変わらない感情を向けている。


そんな俺の心を俺の脳はおかしいと思えている。


……どうしたんだろ、俺、、、




────────────

なんかシリアスな感じになりましたが、程度が変わっただけです。

どのみちこの子たちはいつかはやりますから。


ちなみに春くんの周りはそんなの気付いてないだけで犯罪者揃いではある。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る