第12話 聖女様の肌は、あまりに柔らかすぎる
天蓋付きの巨大なベッド。
シルクのシーツの上に、アリア様がうつ伏せに横たわっている。
身に纏っているのは、薄いネグリジェ一枚だけ。背中のラインが露わになり、薄布越しにヒップの曲線が悩ましく隆起しているのが見て取れた。
「……さあ、カイト。お願いね」
枕に顔を埋めたまま、アリア様が甘い声で呟く。
「あのアリア様……本当にやるんですか?」
「当然よ。聖女の務めである『結界維持』は、身体に大きな負担がかかるの。凝りをほぐして、魔力の通りを良くしないと」
正論だ。正論だが、状況が不健全すぎる。
間接照明に照らされたアリア様の肌は、陶磁器のように白く、滑らかだ。
こんなものに触れて、平穏でいられる男がどこにいるというのか。
「……失礼します」
僕は覚悟を決め、震える手をアリア様の背中へと伸ばした。
指先が、彼女の肩甲骨付近の肌に触れる。
「んっ……♡」
ビクッ、とアリア様の身体が跳ね、艶っぽい吐息が漏れた。
(変な声を出さないでください!!)
「あ……ごめんなさい、カイトの手、思ったより熱くて……」
アリア様が恥ずかしそうに身をよじる。その動きに合わせて、ネグリジェの裾が捲れ上がり、白い太ももがさらに露わになる。
僕は奥歯を噛み締め、理性総動員でマッサージを開始した。
指に力を込め、凝っていると思われる部分を押す。
柔らかい。驚くほど柔らかいのに、芯の部分には確かに疲労が溜まっている。
「あぁ……そこ……♡ うまいわ、カイト……」
「……そうですか」
「んんっ……! そ、そこは……ダメェ……♡」
アリア様がシーツをギュッと握りしめる。
僕の指が背骨に沿って滑るたびに、彼女の口から甘美な声が漏れ出し、部屋に響く。
これは拷問だ。視覚と聴覚に対する、高度な精神攻撃だ。
(長引かせたら僕の理性が死ぬ。最短最速で終わらせる!)
僕はスキル【構造解析(スキャン)】を発動した。
アリア様の筋肉の繊維、血流、魔力の滞りを視覚化する。
(ここだ! ここと、ここを同時に押せば、一撃で凝りが解消する!)
「失礼します、少し強く行きますよ」
「えっ? きゃあああああんっ♡♡」
僕がピンポイントでツボを刺激した瞬間、アリア様が弓なりに反り返り、聞いたこともないような甲高い声を上げた。
強烈な快感の波が彼女を襲ったらしい。
彼女は力が抜けたようにベッドに突っ伏し、荒い息を吐きながら、恍惚とした表情で僕を見上げた。
「はぁ、はぁ……すごい……。カイト、あなた……私の身体のこと、私よりも知っているのね……?」
潤んだ瞳。乱れた銀髪。はだけた胸元。
そのすべてが、僕の理性を削り取りに来ている。
「……たまたま、ツボに入っただけです」
「嘘よ……。こんなに気持ちよかったの、初めて……♡」
アリア様は、ふらりと上半身を起こすと、僕の首に腕を絡めてきた。
甘い香りと、火照った体温が直に伝わってくる。
「ねえ、カイト。背中はもう十分よ」
彼女は僕の耳元で、悪魔のような囁きをした。
「次は……『前』も、ほぐしてくれないかしら?」
僕は天を仰いだ。
神様。僕はただ、静かに暮らしたかっただけなのです。
なぜ、聖女様のマシュマロのような胸元と対峙しなければならないのでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます