第4話

第四話

「あ、あの、そこの瓶に入ってた飴玉、無料のヤツかと思って、食べちゃいました……」 継人は、カウンターに置かれたイチゴミルクの包み紙を指差しながら、正直に白状した 。


「瓶の中の、飴?」 店長のジト目が、怪訝そうに継人を捉えた。

「ええ。一つだけ入ってたんで、つい……」 「……」 店長はカウンターに置かれた空のガラス瓶と、継人が指差す包み紙に視線を走らせる。 (瓶は置いてても、中に飴なんか入れてなかったはずだ)店長の顔から、気だるさが急速に引いていく。彼女は持っていたタバコを乱暴に灰皿に押し付けると 、継人を真正面から見据えた。


「あんた、今、あの棚に何が見える?」 「え……? いや、だから、なんか変な……ガラクタ、みたいなのが、いっぱい……」

「そう。見えるんだ」 店長は何かを確信したように頷くと、矢継ぎ早に質問を重ねた。

「気分が悪いとか、どこか痛むとか、そういうのは?」

「い、いえ、別に、そういうのは……」

「棚の物が見えてる以外に、何か変わったことはないか? 何か見たり、聞いたり」

「変わったこと、ですか……」


継人は必死にさっきからの出来事を思い返す。棚が物で溢れたこと。そして――。

「あ。そういえば、さっき、誰か……いや、『何か』が、店から出ていくのを見た、気がします」 「何か?」

「緑色で、背が低くて、頭に皿みたいなのが……って、いやいや! 絶対見間違いです! 疲れてるんですよ、俺。でも、なんていうか……表現するなら、河童、が一番近いっていうか……あはは……」 自分で言っていて、あまりの馬鹿馬鹿しさに継人は乾いた笑いを漏らした。


シン、と店内が静まり返る。 店長は、継人の顔を数秒間、黙って見つめていた。 やがて、彼女は心の底から面倒くさそうに、今日一番深いため息をついた 。 カチ、とライターの音。新しいタバコに火がつけられる 。


「……はぁ。あんたが見たソレ」 紫煙が、店長の長い前髪を揺らす。

「河童だよ 」

「―――え?」

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