22 子供の行動力を舐めてはいけない

【前回のあらすじ】

ルカを美容院に連れていったが、髪の毛が無限に伸びてくるのでアイロンだけして帰ってきた。

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「ん。たいよう。あげる」


「あー?」


 ――ルカと美容院に行った日の夜。


 ルカのツヤツヤのキューティクルの前では、ヘアアイロン程度の熱で形を留めるのは無理があったようだ。

 銭湯から帰ったルカの髪は、完全に元のサラサラヘアーに戻っていた。


「なんだこれ?」


「ん。美容院から、髪の毛、持って帰ってきた」


 ルカの手の上には、ミサンガのようなようなものが乗っていた。

 LED照明に反射して光っているそれは、よく見ればルカの髪の毛と同じ色をしている。


 さっきから部屋の隅でなんかしてるなー? とは思っていたが、どうやら持って帰ってきた自分の髪の毛を編みこんでいたらしい。


「ん。あげる」


 なんかの冗談だろうか?

 しかしルカの顔は真剣そのものだ。


「(あー)」


 異世界あっちだとそういう風習とかあるんだろうな。

 日頃世話になってる相手に、自分の髪の毛をプレゼントする的な?


「そういう事なら、貰っておくぜ」


「ん」


 丁度いいサイズなので、ブレスレットみたいに手首にはめてみる。

 その行動は正解だったようで、安堵したように笑うと、俺の膝の上に乗ってくるのであった。


「毎日つけて」


「いや、これつけて外出するのは厳しい……こっちの世界だと普通にやべーやつ扱いされちゃうから」


「じゃあ、部屋にいるときはつけて」


「たまにな」


「ん。たまにでいい」


 この後はたわいのない会話をしたり、スマホで一緒にアニメを見たりして時間を過ごし、寝る時間になったら同じ布団で眠るのであった。



***


【三人称】



 ――ちゅんちゅん。

 ――ちゅんちゅん。



「ん……ぅ」



 ――翌朝。



「ふわぁ……たい、よう……おは……よ」


 異世界の巫女――ルカは珍しく、太陽よりも早く目を覚ました。

 いつも温かい手で、優しく揺すって起こしてくれる家主は、ルカの下でぐっすりと眠っている。


 時計を見ると、時刻はまだ午前5時半。

 いつもの起床時間まで、まだ30分ある。


 たまたま早起きしたものの、まだ眠い。

 ルカは再び太陽の胸板に頭を預けた。


 太陽が呼吸するたび、ゆっくりと起伏を繰り返す感触と――ドクンドクンと脈打つ心臓の鼓動が好きで、太陽の広い胸板は、彼のお気に入りの枕だった。

 枕が変わると眠れなくなるという意味では、ルカもまたそれに該当すると言っても過言ではないだろう。


「ん」


 しかし――二度寝しようとするルカの脳裏に、昨日のとある記憶が蘇った。



『巫女様――お納めくださいますと祝着しゅくちゃくに存じます』



 それは太陽が1人で美容院へ出向いた最中に、畳の上でマルガレーテと交わしたやり取り。

 マルガレーテは金色のミサンガのようなものをローテーブルの上に置き、ルカに差し出した。


 それはマルガレーテの髪の毛を編みこんで作られたもの。


 ルカやマルガレーテのいる世界では――親友、恋人、伴侶、信頼している相手に――自分の髪の毛を贈る文化がある。


 髪の毛には僅かではあるが、本人の魔力が残る。

 例え離れ離れになったとしても、髪の毛に残る魔力が再び2人を引き合わせると言われているからだ。


 他にも、髪の毛や爪など、肉体の一部を触媒にすることで、持ち主を呪う魔法が存在する。

 つまるところ、自分の弱点に成り得る部位を贈れる程、「あなたを信頼している」という意味が込められているのだ。


 魔力と魔法が存在する世界だからこそ、強く根付いた風習と言えた。


 昨晩ルカが太陽に自分の銀髪を贈ったもの、マルガレーテが自身の金髪を贈ったことで閃いたことだったのだ。


「ん……たいよう……髪の毛」


 ルカはもぞもぞと起き上がると、太陽の寝顔を観察する。

 そしてその視線は上へと伸びていき、昨日よりも短くなった髪の毛へと焦点が当たる。


「ん……確かあの辺に、あったはず」


 ルカはとある閃き・・・・・に従い、台所へ向かう。


「あった」


 ルカが探し求めていたのは、食材を切るのに使っているキッチンバサミ。

 太陽の頭の上で、ゆっくりとハサミの刃を広げる。



https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/822139842108548540



 それを安らかに眠っている太陽の髪の毛へと――――



***

【太陽視点】



 ――――嫌な予感がして目を覚ますと、ルカが俺の髪の毛を切ろうとしていた。


「うおおおおおおおい!? なにやってんだお前!?!?」


「ん。等価交換」


「どういうこと!?」


「昨日、髪の毛あげた。だから、たいようの髪の毛、貰う」


「後から代価要求するのはヤクザすぎんだろ……!?」


 ギリギリの所で頭を引っ込めて回避し、ルカからハサミを奪い取る。


「ん。たいように6センチ分あげたから、6センチ分だけ貰おうと」


「俺の髪の毛から6センチ切ったら地肌見えちゃうわ!」


 10円ハゲみたいになるわ。


「ん……でも、欲しい」


 その後も俺の髪の毛を狙ってくるルカをなんとか宥める。

 次に美容院行くときに、「切った髪の毛持って帰るからそれまで待ってろ」という約束を取り付け、なんとか俺の髪の毛は死守されたのであった。


 朝からすげー疲れた……。


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【あとがき】

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