第3話 黒い影
「グローブナー大佐、この辺にはターゲットは見当たりませんでした。いかがいたしましょうか?」
カーキ色の軍服を着た兵士が上官に報告した。上官のグローブナーはまだ三十代と思われるが上背があり、少し長めの髪に精悍な顔つきをしている。
「次のポイントに移動しろ、レーダーではこの辺りに墜落した筈だから慎重に探せ」
「はい、大佐」
兵士はグローブナーに敬礼すると十人程のチームを率いて次のポイントに向かった。一帯は街から離れた荒野で、入り組んだ地形になっており見通しはあまり良くない。
グローブナーの部隊はバイロンと言う名の人物が創設したその名もバイロンという巨大な無国籍の軍事組織に所属している。バイロンは近年、中東を拠点として勢力を拡大しており、この年2071年には新しい国であると主張し始めていることで知られている。
バイロンの台頭に対抗して、欧米を中心とした主要国は連合国軍を編成した。バイロンと連合軍との小競り合いは徐々に規模が大きくなっていった。
次のポイントを調査していた兵士がグローブナーの元に駆け付けてきた。
「大佐、見つけました! かなり大きい機体ですが今まで見たことも無い形状をしています!」
彼らは何か未知の飛行物がバイロンのテリトリーに墜落したことを知り、調査に来たのだった。
「よし、見に行こう」
グローブナーのチームは全員で、その未知の機体の元へ駆けつけた。
機体は見たことも無い一種の金属のような外殻に覆われており、きのこにとげをつけたような奇妙な形状をしている。とげの部分は彼岸花に似ているかもしれない。
「何だこれは?……」
機体からは墜落時の衝撃で数ヵ所から煙が出ているが、不気味な沈黙のまま横たわっている。出入口だろうか、一ヶ所開口部が開いているのが見える。中に入れそうだ。
「慎重に調べろ」
指示通りに兵士達は銃を構えながらその機体に最初ゆっくりと近づいていった。放射能の反応が無いことを確認して先頭の兵士一人が背中の噴出器(ブースター)を使って空中を飛んでいき、出入口近くに着地すると中に入った。
少ししてから大声で叫ぶ声が聞こえた。
「乗員が数名います! 皆怪我をして死んでいるか気を失っているようです。ち、地球の人間では無いかもしれません!」
中にいたのは人間にそっくりだが、服装などから明らかに普通の人間では無いことがわかった。グローブナーはごくりと唾を飲みこんでから冷静に言った。
「よーし、慎重に確保しろ。素手では触るな。目覚めて襲ってきたらすぐに撃ち殺せ」
その時だった。何か黒い影が数体機体から飛び出してきて、何人かの兵士にくっついた。
「うわわー、何だこれ」
影にまとわりつかれた兵士はもがいたり銃を乱射したりしたが、影には実体が無かった。
「なんなんだ、あの影は?」
グローブナーもその様子を見て凍り付いた。背筋がぞっとした。
まとわりつかれた兵士達は恐怖に慄(おのの)き、逃げまどった。しかし、影はまとわりつくだけで、兵士に何の危害も加えなかった。三十秒ほどたつと影は兵士から離れた。まとわりつかれていた兵士達は安堵のため息をつき、腰を抜かして座り込んでいる。
と、次の瞬間、信じられないことが起こった。
離れた影が徐々に人の形に変化し、しばらくするとまとわりついていた兵士の姿を形作っていったのだ。
そう、影は兵士のコピーになったのだった。
兵士はコピーした不気味な影に向かって銃を連射したが、弾はその体を貫通し、貫通した穴はしばらくすると修復された。影の体は徐々に実体を伴う様に明瞭になってきた。
その様子を見ていたグローブナーは影に敵対する様子が無いのを見て叫んだ。
「撃つな! そいつらを何とかして確保しろ!」
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第3話、バイロンという組織が出てきました。
ISというイスラムの組織を覚えていますか? あれがモデルです。
この50年後の世界ではコレオイドに襲われる前に、バイロンと連合軍が戦いを行っている設定です。そのバイロンの部隊の近くにスペースシップが不時着した訳です。
バイロンはコレオイドの影兵士(シャドーと呼びます)を活用していきます。
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