第28話:トラウマ
「ねぇ、ノイちゃんあの時の事覚えてる? 初めて会った時の夜を」
遠く離れたテルペが自分に語りかけるのに対し、ノイは揺れる心を必死に抑えながら剣を構え続けていた。身体は震え、息は荒れる。出来る事なら逃げ出してしまいたかった。それをノイが出来ない理由は二つ。なけなしの意地を振り絞る以前にテルペの動きが自分の行動を邪魔するのと、ウォルフがそこにいるからである。逃げ出してしまいたい。けれど、ウォルフを置いて逃げられる訳が無かった。
「よそ見をしないで? お姉さんだけを見て? ね?」
その言葉と同時にテルペの攻撃が来る。ノイはそれに即応し剣で払う。彼女の剣の光にその不可視の攻撃が僅かに照らされた。それは糸だった。極細のそれが、テルペが好んで使う得物である。
「うん、良い反応」
糸という武器の恐ろしいのは、その間合と操作性能である。非常に扱いが難しいが、その分通常の武器では有り得ない角度や距離で攻撃する事が出来る。テルペとノイの距離はおよそ二十m。糸使いの射程距離内であり、剣使いの封殺距離内である。ノイは剣を構え、時折来るテルペの攻撃を凌ぐ事しか出来なかった。
「テルペッ!」
「そんな強く名前を呼ばないで? 思わず興奮しちゃってどうにかなりそうなの……」
覚悟を決め、ノイは僅かな隙を突いてテルペの間合を踏み込む。ノイは間合を疾駆する。途端襲いかかる糸の攻撃を天性の素質で回避しながら。そして剣の有効射程圏内に入った直後、テルペの顔目掛けて刺突を打ち込もうとするも。
「はい残念賞♪」
テルペは妖しい笑みを崩さないまま糸を操作する。瞬間、ノイの前に格子状に組まれた糸の壁が立ちはだかる。ノイは尻尾を駆使し、自分の身体に急ブレーキを掛ける。壁と鼻先一センチの距離で彼女は制止した後、テルペが追い打ちの様に仕掛ける攻撃を紙一重で回避し続けた後、再び元の距離に戻る。
ノイは剣の才能が極めて豊かだ。恐らく、百人の達人が見れば百人がその天性の反応速度と練度を評価するだろう。今この時、テルペの糸の間合から生還する事を軽くやってのけたのがその良い例だろう。テルペが腕を振る度に糸が踊る。それをノイは時に切り払い、時に紙一重で避ける。しかし自分の身を守るのに精一杯で、才能だけではテルペの糸を突破する事が出来ないのが現状だ。
投擲はどうだろうか。彼女はそう考えるが、即座に否定した。ノイは先程の強襲から今回のテルペの反応速度は見極めている、恐らく剣が到達する前に剣は細切れにされるだろう。だから条件としては自分の中に剣がある状態であの魔女を倒さなければならない。焦りを募らせる中、ノイは勝利への方程式を計算する。手持ちの剣技だけではテルペを倒すのは不可能だ。初撃での決着を逃した以上、あの糸を相手にして潜り抜けねばならない。
ノイはテルペの攻撃を剣で払った後、黒い髪を右手で梳くテルペを睨む。二十mという距離は余りにも遠い。……そして、彼女がそう考えた矢先にあの光景が合流する。
「この俺の前で気を抜くとは良い度胸だな」
「……クソッ!」
「良く狙えガンスリンガー。さもなくば死ぬぞ?」
ウォルフが血だるまになるのを彼女はその青い瞳ではっきり見た瞬間、彼女の頭は真っ白になった。どうにかしなくてはならない、今ここで彼を救えるのは自分しかいない。ならば何が必要か?
――必要なのは力じゃない、速さである。彼女の記憶が呼び起こされる。そう、ウォルフが『な、俺の言った通りじゃないか――レオパルド』と呟く前。
感情の天秤は完全に釣り合い、最後の起爆剤が投下される。
「もう駄目ね、ノイちゃん。そんなに弱かったら、またあの時みたいになっちゃうわよ? また聞きたいな、ノイちゃんの哭き声……」
そうテルペが揶揄した瞬間、彼女の枷は自然と解かれる。複雑な軌道を描いて襲いかかる糸。彼女はそれを避ける事はしなかった。代わりに彼女はテルペに向かって直進する。突然の奇行にテルペの赤い目が細まる。だが糸は止まらない。
瞬間、テルペの前からノイが消えた。テルペの意識が彼女を辿る前、ノイは数mまで距離を詰めた時点で彼女の左側から背後に回りこむ。そう、それは彼女が先のウォルフとの戦闘で行っていた瞬間移動だ。背後に回りこんだ時、ノイはテルペの白い首元を狙う。無防備なテルペには防御する術は無い。ウィラードのマインド・プロテクションもこの距離では使用出来ない。
その刃を振る。一撃目でテルペの首を、そして柄を持ち変えてから返す刃で胸を。ノイはテルペの脳と心臓を破壊。種子の場所が解らない場合は、再生に時間のかかるこの二つの箇所を破壊するのがテルペに対する鉄則だ。彼女はテルペを無力化した瞬間叫んだ。
「ウォルフさん!」
返事の代わりの彼の行動は速かった。左手の鞭を振るいウィラードから最大限に距離を取ると銃を仕舞い、代わりに赤いコートの懐に有った仕込み葉巻を投げる。投げる。投げ、ようとした。
それは彼の弱点の発露に他ならない。遺伝病による痙攣癖。それはこの瞬間、敗北を与える。腕は震え葉巻は落ちる。それを宿命の修羅が見逃す筈は無かった。
「獲られたぞ?」
距離が詰められ、斬撃はウォルフの右手を斬り飛ばした。
「あの男にその手は何度も食わされた。その二番煎じまで食わされて堪るか――落ちろ肖像画、やはり貴様は見ているだけで不愉快だ」
巨体が右回りにまるでコマの様に回る。左足を軸に、右足に遠心力をたっぷり乗せ、回転蹴りが放たれる。ウォルフはそのまま五mを滑空し、壁に叩き付けられる。一際大きい音が鳴った後、ウィラードは不機嫌そうに呟いた。そして彼は一度溜息を吐いた後、壁に叩きつけられたウォルフに向けて両手を広げる。
「さぁ、どうした! まだ右腕を失っただけだ! 仮にもあの男を騙るなら、ここから挽回してみせろ!」
答えは無い。この時点でウォルフのあばら骨はことごとく折れ、内蔵は破裂し脊椎の一部は損傷していた。付与された再生能力が辛うじて身体を修復しているものの、それはウィラードに返答出来る程の速度ではなかった。
「このぐらい逆境の内にすら入らん筈だ! それでもスランジバックの名を持つ男か!」
答えは無い。
「立って戦え! この俺を下してみせろ!」
答えは無かった。その沈黙に、ウィラードは一度右手の剣を自分の顔の前に置いた後。
「……改めて認識した、貴様の存在は我が宿敵への冒涜だな」
その失望した物言いの後、彼はウォルフの元へと歩み始める。
「その気骨の無さ、一度敗北した位で染み付いた負け犬根性。これが『あの男を超える男』だと? 悪い冗談にも程があるな」
そしてウィラードは遠くにいる宿敵に哀れみの念を抱く。
「……レオパルド、貴様の名誉を今救ってやる」
そして彼はウォルフへと歩み右の得物を向け、まるでゴミを処分する様に切り捨てようとした。
「お前は屑だ。一分一秒の存在があの男への侮辱に他ならない――死ぬがいい」
先程の衝撃により胡乱になったウォルフの目に、その死刑執行人の姿が映る。しかし身体は指一本も動かず、死はまるであの時と同じ様に差し迫っていた。そして、その刃が振り上げられ――落ちる。
「させない!」
……それを阻んだのはノイの刃であった。ウォルフに振り下ろされた一刀を、ノイは再度時間加速を使用し割り込み防いだのだ。鍔迫り合いによって火花は幾つも生まれていく。
「今のを防ぐか」
彼女は柄を一回転させてウィラードの剣を弾いた後、返す刃でウィラードの足元へと切りかかる。ウィラードはそこにマインド・プロテクションによるバリアを展開すると共に後方へと跳躍。ノイの刃は、ウィラードの足に浅い掠り傷を負わせるだけだった。
ノイは剣を構えたまま残心を示している。何時攻撃を仕掛けてもいいように。対するウィラードもまた同じ。二人の視線が相克し、……そしてウィラードが二刀を下げた。
「そこを退け、小娘。貴様の実力は既に知っている。同じヤツを二度斬る趣味はない」
「……いや」
「もう一度だけ言ってやる。そこを退け小娘、そうすれば命だけは助けてやる」
今彼女の身体には毒の様に恐怖が回っている。彼女は確かに才能豊かだが、それでもウィラード程ではない。何より、彼女は自分と対敵の実力差を十分知っている。
自分は、この男にはけして勝てない事を。呼吸は荒れ、身体は震えを帯び、筋繊維の幾つかは断裂している。だが、ノイは一歩も引かず剣の構えを変える。防御の型から切っ先をウィラードに向ける攻撃の型へと。それを見てウィラードは胸に抱いた疑問を彼女へとぶつけた。
「何故だ? 何故貴様はこんな男に命を賭ける? レオパルドならいざ知らず、この男に何の価値も無いだろう。単なる出来損ないだ」
「違う!」
「何がだ?」
「ウォルフさんは、出来損ないなんかじゃない!」
ノイは戦略の上では逃げるのが最良の一手なのは理解している。だがここで自分が逃げてしまえば、きっとウォルフは殺されてしまうだろう。それだけはノイは絶対に出来なかった。
「ウォルフさんは、優しくって良い人だ! 誰よりも苦労して、それなのにおれを助けてくれた! そんな人が出来損ないなんて訳ない!」
「それが、その男に命を賭ける理由か?」
「そうだ!」
「この戦いの大局を捨ててもか?」
「でも、それでウォルフさんが死ぬなんて間違ってる! 今のおれじゃお前には勝てないかもしれない。逃げる方が簡単かもしれない。でも!」
彼女の尻尾が覚悟に呼応する様にピンと張り詰める。そして、その青い瞳に迷いは一切無かった。
「――でも、ウォルフさんだけは絶対に殺させない! 殺したかったら、先におれからやれ!」
彼女は堂々とそう言った。その言葉を受けて、ウィラードの赤いセンサーが一度明滅する。まるで生身の人間が目を閉じて言葉を韜晦する様に。
「成る程。……ひょっとしなくても貴様、馬鹿だな?」
「馬鹿じゃない!」
「いや愚かだ。真っ当なヤツが貴様と同じ立場なら、何があろうと逃げ出す。その方が全体の勝利の芽を確保出来るからな。ヒロイズムに身を任せ、勝ち目の無い戦いに挑む事程愚かな事はない」
「だったら、勝てば良いだけ」
「……今のは良い切り返しだ」
ウィラードは二刀をノイへと向けて構える。右の剣を横に、左の剣を縦にし剣で十字架を模る。その銀の身体に赤い光が映えた。対して、ノイは柄を顔の横に置く。緑の刃は垂直に対敵に向けられ、腰を落とし足は間合を詰めやすい様に右足を前に、左足を後ろに。その時、彼女の足場に少しばかり変化が起きる。ノイが足を踏み締めた所がまるで木の実が芽吹く様に変質し、細い棒状の物が何本か生えた。
「戦士の礼儀だ、手は抜かん。その男を守ろうとするなら、貴様はそれを行動で証明するべきだ。俺ぐらい倒してみせろ、ノイ・アーチェ」
「届かせて見せる」
次の瞬間、彼等は激突する。ウィラードはノイの剣を右の剣でいなし、左の剣で下から上に切り上げようとする。しかしノイはそれを手元の柄を回転させ、切り払う事で防ぐ。剣戟は幾度も重ねられ、その度に幾つもの火花が生まれて消えていく。
ウィラードの攻撃は例えるなら例えるなら嵐だ。二刀を巧みに操りながら、幾つもの斬撃を繰り広げていく。ノイはそれを持ち前の反射神経の速さと剣技で何とか防ぐ。……彼女と剣を重ね合わせる中で、ウィラードは対敵をつぶさに観察する。成る程、確かに才能は豊かである。他のヤツらなら自分と打ち合えば精々四合で決着が付く筈だ。剣筋は突飛な所が少なく柔らかで、酷く真っ直ぐ。相応の経験を重ねれば剣聖の座にすら届くかもしれない。……だが、まだ若く経験が足りない。果たして何手まで切らせてくれるだろうか?
二人の剣戟は刻一刻と激しさを増して行く。その中でウィラードは一歩を踏み込む。そして彼は右手の剣をフェイントにし、左の剣を手の中で一回転させ逆手持ちの状態で上に振り上げる。ウィラードの身長は二m、対してノイの身長は百四十cm。体格差からその一振りはノイの股から頭にかけてを一閃しようとする。間合に踏み込んだ上でフェイントをかけ、跳躍による回避を封じ確実に命を刈り取る一手を置く。ノイの反射神経の高さを読んだ上での事だった。しかし――その一撃が空を切る。
「まさか、そんな手があるとはな……面白い」
ウィラードがそう言ってから一拍後、ノイは着地した。彼女の足には足甲が装着されていた。そう、ナヴァロン脱出の際に装着されていた物と全く同じ物を。ナヴァロンの力を得たのはウィラードだけではない、彼女もまた得ているのである。しかしノイにとってもこの現象は予想外だったらしい。ぶり返した死の恐怖に喉と呼吸を震わせ、掴んだ奇跡に数瞬ばかり信じられない様な表情を浮かべていた。それでも剣を構えるノイに向けて、ウィラードは教える様な声音で言葉を紡ぐ。
「良いだろう、切れる手札は全て切れ。お互い出し惜しみはなしだ」
そう言われるがままノイは獣の様に疾駆する。隠し足を起動し、ウィラードとの間合を詰めて上段から切りかかる。ウィラードはそれを身体を右にずらし、最小範囲の行動のみで回避する。次いで両手の剣を左右交互に振り攻め立てる。数十合の撃ち合いの後、やがて剣戟は変化を迎える。さしずめ、それは熱せられた水が沸点を迎える様に。双方が互いの隙を見つけ、攻勢に出る。互いに必殺の突きを撃つ。……ノイの剣はウィラードの胴を掠め、ウィラードの剣はノイの頬を掠めた。二人は一度、同時に離れ合う。開いた距離はおよそ八m。着地と同時にお互い剣を構える事を忘れない。
一人は次の一合で決めなければと思い、一人は次の一合で決めにかかると読んだ。……二人は同時に地面を蹴る。そして、最後の一合が交わされる。
そこでノイは再び瞬間移動を使用する。ウィラードの斬撃が放たれる。数は先程と同じ四十八。そのどれもが本来のノイであれば反応しきれない物あろう。……竜巻の様な斬撃を横目に、彼女はウィラードの右を獲る。彼女は地面を踏み締めて突きを構える。ウィラードの返し刀は間に合わず、最早阻める物は無い。
――彼の心臓に死の流星が走る。これ以上望むるべくも無い、ノイがウィラードを仕留めるにたる起死回生の一手。
その時、ノイはウィラードの声が聞こえた気がした。彼の顔に口が存在するなら、きっとこう呟いたかもしれない。
“その手は読んでいるぞ、小娘”と。
瞬間、ウィラードの手によって因果は変わる。ウィラードはサイボーグボディの性能と天賦の才。そして体内に組み込んだもう一手――“加速装置”を起動する事により、ノイの瞬間移動に対応。知覚し得ない世界を知覚する。同時に彼の左手が踊る。指の一本も無駄にする事なく、五指全てを使って得物の柄を回す。コンマ秒の世界で切っ先は少女へと向けられた。
そして新たな流星が生まれ、二つは交叉し互いに堕ちる。
「……怯える心を奮い立たせ、この俺に立ち向かったのは評価しよう」
それは、ウィラードの声だ。
「その剣の冴えも見事と言っておく。毒婦のトラウマを乗り越えたのも見直すに値する。例え、有象無象が何と言おうと俺だけは貴様を認めよう。だがな……」
その一言を、彼は口にする。
「――それで、俺は落ちん」
互いは、相打ちの形を取っていた。ウィラードの刃はノイの腹に収まり、ノイの刃はウィラードの心臓部の真横に収まっていた。滅びの言葉が声になると、彼女の口から赤い血が漏れ始める。
「この俺を殺しきるには狂気が足りない――それが貴様の敗因だ。中々楽しめたぞ、だがもういい」
ウィラードが刃を消すと、ノイの身体はその場に倒れこむ。足甲は溶ける様に消え、彼の心臓の真横に突き刺さった刃も消え、柄だけとなった得物が乾いた音を立てて落ちた。
「あら、もう終わり?」
何時の間にか身体を再生したテルペが、ウィラードの背後に立っていた。黒い少女はにやついた笑みを浮かべている。
「あぁ、終わった。毒婦、後始末は任せる」
「はーい♪ それじゃあ、男の子の方は私の部屋に運んじゃうわね」
「好きにしろ」
「そしてノイちゃんの方はスタッフに渡す前に……」
テルペは一度舌なめずりをし、倒れたノイに獣の様に欲情しきった視線を向けると。――瞬間、彼女の鼻先を剣が掠める。その刃が床に突き刺さった直後彼女がその軌跡を辿ると、そこには愛剣を投擲したウィラードがいた。彼は彼女の方を見ずにこう語る。
「貴様がノイ・アーチェに手を出すのは許さん。その小娘は丁重に扱え、毒婦」
「えー、駄目なのー!?」
ウィラードのセンサーが一度明滅する。それは恰も生身の人間が目を瞑り過去を思い出すかの様に。
「この腐った世において、敬意を持てる相手とは貴重な存在だ」
いつもと違い、ウィラードの言葉には熱が篭っていた。
「勝者は勝者の道を行き、敗者は敗者の道を歩く。勝利者は敗者を思うがまま蹂躙する権利を持つ。……だがこいつは勝てぬ相手と知りながら、尚も果敢に挑み一度は勝機に指をかけた。先程のこいつの勇気は敬意に値する。貴様が手にかける事はたとえ神が許しても、他ならぬこの俺が許さん」
「じゃあ、この子はいい?」
膨れっ面のテルペが指を指したのは壁に糸が切れた人形の様に持たれかかるウォルフだった。ウィラードはウォルフを一瞥する。そこには何の感情も抱いていない。
「殺さなければそれで良い。後は貴様の好きにするといい」
「あら、随分優しいのねウィラード君は。てっきり殺せって言うかと思ったのに」
「こいつは屑だ。だが屑に価値を見出したヤツがいる。……この傷分の駄賃を払わねば、それは剣士として度量が疑われる」
自分の心臓の真横に開いた穴を一度撫でる。そしてウィラードはあの時と同じ言葉を吐く。奇しくもかつて、一度ウォルフを仕留めた後に彼はまったく同じ様にこう言ったのだ。
「……やはり俺を楽しませられるのは、貴様しかいないらしい。なぁ、レオパルド」
――午前二時五十五分。陽動班の報告を最後に、国境なき守護者本営とナヴァロン内部は完全に断絶される。恐らくはイスタルジャの通信妨害だろう。報告を受けて、当作戦の総責任者は作戦プランBを発令。撤退も視野に入れた行動を速やかに開始させた。しかし、ナヴァロン外部は未だ闘争を続けている。
国境なき守護者側の戦況は刻一刻と不利になっていく。全軍の損耗率は三〇分前に二割を突破した。しかし、弾幕の後ろに存在するナヴァロンは依然健在。
要塞は、未だ沈まない。
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