第14話

俺は銃撃を躱し続ける。

これも死に戻りで地道に積み上げたものだ。

少しの隙を見つけナイフで攻撃、そして死にまくって隙を探る……

そんな感じだ。


幾度も俺を攻撃する冥。

とても厄介だが、には及ばない。

操られている冥の攻撃は規則的で、必ず隙がある。

だが、本来の冥だったら攻撃はランダムだし、攻撃の後隙を能力で消して攻撃をさせる隙を俺に与えない。


だから勝てる。


俺はナイフを前方にむかって投げる。

ナイフが銃弾を弾き勢いを失わず前進する。

ナイフが冥の肩に刺さる。


刹那よろける冥。その隙を俺は見逃さず間合いを縮め刺さっているナイフを抜き顎を下から殴り上げる。


そのはずだった。


俺はなぜか夜空を見上げていた。

何が起きたか、わからなかった。


俺は急いで体を起こすと、冥の首を掴んだ誰かがいた。


黒く男にしては長い髪。今の季節には少し早いパーカーを着ており、瞳が蒼い。

がそこにいた。


「は?」

俺は素っ頓狂な声を漏らす。ドッペルゲンガーを見たのと同じだ。


「なんだ?まるで自分そっくりな人を見たような声を出して」

そういい俺と瓜二つの男が俺に話しかける。


俺は上手く足に力が入らず、立ち上がれない。


「無理に立とうとしなくていい。少し麻痺させたからね」

そういいその男は冥を横に投げ捨て近づく。


俺の目の前に腰を低くし語りかける

俺は唯一力の入るナイフを握る手に力を込め間合いに入るのを伺う。


「ああ、大丈夫。君の間合いには入らないよ。」


俺はどきりと心臓が痛む。

なぜバレた?


「なんでって……お前は僕と同じだからさ。僕も君と同じ状況だったら君と同じことをするだろうね」


俺は考えたことが筒抜けになっているこの状況に気味が悪い。


「そう思わないでくれ、君をここまで追い込むの結構時間がかかったんだよ。」


そんな言葉を俺とそっくりな男は言う。それに続け


「最初は君だけを殺す予定だったんだけど……なんか君エルナを守るように動くからさ……殺したくなっちゃって」


俺の周りを歩きながら言う男。


「さ、話は終わったし……死んでもらうよ」


そう言って男は俺の胸にナイフを突き刺した。


目の前が真っ暗になる。

この暗闇が俺は嫌いだ。

だから、止まれねぇんだろ?

止まってしまったらそこで気がするんだ。


俺は目を覚ました瞬間身体を倒し後転し躱す


「……面白いねぇ……もしかして君死に戻りの能力だろ? いやぁ、面白い。ここまでとは……そりゃ、ここまで殺すことが出来なかったわけだ……あぁ良い!! とても良いぞ!! 僕!!」


目の前の男は興奮したように口元に手で撫でながら言葉を捲し立てる。


脚が回復したのを確認し、走り出す。


目の前の男はまだ口元を撫でながら何かブツブツと呟いていた。


そして、心臓に突き刺す。


だが、男は身体を横にずらし躱す。

刺さった気がした。

いや、確実に刺した。


俺は殺す気でナイフを振り回した。

だが、当たる瞬間に躱される。

まるで俺の攻撃がわかっているように。



「なんでか気になるか? それはな、僕と同じだったら能力も同じなんだよ!! 非常に興味深いねぇ!!!」


思えば簡単なことだった。

俺と同じなら、能力もそりゃ一緒だよな


「どうやら、僕は君の死に戻りする前の記憶が少しあるみたいなんだ。 なんでか分からないけどエルナを殺そうとしたんだよ。僕は。 だけど今になってわかったよ……君が守っていたから僕は殺そうとしたんだ。」


男は事実確認をしながらニヤニヤと笑っている。



「殺してやる」

俺は口の中にできた血の塊を吐き捨てる。

そして、口元を拭いナイフを握りしめる。


そして、同じタイミングで地面を踏み込んだ

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