間奏曲

第4話

能力。

それは生まれながら人類が平等に与えられるもの。

自分に与えられた能力にどれだけ絶望しても、一生を共に歩まなければならい

そして緋月海斗も例外ではなかった。

【死に戻り】

それが彼の能力だ。

死ぬ瞬間死ぬ前に強制的に巻き戻される能力。強い意志にのみ時間の指定ができる。


だが、この能力が彼には呪いでもあった。

何度も殺されて何度も巻き戻される。


この能力に上限があると信じて何度も飛び降りた、だが結果は変わらなかった。

一瞬だけ満月を見た海斗は感動した。

生きる目的、生きる楽しさを忘れていた海斗にひと時の安らぎをくれた。

そしてエルナと出会った。











俺は森の中で目を覚ます。

強い風が吹き葉が激しく揺れる。

いつもの気配。

警戒に包まれた鋭い目線。




俺は深く深呼吸をしてナイフを取り出す。


「話し合う気は無いということですか?」


恵は、殺意の籠った声で俺に聞く


「当たり前だろ?」

俺はニヤリと笑いナイフを突きつける。


刹那俺は腹部を貫かれる。

「あら、言葉の割には弱いですね」

そう吐き捨てた恵が見えた。

目を覚ました瞬間俺は恵の腕を掴みナイフを逆手に持ち替え突き刺そうととするが、恵は俺の腕を足で蹴り上げる。ナイフが空中を舞う。


瞬きをすると目の前には恵が能力で出現させた槍を手に持っていた。


勢い良く頭を貫通する槍。



目を覚ます。

その一瞬で俺はギリギリで槍を掴む。


恵は驚いた様子でこちらを見ていた。

俺はニヤッと笑い

「残念だな。早坂恵…」


「どうしてその名前を!」

俺は手に持っている槍を投げると、恵の顔の横をかすめる。

呆然と立ちすくんでいる恵を前に


「エルナによろしくな」


そう言い俺は森の中に消えた。


―――――――――――――――――

私は目の前で立ち去る男の背中を見つめていた。どす黒いモヤが常に纏わりついている男。何故私の名前を知っていたのか、何故主の名前を知っていたのか。


そしてなんで悲しそうな顔をしていたのか、謎だらけだった。


ただ、わかったことはこいつを野放しにしていたら惨事が起きるということだ。

―――――――――――――――――


夜の街。


俺がとぼとぼ商店街を歩いていると、

「お兄さん、あまり見ない顔だね」

そう楽しそうに声をかけてきたのは、


「綾瀬 南……」

俺は微かに残っている知り合いの名前を当てはめる。


「おや…?私、名乗ったっけ? まぁいいや、貴方何者?」


俺は近づきナイフを腹に突き刺す。


「え……?」


俺の手にはぬるい液体がべっとり付いている。


こいつはエルナの親しい人物だ。


俺はこの世界線ではエルナに嫌われるんだろうな。


ドサッと倒れる南。


俺は深く深呼吸をする。

これで良いのかな。


夜風が気持ちいい。少し冷たい風が俺の髪をなびかせる。


俺は目的を再確認する。

敵対することで救う。それが難しくても確実に助けることができるのなら俺は手段を選ばない。


エルナはこの世界で言う罪人だった。

ずっと昔ここを血の海にしたからだ。


だが真実を知っているのは少ない。

そして

エルナを表面上では慕い、心の奥底では恨んでいる人物。


そいつはその恨みでエルナを殺した。














だからなんだ?

人を殺したら殺されないといけないというのか?

エルナが市民を惨殺した理由も知らずに自分のただ「昔の人を弔いたい」とかいうエゴの為にエルナは殺されなきゃいけないのか?



そんなことは無いはずだ。

俺より年数でいえば長く生きている。

何せ妖怪なのだから。

それで言えばエルナの知人も全員最近生まれた人間ばかりだ。











俺は自分の髪をバッサリとナイフで切る。

昔では失恋したら髪を切るという風習があったそうだ。


俺はとっくの前に自分でこの恋を諦めた。


だから、俺は覚悟を決めた。








俺はビルの屋上で夜風を浴びる。


この場所はエルナと出会った場所。

だが、時間はかなり過ぎていて俺の知っている展開は起きない。

満月が俺を照らす。

手に握ってある髪の束をビルの屋上から捨てる。

特に意味は無いが持っておくのもなにか気が引ける物だからだ。


来るわけのないエルナを心のどこかでは待ち続けている。

救急車の音が静寂の街中に響く。




俺はゆっくりと立ち上がりビルから降りる。




「ふー」

そう、夜の闇に溶け込ますように息を吐いた。


血に濡れた服を夜風にさらす。



すると鋭い言葉が飛んでくる

「止まれ」


と。

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