第3話

あれから何年経っただろうか。

俺は同じセリフを何万回と聞いた。


勝てない。

どんな手を使っても全員死んでしまう。

なぜだ。


もうお願いだ。

俺を殺してくれ。


死にたい。


痛い。


苦しい。








気づきたくなかったことが頭をよぎる。


【俺がエルナと出会ってしまったから、死んでしまう】


一瞬で何も聞こえなくなる。




俺は気づいてた。とっくの昔に。

だけど信じたくなかった。


俺が甘かった。本当に死なせたくなければ出会わなければ良かったのだ。

あの時、誘いを断ってひとりで生きていけば。



あぁ……嫌だなぁ。


一緒に居たいだけなのに。

なんでかなぁ……




こう、思っているあいだも俺は殺され続ける。


痛みなんて慣れてしまったのだろうか。

そんなことは無い。痛い。痛い。痛い。


全身が砕け散る痛み、内側から裂かれる痛み。



俺はもう一度事を決心した。

だが、その前に目の前のこいつだけは殺す。













目の前に居るこいつに向かってナイフを投げるのと同時に間合いを詰める。

ナイフを蹴りで弾くことはもう何度も経験している。

蹴りで弾いたその瞬間に身体を捻ってこいつの後頭部に蹴りを放つ。


そいつはよろける。

俺は間合いを詰めるのと同時に弾かれたナイフを拾う。


そいつが此方を見た瞬間に俺は身を屈め、こいつの攻撃を避ける。

それは銃弾だった。

俺はゆっくりと近づきながら球を避ける。

ナイフを逆手に持ち

力いっぱいに突き刺す。

原型が無くなるほどに突き刺す。


ぐちゃぐちゃに。



そして俺はエルナの元に近づき


「ごめんな。守れなかった。今度は守るから」

そう掠れた声で言う。俺は自分で出た

声だとは気付かずに喉元にナイフを突き立てる。


段々

と目の前が暗くなってくる。


わかっていたことだ。

組織的に計画された暗殺ってことは、俺が居なくたって暗殺をしに来るだろう。


ちょだとした希望が残る。

俺が居なくても未来は変わらないんじゃないかって

俺が悪くないと思える、ただそれだけの事なのに俺はそれをと思ってしまうんだ。

そしたら何万回でも死に戻りを使って戦うのに。


だけど、その考えに至る時点で俺は負けなのかって思ってしまう。

どうしようもなく深い沼にハマったようだ。




俺は雑念を拭う。

思い出せ。

俺は何のために死に戻りを繰り返しているのかを。


生き残る可能性があるのならそれを選ばなきゃ意味が無いだろう。




ごめんな。俺はもうエルナの横に堂々と立つことは出来ない。

悪行を働いてもお前を守りたい。

だから、許してくれ。


お前がどう思おうがエルナが生きてくれれば良いんだ。

















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