〇平均
「ええ、ええ、お気持ちはわかるんですけどもね、こちらも仕事なんで仕方ないんですよ。え?殺してやる?そういった言葉は使わないようにお願いできますかね。こっちも怖いですから。え?上司に代われ?いや特に変わる理由もないので私が対応いたします。え?もういい?あ、そうですか、では、ハイ」
受話器を置いた男は大きなため息を吐いた。平均(たいら ひとし)、区役所の市税滞納者の対応をしている一般的な公務員だ。毎日のように滞納者の対応をするその精神はすり減りきっていた。
「はあ」
仕事用のPCで隠していたブラウザを開く。5チャンネルのオカルト板だ。
「こんなんでも見ながらじゃなきゃ、こんな仕事やってらんねえっての」
適当なスレッドを開いて眺めていると、その中に目を引く一文があった。
スタンディングマン
「へえ、〇〇マンって名前がつくやつって大体良作だよな。でもなんだろう、これ、なんか見覚えのある名前な気が…」
「平、今の滞納者、どんな感じ?自主納付いけそう?」
「あ、課長。無理っすねえ。なんか殺してやるとか言われて電話きられちゃいました」
「きられちゃいました、じゃねえよ。そいつの差押えさっさとしとけよ?」
「あ、はい」
わたわたと差押えにかかる事務手続きの準備に入ったため、スタンディングマンについては均の頭から綺麗に消えてしまった。
※※※
「ふいー、疲れた…」
17時30分、定時の鐘が鳴る。意地でも残業をしないことをポリシーにしている均はたとえ仕事が途中であろうともいそいそと帰宅準備に入る。立ち上げているブラウザを閉じようとしたとき、昼間見ていたオカルト板が目についた。
「そういやこれ見てる途中だったよな。なんだっけ、スタンディングマン?」
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