スタンディングマン

璃亜里亭 無音@ティオンヌマン

〇昔話

ただ立っていた。時刻は丑三つ時、日中は車通りも多いこの道も、この時間ではめっきり閑古鳥が鳴いている。

 きっかけは些細な事だった。もともと都市伝説等の類が好だった平均(たいら ひとし)は、自作の都市伝説を2ちゃんねる(現5ちゃんねる)に投稿したり、他人の投稿を見て楽しんでいた。そんな中で一つの欲望が生まれた。


 自分自身が都市伝説になりたい


 とはいえ、特に自分自身に何か特別な能力があるわけではない。考えた末に均が至った結論は、「他者に育ててもらう都市伝説だった」

 自分はきっかけを与えるのみ、あとはそれを知った人たちが尾ひれ腹びれつけて成長させてくれる。そんな目論見だった。



 スタンディングマン


 仁の考えた都市伝説の名前だった。人気のなくなった路上で、パーカーのフードを目深に被り直立不動でいる謎の存在。均が考えたのはここまでだった。あとは自分がそれを実践し、怪異のきっかけとなるだけ。

 かくして始めた直立不動運動は既に3時間を経過した。さすがに何もせずに3時間直立不動でいるのはきついものがある。中途半端な時間ではあるが、均はこれを切り上げ帰宅した。


 その後、近所の小学校で不審者が出ているという目撃情報があったらしい。おそらく自分のことだな、と思い均はほくそ笑んでいた。

 10年以上前の、学生時代の話であった。


※※※


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る