第16話 第10章 束の間の休息、決意新たに

📖『黒き封印』第10章


束の間の休息、決意新たに



Scene 56 束の間の休息、決意新たに


眩い光が収束し、視界が一瞬ゆがむ。

ミサキのテレポートで仲間たちはレジスタンスのアジトへと帰還した。

張り詰めた緊張が一気にほどけたその瞬間、シンの身体がぐらりと揺れる。


ミサキ

「シン!」


ミサキが叫ぶより早く、シンは糸の切れた人形のようにその場へ崩れ落ちた。

その顔は蒼白で、呼吸は浅く、額には冷たい汗が滲んでいる。



ガロウ

「おい、大丈夫か!?」


ガロウがすかさず駆け寄り、迷わず彼を抱き上げた。

その表情には焦りが入り混じっている。


活月見

「救護室だ、早く!」


活月見が前を開ける。

仲間たちが道を譲り、シンはガロウの背に担がれ、ミサキもそのすぐ後ろを駆けていった。



救護室の隣、作戦室は薄暗いランプの光で満たされていた。

戦闘で持ち帰った血痕のついた巻物や地図が広がり、焦燥感が漂う。


ヴィクションは壁に背を預け、腕を組んで黙っている。

蓮華は椅子に腰を掛けて沈黙を守り、活月見は頬杖をついて地図を覗き込んでいた。


扉が開き、ガロウが入ってくる。


活月見

「シンの様子は?」


活月見が低い声で尋ねる。


ガロウ

「心配ねぇ。寝てるだけだ。」


ガロウは額の汗をぬぐいながら応える。


ヴィクション

「無理もない。あれだけの激戦の後だ。」


蓮華

「……そうね。」


ガロウは椅子に深く腰を下ろし、ため息をついた。


ガロウ

「今は少し休ませてやろうぜ。女房も帰ってきた事だしよ、な?」


冗談めかした笑みを浮かべるガロウに、活月見は口の端を上げた。


活月見

「そうじゃな。だが……そんなに時間はないぞ。ノネムがいる以上はな。」


ヴィクション

「その通りだ。」


蓮華

「私たちにできることを考えましょう。」


その場の空気は静かだが、緊張の糸は張り詰めたままだった。



場面は変わって救護室。


救護室はまるで時間が止まったかのように静かだった。

机の上の小さなランプが淡い光を放ち、ベッド脇でミサキがそっとシンの手を握っている。


ミサキ

「……シン。」


ミサキの指先はわずかに震えていた。

彼の穏やかな寝顔が、胸を締め付けるように痛い。


脳裏に、闇に呑まれてしまったときの記憶がよぎる。

自分が刃を向け、仲間を傷つけたあの瞬間――。


それでも、彼は諦めずに手を伸ばし、呼び戻してくれた。


ミサキ

「ありがとう……シンがいなかったら、私はここに帰って来れなかった……」


ぽとりと涙が手の甲に落ちた。

その瞬間、彼のまぶたがゆっくりと開く。


シン

「……ん、ミサキ……?」


ミサキ

「シン!」


シン

「……はは、泣いてるのか?」


かすかな微笑みを浮かべる彼に、ミサキは唇を震わせた。


ミサキ

「ごめん……私、とんでもないことを。ガロウ達にも……」


シンは上体を起こし、迷いなく彼女を抱き寄せる。


シン

「もう……何も気にするな。」


ミサキ

「……シン……」


シン

「もう何があっても、絶対離さない。」


ミサキ

「……うん、私も……もう離れたくない……」


静かな鼓動の音だけが部屋を満たす。

ミサキはその胸元に顔を埋め、シンの温もりを確かめるように目を閉じた。



再び作戦室。


薄暗いランプの下で、活月見、蓮華、ヴィクション、ガロウが地図を囲んでいた。

扉が開き、シンとミサキが入ってくる。


活月見

「おや、もう大丈夫なのかい?」


シン

「……ああ、心配かけた。」


その一言で張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。

しかし、次の瞬間――


ミサキ

「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい‼️」


ミサキが俯いたまま震える声を漏らす。

シンがそっと肩に手を置く。


ガロウ

「どうしたよ?」


ヴィクション

「察しはつく。気にするな。」


蓮華

「……あなたはあなた、あれはあれ。」


活月見

「そういうことさ。おかえり、ミサキ。」


ミサキ

「……みんな……」


ミサキの瞳から零れた涙は、罪悪感だけでなく、

迎え入れてくれた仲間たちへの安堵の色を帯びていた。



Scene 57 決戦へ向けて


ヴィクションが地図に視線を落とし、口を開いた。


ヴィクション

「それで、ノネムは一体どこに?」


ガロウ

「だな。どこに行きやがったんだ、あのペテン師は?」


活月見

「今のところ、これといった気配は感じないねぇ……」


沈黙の中、ミサキが拳を握り、小さな声で言う。


ミサキ

「多分……なんだけど……」


活月見

「何じゃ?」


ミサキ

「ノネムは封印の祠にいると思う。」


部屋の空気が一瞬止まった。

全員の視線がミサキへ向く。


ミサキ

「うっすらとだけど、前にノネムが言ってたの。

『まだ完全に封印が解けたわけじゃない』って。

今の姿は、意識だけが自由になっている状態……そんな言い方だった気がするの。」


活月見

「ふむ……と、言うと?」


ミサキ

「仮説も含めてだけど……今まで私たちが見てきたノネムは精神的な存在で、

本体はまだ封印の祠に眠ってるんじゃないかと。」


シン

「じゃあ……」


蓮華

「本当の復活を遂げるために……」


ヴィクション

「本体を取りに行った……」


ガロウ

「何かよくわかんねぇけど、そうなんじゃねえか?」


活月見

「なるほどな……あれから時間も経ったし、封印の力が更に弱まってるのも不思議じゃない。」


ガロウ

「ひょっとしてよ、ノネムが目覚める前に行けば、簡単に倒せるんじゃねえか?」


活月見

「そんな簡単に行くとは思わんが……急いだ方が良いのは間違いないね。」


シン

「封印の祠か……」


活月見

「決まりだね。明日の朝、封印の祠に向かうよ。」


緊張が再び部屋を満たす。

蓮華は小さく息を吐き、ヴィクションは剣の柄に手を添える。

ミサキは不安を抱きつつも、シンの隣でしっかりと頷いた。



Scene 58 選ばれし二人の光の騎士


その夜。アジト近くの小高い丘。


満天の星々が瞬き、月が静かに戦士たちを照らしている。

風が草原を撫で、遠くで虫の音が響いていた。


その中で、シンは腕を組み、夜空を仰いでいた。

そこへ、ミサキがやってくる。


ミサキ

「眠れないの?」


シン

「……ちょっと。」


ミサキ

「昔から考え事する時はここだもんね。」


ミサキが微笑みながら隣に座る。


シン

「覚悟はしてるつもりだけど……俺に光の騎士としての役割が果たせるかとかさ……」


ミサキ

「俺達! でしょ?」


シン

「え?」


ミサキ

「私も光の騎士なんですけどぉ?」


シン

「あっ……」


ミサキ

「忘れてたわね。ったく。それに活月見さんも言ってたでしょ?

光の騎士が揃わないとノネムを封印できないって。」


シン

「そうだな。」


ミサキ

「そ、一人で抱えないで。」


シン

「……ありがとう、ミサキ。」


ミサキ

「ふふ。さ、明日も早いからもう寝るよ。」


彼女が丘を降りていく背中を見送りながら、シンは静かに拳を握った。


少し離れた木陰――その様子を活月見が見守っていた。


活月見

「……頼むよ。あんた達が、このゼファーリアを救うんだよ。」


ノネムとの最終決戦を前に、戦士たちはそれぞれの想いを胸に抱く。

月は彼らを見守るように、静かにその光をたたえていた。




※本作はAIアシスタントの助言を受けつつ、作者自身の手で執筆しています。(世界観・物語は全て作者オリジナルです)

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