第13話 第8章 中編 侵食率98.6%

📘『黒き封印』第8章 中編(改訂版)



Scene 40 侵食する闇


――崩れた魔力貯蔵庫跡。

紫黒の瘴気が石壁を伝い、空気を重く染め上げる。

宙に浮かぶミザリー――その紫の瞳には、一片の感情も残っていなかった。



ミザリー

「……潰ス。潰ス、潰ス、全員ツブス。」


その声はひび割れた鐘の音のように冷たく、空間を震わせた。

次の瞬間、紫黒の魔弾が雨あられのように飛び交う。

床や壁が砕け、破片が嵐のように舞った。


ヴィクション

「防御を固めろ!」


低い声と共に剣を振り抜き、迫る弾丸をはじく。

爆風が彼を包み、砂塵が視界を白く濁らせた。


ガロウ

「ミサキ‼️目ぇ覚ませ‼️オレたちがわかんねぇのか‼️」


叫びも空しく、ミザリーの視線には彼らを認識する光すらなかった。


活月見

「魂の芯まで縛り付けてある……。

 ノネムめ……なんて残酷な魔術師!今のミザリーは空っぽだ。このままでは……」


シン

「……ミサキ‼️俺だ‼️――帰ろう‼️」


返るのは沈黙と、さらに加速する魔弾だけ。



Scene 41 狂気の魔術師ノネム


天井に黒環の魔法陣が浮かび上がり、回転と共に低い声が空間を満たす。


声(ノネム)

「侵食率……96.4%。

 ……ふむ、まだ“抗い”があるか。さすがに光の器か……」


ノネム(恍惚と)

「抵抗こそ、美しい。壊れる瞬間ほど、価値がある。」


黒い鎖が魔法陣から伸び、ミザリーの体を締め付ける。

皮膚の下で紋様が蠢き、瞳には人の光が消えていく。

そして、ミザリーはもはや人の形を留めていない。


ミザリー

「……ケス。コロ……ス……ツブス……。」


崩れた言葉と同時に、雷鳴のような衝撃が響き、石柱が砕けた。


蓮華

「活月見、上から来る!」


活月見

「わかってる。《術式・護・結界壁》――二重(ふたえ)‼️」


透明な光幕が張り巡らされ、崩落を防ぐ。

だが魔法陣はさらに回転を速め、瘴気の渦は濃さを増す。


声(ノネム)

「……ミザリー、お前は我の器だ。意思など不要。」



Scene 42 王城の影(ソルヴェン)


王城内部。

ソルヴェンは黒布に包んだ文書束を抱え、闇の中を音もなく進む。


兵士

「止まれ――!」


兵士の目が虚ろに揺れ、そのまま膝を折った。


ソルヴェン

「……眠れ。今は役を果たせぬ。」


資料庫へ滑り込み、命令書を開く。

王印は確かに押されている――だが印蝕は異常に深い。


ソルヴェン

「……偽造だ。やはり遠隔操作か。

(窓外の瘴気を見やり)……急がねば。“正統の証”を奪わねば。」


外套を翻し、闇に消えた。



Scene 43 魔獣ミザリー


再び貯蔵庫跡。

黒環は三重となり、床が悲鳴を上げる。


シン

「ミサキ‼️――戻ってこい‼️」


彼の叫びは獣の咆哮にかき消される。


ミザリー

「……ギ……ギギ……ッ……」


もうその声には意味はない。

その動きも人間らしさを失い、四肢を軋ませて宙を駆けた。


活月見

「……境界が消えかけてるねぇ。マズイよ、シン。

 完全に堕ちたら、光魔法でも効くかどうかわからないよ‼️」



Scene 44 侵食率98.6%


声(ノネム)

「侵食率……98.6%。

 ……美しい。あと少しで完成だ。」


鎖が増殖し、ミザリーを吊るし上げる。

黒い影が彼女の背中で獣のような形を取り、城全体が軋む。


ミザリー

「……ガ……グッ……ギッ……!」


意味をなさない声と共に、魔力が空間を押し潰す。

闇の中でミザリーはもはや“モンスター”としか呼べない姿へ変貌していた。


ヴィクション

「退くな。何としても持ち堪える。」


蓮華は影を操り、崩れる足場を無理やり繋ぎ止めた。


蓮華

「足場確保。――シン、今しかない!」


シン

「……ありがとう!」


砂塵を切り裂き、シンはミザリーの眼前へ飛び込む。

迫るのは鋭い爪の一閃。

光の粒子が舞う中、彼は叫ぶ。


シン

「ミサキ‼️――俺は絶対に諦めない‼️」



Scene 45 暴走、人外なる者


魔法陣は四重に増え、獣の咆哮が城の奥底を震わせた。

床の石が砕け、壁が軋む。


声(ノネム)

「侵食率……98.9%。

 ……まだ堕ちぬか。それもまた興味深い。」


ミザリーの動きはもはや理性を欠き、四足獣のような姿勢で壁を駆ける。


ガロウ

「シン‼️モタモタすんな‼️」


活月見

「光魔法でも抑えきれるか、今はわからないよ!」


シンは剣を構え、闇を睨んだ。


シン

「……来い、光よ――ルミナ‼️」


まばゆい光がシンを包み、光の鎧を身に纏う。

光の騎士シン。

白銀の光がほとばしり、闇と激突する。

城全体が悲鳴を上げ、視界が一瞬、白で塗り潰された。


――その直後、

獣の影がゆっくりと、一歩を踏み出した。

その足跡のたび、光が軋み、闇が嗤った。




※本作はAIアシスタントの助言を受けつつ、作者自身の手で執筆しています。(世界観・物語は全て作者オリジナルです)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る