第6話 第5章 前編 僅かな希望、伝説の光の神殿

『黒き封印』第5章 前編


Scene 20 僅かな希望、伝説の光の神殿へ


アジトの作戦室。

地図や魔術書が積まれた卓を囲み、三人の影があった。


ここにいるのは――シン、ガロウ、そして新たに加わった術師・活月見(いずみ)。

ガロウとはこれが初めての顔合わせになる。


森の中での戦闘から戻るまでの道すがら──

シンは謎めいた術師である活月見と共に歩きながら、己が見た光景を語り合っていた。

闇に呑まれ、名を「ミザリー」と変えたミサキとの再会。

そして、彼女を敵として斬らねばならなかった葛藤を。


その顛末を、いま改めて仲間の前で説明し終えたところだった。



シン

「──ってわけなんだ。俺が戦った相手は、確かにミサキだった。

けど……あいつは“ミザリー”って名乗って、完全にこっちを敵として見ていた」


重苦しい沈黙が落ちる。

それを破ったのは、ガロウだった。


ガロウ

「んあ? だからそのミザリーってのは、どこの誰なんだよ?」


活月見

「アンタもわからないヤツだねぇ。

だからミサキはミザリーで、ミザリーはミサキなんだよ」


シン

「…………(静かに頷く)」


シン

「性格も、言葉遣いも……全部が別人みたいだった。

でも──あれは、間違いなくミサキだったよ」


ガロウ

「だー、全然サッパリ意味がわかんねー。

ミサキがミザリーで、でも別人みたいで、でもやっぱミサキで……はぁ?」


活月見

「ま、混乱するのも無理ないけどね。

でも、それだけ“闇の影響”が深いってことさ」


活月見は地図を指でなぞりながら語り始める。

その指先が、淡く光を帯びた古の封印文字をなぞるように輝いた。


活月見

「“光の神殿”。

そこには、失われた“光の魔法”の根源が封じられてる。

もし扱えるようになれば……ミサキに繋がる何かを見つけられるかもしれない」


シン

「……場所は?」


活月見

「それが、わかんないんだよ。

封印戦争のとき、神殿は地図からも記録からも消された。

今じゃ伝承の中にしか名前が残ってない。アタシにも正確な位置はつかめてないのさ」


シン

「光の魔法……」


活月見

「“光の神殿”──そこには封印戦争の時代に使われた光魔法の根源がある。

あやつらが使う“黒魔術”に対抗できる、唯一の魔法……それが光の魔法、“光魔法(こうまほう)”じゃ」


シン

「黒魔術に……対抗?」


活月見

「そう。あの魔術は強力じゃ。だがその強力さ故に、命も心も削る。

そして、それに呑まれれば、どんな者でもやがて人ではなくなってしまう……」


シンの脳裏に、ミザリーの姿が浮かぶ。


活月見

「その闇を封じられるのは、“光の紋章”を持つ者だけ。

紋章は、生まれながらにして刻まれた“光の器”の証。

あんたと──ミサキに、それがある」


シン

「……俺と……ミサキ……」


活月見

「そう。

でもあの子は、ノネムの闇の力によって無理やり“闇の器”にされちまった。

本来なら、あの子だって“光”の側に立つ存在だったのにね……」


活月見

「だからこそ、あんたが立たなきゃならない。

光の器として──あの子を取り戻すために。

それができるのは、あんたしかいないよ、シン」


シン

「……わかった。俺、行くよ。どこにでも」


活月見

「そうこなくっちゃ。……で、問題は場所さ」


シン

「確かに、神殿の場所が分からないんじゃ──」


活月見

「安心しな。いいヤツがいるんだよ。ちょうど今、来てるかもしれない」


活月見は部屋の入口に声をかけた。


活月見

「──来てるかい?」


シンとガロウがそちらに目をやる……が、誰もいない。


ガロウ

「……? おいおい、誰に──」


次の瞬間、室内の隅から影が立ち上がった。


シン

「……!?」


ガロウ

「うぉおおおい⁉︎ どこから湧いた⁉︎」


巻物を倒し、椅子を蹴っ飛ばして転びかけるガロウ。


ガロウ

「おい活月見‼︎ 敵襲か!? 新手の黒魔術師か⁉︎」


活月見

「落ち着きな、ガロウ。敵じゃないよ」


活月見

「紹介しようかね。この子が、“蓮華(れんか)”だよ」


漆黒の忍装束をまとった女性が立っていた。

目深に下ろした前髪が顔の半分を隠し、口元は固く閉ざされている。

ただ、その瞳だけが静かに光を宿していた。


シン

「……いつから、そこに……?」


蓮華は答えず、ただ目線を活月見へと向ける。


活月見

「ずっと、ここにいたさ。アンタらが“光の神殿”って言葉を出す前から、ね」


活月見

「この子が、その神殿の場所を知ってる。

封印戦争の末裔が記録を託した一族の生き残り──その最後のひとりさ」


ガロウ

「……な、なんでそんな大事なこと言わずにいきなり出てくんだよ……!」


活月見

「それが、忍ってもんさ。気配を絶ち、壁のように存在を消す。

しゃべらない、動かない、気づかせない。ねぇ、蓮華?」


蓮華

「……その場所なら、もう見つけた」



Scene 21 決意の刻


アジトの作戦室。

テーブルの上に広げられた古びた地図を、活月見がじっと見つめていた。


活月見

「光の神殿──ようやく手がかりを得たよ。

あとは、誰が向かうか、じゃな」


蓮華が静かに歩み寄り、懐から一枚の紙を取り出す。

それは古びた地図──魔力を帯びた印が刻まれていた。


蓮華

「……その場所なら、もう見つけた。

この地図に示してある。──あなたが持っていて」


活月見

「ふむ……ここか。人の手が届かぬ森の奥地。

なるほど、“聖域”にしては妙に静かすぎる場所じゃな」


ガロウ

「で? 誰がそこへ行くんだ? 蓮華、お前も行くのか?」


蓮華

「……私は残る。アジトの戦力をこれ以上減らすわけにはいかない。

それに──魔法の継承には、あなた(活月見)の方が適任」


活月見

「ほぉ……察しのいい子だねぇ。

じゃあ、行くのはワシと──光の器であるシンじゃな」


シン

「ああ。俺が行く。

ミサキを……救うために。

きっと、光の力がその鍵になると信じてる」


ガロウ

「おう、行ってこいよ。

その光の力ってヤツで、闇の連中に一発お見舞いしてやれ」


活月見

「油断は禁物じゃ。

“神殿”といえど、闇の影が潜んでおっても不思議はない。

命懸けの旅になるかもしれんよ、坊や」


ガロウ

「おいおい、シンのこと坊や扱いすんなって……」


活月見

「事実じゃろ? フフ……」


活月見はそう言って、地図をしっかりと握る。

その視線の先にあるのは、まだ見ぬ光の源――希望の地。




※本作はAIアシスタントの助言を受けつつ、作者自身の手で執筆しています。(世界観・物語は全て作者オリジナルです)

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