クソザコ悪役貴族に転生したので運命に逆らい最強になって破滅フラグを回避してたら、クセつよヒロインたちに溺愛されてしまったのだが?~とかやってたら、無自覚に本編ぶっ壊して最凶なストーリーが始まったッ!?

トワ★スグナリ

第1話 異世界で悪役になった!?

「ぎゃああああ! 坊ちゃまが、死んじゃったあああああああああああああっ!」


 唐突に絶叫が響き渡った。


「か、かかか、雷に打たれた! 私の祈りが通じて、遂に邪神様の天罰が下ったわっ!?」


 俺の目の前で、女の子がキャーキャーと騒いでいる。


 メイドっぽい服、見惚れるほどに愛くるしい顔、さらさらでキラキラの金髪……。


「それに……ふわふわのしっぽ&ケモ耳!?」


 はうあ!

 なんだ、この愛くるしいケモ耳少女はッ!?


「ぼ、ぼぼぼ、坊ちゃまっ!? め、目が覚めたのですか……っ!?」


 なんで知らない場所で、見たことない女の子に添われて、謎の豪華ベットに寝てんのッ!?


 さっきまで、自分の部屋でゲームをしていたのに……。



「それより、ここはどこだよ! 君、誰ッ!?」

「ペヨルマ坊ちゃま! お気を確かにっ!」


「……坊ちゃま? 誰? ぺよるま?」


 ワンちゃん系ケモ耳少女が、大きな丸い目でじぃっと俺を見てくる。


 ……えっ? まさか、俺のこと?


「ち、違うんだけど……俺、ぺよるま違う……?」

「違いませんよっ! しっかりなさってくださいましっ!」


 ケモ耳少女が慌てた様子で鏡を見せてきた。


 誰だよ、この醜いデブは……? 太りすぎて顔と首が一体化してるじゃねぇか。


 ん? んん? 待てよ……この性悪そうなデブの顔に見覚えが……。


 はうあ!


「極悪貴族のペヨルマじゃん!?」


 ケモ耳少女から鏡を奪って、よーく見てみる……!


 鏡に映る俺の姿は……間違いなく、さっきまで遊んでいたアクションRPG『Mortal Destiny』に登場する『極悪キャラのペヨルマ』だった!?


 ということは、俺の目の前にいる女の子は……まさか、まさかの……。



「ぼ、坊ちゃま? 急にお静かになられましたが、お加減が悪いのですか……?」


 メイドだし、ケモ耳だし、金髪だし、おっぱい大きいし、美少女だし……。


 邪推するより、目の前の本人に聞いたほうがいい!


「ねぇ、誰? 君は、誰なの……?」


「え? チュチュでございますが?」


 今、『チュチュ』って言ったのか?

 聞き間違いじゃない……よな?


「……チュチュ? 君は、チュチュっていうのかいっ!?」

「はい。チュチュでございますよ? それが、いかがいたしましたか……?」


 う、嘘だろ!? こ、こんなことがあっていいのか……ッ!?


 このケモ耳の女の子がチュチュで、俺が持つ鏡に映る男がペヨルマ……。

 こいつら、二人とも……『Mortal Destiny』の登場キャラじゃないかッ!


「あの……坊ちゃま? 先ほどから、ひどく取り乱されたご様子ですが……」


 わけのわからな状況に混乱していると、チュチュが心配そうに顔を覗き込んできた。


「ま、まさか! 雷に打たれたせいで、お体に障りが……っ!」


 前かがみで覗き込んでくる姿……むっちゃかわいいやないかい!


 現実には決して存在しない、ケモ耳&尻尾の美少女だ。その異世界レベルの可憐さと愛らしさに、思わず取り乱してしまう。


「いや、大丈夫、大丈夫! 心配してくれて、ありがとうね」


 俺が取り繕って言うなり、チュチュが子犬みたいに目をきょとんとさせる。


そして、戸惑いと驚きがないまぜになった顔で、じぃと見つめられた。


 え? なんかミスったか!? 


「ど、どうしたんだい?」


「い、いえ……まさか、そんなお優しい言葉をかけて頂けるとは思わず……少々、驚いてしまいました……」


 奇遇だね、俺も驚いてるよ。

 だって、鏡に映る自分の姿が、ゲームに出てくる悪役キャラになっているんだから……!


 鏡をまじまじと見れば、初見よりもさらに確信が強まる。


 間違いなく俺の姿は、『Mortal Destiny』に登場する悪役キャラのペヨルマだ。


 『Mortal Destiny』――死すべき運命、なんていう物騒なタイトルのゲームだが、中身はよくある異世界ファンタジーに学園モノを合わせたやつだ。


 で、その中でもゴミ屑凌辱悪役クソザコ最悪貴族と言われるのが……ペヨルマ。



「坊ちゃま? 先ほどから、ご気分が優れないようですが……本当に大丈夫ですか?」


 唾棄されて嫌われる理由は、この愛らしい女の子・チュチュを虐待するからだ。 


 とりあえず、ペヨルマのキャラ設定を思い出すと――


 貴族の母親は幼い頃に死去、軍人の父親は戦争で忙しく家におらず、それをいいことに好き放題をする幼少期。

 思春期頃に、戦争で父親も死ぬ。若くして家督を受け継ぎ、財産と地位を手に入れたことで以前よりもさらに傲慢で邪悪な性格になり、傍若無人の狼藉三昧。


 ゲームの舞台である学園に入学後は、親譲りの権力を使って悪事を働き、金の力で有象無象の子分を従えて、気に入らないやつを片っ端からいじめて回る楽しい学園生活――。


 しかし、主人公と遭遇&衝突!

 そして、敗北! 


 華麗なる貴族の御曹司であったが、主人公に負けて惨めな敗北者に転落……。


 現実でもよくいる金とコネを持った性悪なクソ野郎……だが、現実は法律と倫理の壁が障害になって手が出せない。

 だからこそ、ゲームではクソ野郎をぶちのめしてスカッとしたい――。


 そんな不謹慎な欲望を叶えるための哀れなやられ役――それが、ペヨルマだ。


「あぁ……最悪過ぎる……! もっと他にキャラいるだろ……ッ!」


 悪夢なら早く終わってくれぇぇぇーッ!

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