告白カレンダー

夏宵 澪  

土曜日「始まりの予感」

放課後の図書室は、夕陽に染まっていた。

窓際の席には、静かな空気と、本のページをめくる音だけ。

私は背伸びして一冊の本を取ろうと手を伸ばす。

その瞬間、指先がふと――誰かの手に触れた。


「……ごめん」

「い、いえっ!」


反射的に引っ込めた手の先にいたのは、結城蒼真くん。

クラスではあまり目立たないけれど、笑うとやさしい声をする人。


視線が合うと、胸が跳ねた。

たったそれだけの出来事なのに、

帰り道の風も、スマホの画面も、全部が少し違って見えた。


夜、ベッドの上で考える。

あのとき、彼は何を読もうとしてたんだろう?

私の手が震えたの、気づいてたかな?


ページのすき間に、

「恋の予感」みたいな空気が、

ふっと挟まっていた気がする。


土曜日。

週のはじまり、恋のはじまり。

運命って、こんな静かに始まるんだ。

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