11話 輝き
ライブ用にうすぼんやりとした藍色の照明が照らされた小さな体育館の屋上席で、私達は未だ下がったままの舞台の垂れ幕を眺める。階下、普段体育の授業をしているバレーコートなんかのラインが敷かれていた場所は今は鳴りを潜め、パイプ椅子がずらりと並んでいる。
「やっぱり凄いですね、人間一人にこれだけ人を集める力があるなんて!」
体育館の入り口にはパイプ椅子を全て使い切るくらいの量の生徒や観客達が屯していて、係の人がそんなお客さんを席へ誘導している。
「ほんと、どこでも勝手に率先して輝けちゃう子なんですよ。ミズは」
葵さんの話の通りなら、瑞希さんは葵さんを、ずっと守ろうとしていた。表でも裏でも、彼女はアイドルそのものだった。
「そんな子だから私は、あの子が好きなんです」
葵さんのその一言の後、会場の照明はただステージを照らす物だけになる。
そうしてミズが、垂れ幕が上がると共に姿を見せた。
テレビで見る時と比べ、設備には限界があるから目が奪われる程ステージが輝いてはいない。だけど彼女自身が、輝き続けるから。だから私は、目を離す事が出来なかった。
階下の人達もまた、その輝きを目の当たりにしているのだろう。
「勘違いをしていただけかもしれませんね、私達」
「勘違い?」
「お互いあの子の事を心配していましたが、そんな必要は無さそうだと。ただそれだけの事です」
舞台の輝きと、階下の熱気が私達の身体を熱くする。
それはユニットで活動していた時のライブの熱気と何ら変わりなくて……。
「そうですね……。でも、私はちゃんと友達に、なってみせます」
呟くように吐いたそんな言葉は、会場の熱狂の中に溶けていった。
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