第6話

 署に戻ったのは、十八時過ぎ。眩い夕日の光が窓から差し込み、室内を照らす。

「しっかし、顔は痛ぇな。久しぶりに殴られた」

「猫田さん、流石に暴言吐き過ぎっすよ。殴られても仕方ないって思いましたけど」

「そうか? 俺の暴言なんて可愛いほうだろ」

 笑うと頬が痛む。そこに、乾の手が重なる。

「もう、こんな無茶な真似はしないでください。また怪我したらどうするんすか」

 乾の優しい表情はぎこちない。

「一度死にかけた奴は強い、ってな」

今度は、慣れたように呆れた顔を浮かべた。

「顔、洗うかな」

「ほんと潔癖っすよね。よくそれで刑事になれましたね」

「世馴れしてるんだよ。ハハハ」

「笑い事っすか」

「いいんだよ。ほら、もう定時過ぎてんだから、帰れ」

 優しさを込めた発言に頷かない乾。何か言いたげな表情を浮かべる。

「どうした、帰らないのか」

「猫田さん」

「ん?」

「今度からは、俺にも白井さんの件、捜査させてください。その、俺、これでも、一応、猫田さんの相棒なんすから」

 真っ直ぐで力強い視線は、俺の目を捉える。俺も、見つめ直す。

「一応じゃない。乾は、間違いなく俺の相棒だ」

 途端に頬を赤くする乾。色んな意味で、育て甲斐がありそうだ。

「これからもよろしくな、相棒」

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