第5章 イケメン大作戦。男気デート計画発動。

第24話 優のカッコいい大作戦。イケメン感謝の日。「今日は気分を変えて、赤にしてみたんだ!」

 十一月二十三日、火曜日(勤労感謝の日・祝日)。

 和奏に男として見られていない現状を打破するため、『イケメンデート計画』を発動する。

 なお、今週土曜日の和奏とのデートは凛に譲った。


 ──スマートだろう?


 今回のデートの趣旨は『和奏にかっこいい姿を見せ、男として意識させる』というもの。

 計画立案後。早速、スマホを取り出し、レインで和奏をデートに誘う。

 すぐさま既読がつく。

 しばらくして『ほんとにいいの……?』と返事。

 僕は『もちろんだよ!』と返信。イケメンキャラがサムズアップしているスタンプを連打。

 ──しかし、和奏を誘ってみたはいいものの、いつも彼女に導かれるままデートをしてきた僕。

 どんなデートをすれば、和奏にかっこいいと思ってもらえるのか分からない。

 困り果てた僕。とりあえず、駅前の書店へと走る。

 デートの参考にと『ボウリングのプリンス様』(通称ボリプリ)という恋愛ボウリング漫画を購入した。

 ──この漫画のデートシーンが、SNSを中心にバズっているという噂を耳にしたからだ。

 おそらく、プリンス様が出てくるだけあって、格好いいと評判なのだろう。

 なお、今回のデートにあたり、10日間ほどをかけて、入念に準備をおこなった。もちろん、コーディネートは自分で組んだ。

 上はネイビーブルーを基調としたミリタリー風ブラウス、下は足首まである黒のラップスカートを合わせた。イケメン女子というやつを狙ってのコーデだ。

 これなら、和奏の女装してほしいという需要と、僕のイケメンムーブというニーズに合致する。

 なお、今回の衣装は、なんでも揃うと評判の大手通販サイト、アマゾネスで購入。

 ウィッグやブラジャーなどは、デートに誘ったあと、事前に和奏から借り受けていた。

  事前に待ち合わせ場所を指定し、おたがい現地直行。

 なお、自宅では女装できないため、着替え用にレンタルスペースを利用した。

 準備万端、待ち合わせの2時間前にはスタンバイ。

 約束していた時間の10分前に、紙袋片手に現れた和奏。僕の出で立ちに唖然としていた。


「ゆ、優……今日の格好、すごいわね……?」


 気合いが入った今日の服装を見た和奏。

 彼女が、僕のあまりの眩しさに、タジタジしている!


「なかなか決まってるでしょ! 僕、格好いいよねっ?」

「ま、まぁ……そうかしらね……って、ゆ、優!? あなた、そのくちびるの色、どうしたの……?!」


 僕の口元に向き、目を瞠る和奏のまなざし。


「──あ、気付いてくれてんたんだっ? 今日は気分を変えて、赤にしてみたんだ!」


 僕の口元。真っ赤に染まった唇。

 本日は和奏からもらった可愛いピンクのリップは封印し、格好よく、情熱的な、真っ赤かリップを塗ったのだ。

 ──僕の様変わりした姿に、慌てた表情を浮かべる彼女。

 どうやら、今日の僕がイケメン過ぎて混乱しているようだ……!


「それにしても、和奏! 今日は一段と美しいねっ!」


 目を逸らして前髪をいじる和奏。


「そうかしら………」


 ──照れてる、照れてる……!

 心のなかで拳を握ってガッツポーズ!


◆◆◆◆

 

「ちょっと、トイレ行ってくるね(キリッ)」

「え、ええ。行ってらっしゃい……」


 一度、トイレに行くふりをして、和奏のもとから離れる。

 道の隅へ行き、バッグに忍ばせた、『ボウリングのプリンス様』19巻を取り出す。

『第3話 ドキドキ! 涙のストライクデート!! の巻』

 付箋をつけて何度も読み込んだそのデートシーン。

 それを再現すべく、和奏の元へと戻った僕たちは、いざラウンドスリーへと向かう。

 

◆◆◆◆


 和奏とふたりでボウリングをはじめる。

 しばらく普通にプレイ。

 僕はタイミングを見計らい、ボリプリ屈指の名シーンを再現にかかる。

 ボリプリ主人公、越後屋アクマが、ボウリングデート中、突如持病のイップスを発症し、ガーターを10連発してしまう。

 しかし、ヒロイン、虎崎梅乃の献身的な応援により、調子を取り戻したアクマが華麗にストライクを決めるという、涙無しでは読めないそのシーン。

 和奏の前で、一世一代の名場面に取りかかる。

 

◆◆◆◆


 連続10回ガーター。

 ──ここまでは計画どおり。


「じ、持病のイップスが……ッ! 右腕が疼く……! わっ、和奏! 僕を応援してくれッッ!」


 自前の特殊メイクを施した右腕を必死に押さえ、ボリプリの名言ゼリフを完全再現。

 あらかじめ用意していたポンポンを和奏に投げ渡す。


「ゆ、優〜〜……、がんばれぇ〜〜……。」


 和奏がポンポンを手にぎこちない動きで、僕へ黄色い声援を送ってくる。


 ──よしっ! チャージみなぎったあぁぁーーーーー!!

 11投目、ラップスカートを翻し、振りかぶって投球!

 スカーーーーーーン!!


「決まったぁぁっ……ッッ!!」

 

 見事、ストライク……!!

 この数日間、学校帰りにラウンドスリーに通い詰めて練習した結果、ガーターも、ストライクも自在に狙って出せるようになっていた。その成果がいま、現れた。

  和奏に向かってピースサイン! からの〜〜、ハイターッッチ!!

 和奏が額に手を当て俯きながら僕のタッチを受ける。

 どうやら、僕の姿が眩しすぎて、直視できないようだ。


「……あたし、トイレ……」 

「僕がエスコートするよ(キリッ)」

「いいわ……遠慮しとく……」


 ふらふらとトイレへ歩いて行く和奏。

 僕のかっこよさに照れちゃって、遠慮している彼女のしおらしい姿を見送る。


 ──どうやらこのイケメンデート、大成功のようだ……!!

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