忌み子の聖女
宵ヲ出ズ
グランヴァルド帝国
第1話 召喚
「ここは……」
暗闇に包まれたと思った次の瞬間
眩い光が、長く重い前髪をすり抜け
視界を貫いた。
反射的に目を開けると、そこには――
「成功です!」
「今回もうまくいったようだな」
「生体反応はあります」
絢爛豪華な場所だった。
周囲には人集りができている。
先程までいた場所とは、確実に別世界だ
落ち着いてまわりを見回した。
天井はどこまでも高く、
白を基調としながらも、柱や壁には金で模様が施されている。
光が反射してきらめくその空間は、豪華でありながらどこか神殿のように荘厳で——
思わず息を呑んだ。
ひんやりとした空気が肌を撫で、低いざわめきが遠く反響していた。
周りには2、30人だろうか…
ザワついている人々の声が広がっている。
立っている足元には、白い胞子のような光が徐々に輝きを失いつつあった
「…なにこれ」
体育の授業で使った、石灰のような粉で描かれた円。
円の中は、見たこともない紋様で埋め尽くされている。
そこの中心に立っている自分ともう1人
人が倒れ込んでいる。
倒れてる人の腕には、ブレスレットが付いている。
一目で分かった。
よく知っている人だと。
「…
莉緒は倒れ込む人物に近づいて、
意識を取り戻そうと、肩を抱き
声をかけていた。
双子の妹・美緒に
「美緒っ、しっかりして!」
莉緒の呼びかけに
美緒は徐々に意識を取り戻していった
「…うぅん」
「美緒…良かった……」
妹が意識を取り戻し、安堵したのも束の間
美緒は、心配をした莉緒の腕を払いのけ
眉をひそめた。
「あんた…何したの?」
「えっ…?」
莉緒は、自身も同じ境遇なのに、
こちらに疑いが向けられ、戸惑ってしまった。
なんと答えるか迷っているうちに
周囲でザワついていた音が止み、
円を取り囲んでいた人集りは、きれいに二つに分かれ、真っ直ぐな道が出来ていた。
すると分かれた場所の先から、
深く重みのある声が聞こえてくる。
「よくぞ参った」
声の方に顔を向けると、
玉座が二脚と横に立つ2人の人影。
「……お城?」
莉緒が心で思った事を
美緒がポツリ、と横で呟いていた。
確かに目の先には
これが王様なのだ、と言わんばかりに煌びやかな装いをした人物が、玉座に腰掛けていて
もう一つの玉座には、自分の国ではあまり使われる機会が無いであろう、豪華なドレスの女性が腰掛けていた。
「ここはグランヴァルド帝国。
私は、ガルディオス・グランヴァルド。
皇帝である。」
何が起きてるか分からないまま王様…
皇帝の説明が続いた
「この国では代々、異世界から聖女を召喚し、皇子を側仕えとして支えながら、
国の繁栄を手伝ってもらっている。
本来なら聖女は1人なのだが…」
皇帝は何かを言い淀んでいた。
(グランヴァルド?聖女?何を言ってるんだろうこの人)
莉緒は全く理解ができなかった。
なんとか理解しようとしても
一瞬の出来事で、追いつかないまま
話が進んでいたのだ。
「元いた場所に、かえしてください。」
咄嗟に、声に出してしまっていた。
それもそうだ。
一瞬で自分が住んでいた場所が変わり
聞いた事もない帝国の皇帝が
聖女として、皇子の側仕えになり
国の繁栄を手伝ってもらうと言い出したのだ。
(意味わかんない…!
帰りたい………だけど、どうすれば?)
そんな事を考えていたが、
返答は残酷なものだった。
「それは無理だ。
もう、戻る事はできん。」
「……は?」
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