第23話 怒りの異変!

立ち上がってきたところを両腕を極めて動けなくしてから、顔面をマットに叩きつけた。

先ほどの意趣返しというわけだ。

倒れている間も容赦なく顔面に蹴りを見舞ってサッカーボールのように吹き飛ばす。

虫のように何度も踏みつけるヨハネスの顔は痛めつけることを楽しんでいる。


試合の流れを見たカイザーは脂汗を流した。一見するとヨハネスが圧倒しているようにも見えるが、実際は逆だ。


苛烈な攻撃をするほどヨハネスの小さな肩が上下を繰り返している。

何度目かのストンピングを掴まれ、そのまま足を捻って横転させられた。

首や腕を鳴らし立ち上がったカメレオンはまだ戦闘を続行できる。


対するヨハネスは明らかに体力を消耗させていた。呼吸が荒く、動けない。

唇を噛み締め睨むが目尻には薄く涙の膜が張られていた。


「……ヨハネス。もういい。君は頑張った」


カイザーが重く呟きタオルを掴む。投げ入れればヨハネスの負けが決まる。スター流のルールでは失神、死亡、三カウント、セコンドのタオル投入で決着がつく。

流派のトップを一時的でも任されたカイザーにはメンバーの命を守る責任と義務があるが、ヨハネスは手をかざしてタオルの投入を拒否。


「あとすこしだけ戦わせて」


ヨハネスの瞳はこれまでに見たこともないほど真剣だった。

血が滴る口元を拭い、構える。


「君は腐ってもスターの弟子だねえ。女の子みたいに可憐だけど、中身は戦士だ。

それで、この後はおれをどう楽しませるつもりかな」

「楽しませるんじゃない。君を葬り去る」


ヨハネスは両の掌を輝かせ手の甲から光の刃を作り出した。


「僕の――エクスカリバーナックルで!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る