第7話 怪盗カメレオンの復活!!

エリザベスは病弱で余命一時間という非常に危機的な状況をスター様に救われた過去を持ち、その流れでメンバー入りしたのだが超人キャンディーの影響でかなり改善したとはいえ油断ができないのも事実だった。


彼女自身もよく理解しているのだろう、あまりビルの外へは出ない傾向がある。


もっともビルの内部は一日中でも楽しめるほど店舗が充実しているのでその必要もないだろうが。


私とエリザベスはビル内にあるドーナツ屋に入りドーナツとジュースを飲食しながら、しばし楽しい話に花を咲かせた。


「わたし、ムースとキャラが被っているんじゃないかって悩んでいたんですけど、微妙に違うって言われて吹っ切れちゃいまして。

長い間の悩みが解決すると元気が出ますね。そうそう、カイザーは知ってます? 

李が千五百年ぶりに復活した銀角を倒した話!」


彼女はよく回る舌で私が知らない情報を色々と教えてくれた。


これまで前線を退いてよほどのことを除いてメンバーとの交流も控えていたので、彼女の教えてくれた情報はとてもありがたかった。話過ぎて額に薄く汗が浮かんできた彼女を自室に戻し、私も会長室に戻るべく足を進めていた。


小さなことでも活動をすれば収穫はやはり大きいものだ。


少しずつ皆と協力していけばこれほど嬉しいことはない反面、責任もある。


スター様が帰還するまでの間、なんとか地球の平和を維持しなければならぬ。


部屋に戻った私は更なる情報収集の役に立てばと部屋に設置されている超大型テレビのスイッチを入れた。


やっていたニュース番組を見た私は驚愕した。


「先ほど、謎の棺が発見されました……」


幾重にも鎖で巻きつけられた漆黒の棺こそ怪盗カメレオンが封印されたものだ。


「開けてはならぬ!」


私の制止がテレビに届くはずもなく、鎖は焼き切られ蓋は開けられた。


しかし、中身は空だった。


当たり前だ。人間にも目視できぬほどの速度で飛び出したのだろう。

拍子抜けした人々の顔がテレビに映る中、私は頭を抱えた。


スター様の封印の最大の欠点は内部からは決して解けることがないが、外部からの衝撃に脆い。


エリザベスの話によると銀角による封印も落雷が原因で解けたという。


いかに人里離れた寺院の地下に封印されていたとはいえ、発見されてしまうとは。

しかもこのタイミングで封印が解かれるなど最悪だった。


やはりヨハネスの予知は的中したのだ。


スター様のいない今、再び封印することはできない。

しかも奴は絶対に捕まえられない理由がある。


唯一の望みは封印で力が衰えていることぐらいだろう。


事実、銀角も千五百年もの封印により以前と比較すると腕が落ちていたという。

年月が腕を鈍らせていれば残っているメンバーでも勝利することが――


「臨時ニュースです。突如として美術館の美術品の全てが消失しました」


できない。奴の盗みの腕は健在だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る