俺はブサイクだ。~棍棒とバーコードと世界最強~

茶電子素

第1話 どんなに重い宿命を背負っていようがカッコよければ救いはある

だけど俺はブサイクだ。

いや、ただのブサイクではない。

ブサイク界のオールスター、顔面偏差値の深海魚。

もはや「人類の進化の過程で一度も通らなかった顔」

と言われても納得できるレベルだ。


まず目だ。すけべそうに細く、常に「何か企んでます」と自己申告している。

次に馬面。顔の縦の長さが、もはや普通の定規では測れない。

下膨れの輪郭は「丸底フラスコ」と呼ばれ、

豚鼻は「鼻の穴が正面からこんにちは、現在吸引能力向上中」という感じだ。

たらこ唇は冬場に乾燥して割れると、もはや血まみれ高級ソーセージ。

極めつけはケツ顎。顔の真ん中にお尻が鎮座。

これでモテたら神話として語り継がれる……。


そして十九歳にして頭はバーコード。

毛根が「俺たち、もう限界っす」と言わんばかりに退職届を出して逝った。

残った精鋭たちは必死に横断歩道を作っているが、

鏡を見るたびに「お前ら、そんなに頑張らなくてもいいんだぞ」

と声をかけたくなる。


だが、一つだけ救いがある。

耳だ。福耳。これだけは立派だ。耳たぶがぷっくりしていて、触ると妙に安心する。占い師いわく「あなたは金運に恵まれます」と言われた。

まあ現実は貧乏男爵家の前妻の息子である。

金運どころか、財布の中は常にカラッポで、耳だけが未来を信じて頑張ってくれている。


というわけで、

そんな俺が恋だの愛だのできると思うか? 

無理だ。普通の恋愛は望めまい。

街で女の子に声をかければ、

百歩下がって「すみません、急いでるんで」と言われる。

いや、急いでなくても急いでるフリをされる。

俺の顔は「時短の呪文」なのだろうか。


だから俺は決めた!奴隷を買う!!

「愛は金で解決できる」――これが俺の恋愛哲学だ。

最低?

知ったことか。

俺は最低のさらに下を掘り進む男。

地底のブサイク鉱山を独力で開拓している勇者といっても過言ではない。


もっとも、奴隷を買う金もない。

貧乏男爵家の前妻の息子という立場は、財布の中身まで緊張感がある。


ちなみに父は後妻とその息子――つまり俺の弟に夢中だ。


弟は金髪碧眼、性格良し。

まるで絵本から抜け出したようなイケメン。

俺と並ぶと「三次元と三十次元」みたいに見える。

父は当然、弟を跡取りに推す。

俺は「まあ一応長男だから置いとくか」程度の扱いだ。


この理不尽で残酷な世界で、俺は考えた。


「強ければ何とかなる」


シンプルだ。顔がダメなら筋肉で勝負。

筋肉だけで足りなければぜい肉も戦わせて見せよう。


愛されないなら恐れられろ。

人は顔で判断するが、顔を超える力があれば、きっと世界は俺にひれ伏す。


……と、ここまで語っておいて何だが、俺はまだ何も成し遂げていない。

ただのブサイク十九歳である。


だが、俺には確信がある。俺は必ずやり遂げる。

奴隷を手に入れ、強さを証明し、金を稼ぎ、父も弟も見返してやる。


そう、俺はブサイクだ。

だが、この顔面こそが俺の武器になる日が来る。


――と、鏡に向かって言ってみたが、

鏡の中の俺は「いや無理だろ」と返してきた気がした。

こいつなかなか自己分析に長けてやがる……。


そんなこんなで、自分を信じてだらだらと過ごす、今日この頃であった。

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