第2話 消失の美少女

(そんな馬鹿な!)


 かけている眼鏡を動かし、あわててその姿を探し求めると、彼女は地面にうずくまっていた。


(ちょっと、ヤバい感じがする)


 俺は、あわててギャルの元へと駆け寄り、腰をかがめた。


「ねえ君、大丈夫!?」


「ああ、うん……」


 呼びかけに対し、せつなそうに顔を上げたギャルを見て、俺は一瞬、呼吸が止まりそうになった。


 誇張でも何でもなく、本当に透き通るような真っ白い肌。


 まるで人形のような整った顔立ち。


(こんな綺麗な子、見たことがない……)


 そこにいたのは、本物の美少女だった。苦しげに顔を歪めているが、それでも消えることのない、圧倒的なオーラを放っている。


(もしかして、アイドルか何か?)


 俺が気圧されて、身じろぎもできないでいると、ギャルは少しだけ、頬をゆるめた。


「ありがとう。急にクラクラしちゃって」


「そ、そうなんだ」


「たぶん貧血だと思う。たまにあるの」


 美少女は、姿かたちだけでなく、声までもかわいかった。


 自分でも、鼓動が早くなるのがよくわかる。


 俺は大きく息を吸い、一旦、心を落ち着かせた。


「貧血なら、とりあえず、そのまま動かない方がいいね。酸素を消費するといけないから」


「詳しいんだね」


「まあ、これでも一応、医者の息子なんで」


「そうなんだ」


「救急車を呼んだ方がいい?」


「大丈夫。もう少ししたら、動けるようになると思う」


 それを聞いて、心から安心した。


「よかった。じゃあ、落ち着いたら、声をかけてね。近くの、休めそうなところに移動しよう」


「一人で大丈夫だよ。悪いし」


「気にしないで。このままだと、俺も寝覚めが悪いからさ」


「じゃあ、甘えちゃっていいかな。ちょっとしんどいかも」


「了解。あわてて無理しないでいいからね」

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