第6話 絶対の約束だからね!


『全く、内野も変わってねぇな。そんなわけでさ、俺と内野は赤の他人じゃなかったんだよ。言ってなくてごめんね』


「ううん。家族にも徹くんのことは話したことなかった。あんな滅茶苦茶なことを言ったのに、内野くんは分かってくれたみたいだね」


『ま、男同士の関係ってこういうサバサバしたところもあるもんでね。変に固執しないっていうかさ。だから俺思っていたんだ。佳織ちゃんが寂しいと思うのなら、内野なら託せるかなって。あいつ以外だったら俺はいつまででもここにいたいと駄々をこねたと思う。最近どうやらこっちにいるのがバレたみたいで、お呼びがかかってるようでさ。もう佳織ちゃんと話していられなさそうなんだ』


「え? そうなの? そしたら、この寄り道も終わりだね」


 だって、この公園への寄り道は徹くんに会うためにしていたんだもん。その理由がなくなってしまったらここに来ることはないだろう。


『だからさ……、もし佳織ちゃんが内野に少しでも気持ちが移りそうだったら、ここで俺のことを振ってほしい。そしたら、少し悔しいけど、佳織ちゃんのことはあいつに任せようかと思ってる。判断は佳織ちゃんに任せるよ』


 徹くんが私から視線を避けるように体の向きを変えた。


 だから、逆に私は徹くんの前に回り込んだんだ。


「徹くんはどこまで女の子の気持ちに鈍感なのかなぁ。私、あの日にお菓子と一緒にカードを持っていたんだ。色褪せちゃったけど、まだ持ってるよ。いつか渡せるかもしれないってね」


 生徒手帳のケースの中に入れてあったメッセージカード。初めてでたどたどしい感じだけど、「徹くんが好きです。お付き合いしてください」の文字はまだ読める。


「これでもいい? あの時から変わらない。もらってくれたら嬉しいな……」


『佳織ちゃん。俺もあの日言うつもりだった。佳織ちゃんを誰にも取られたくない。付き合ってほしいって』


「ふふっ、私たちみんなから思われていただけじゃなくて、あの頃から私たち両想いだったんだね。心配しないで? 次に会うのはきっと空の上だよ。それまで私も待ってる。今度こそずっと一緒にいようよ。それを私の最後の誓いにするから」


 私が差し出したカードを徹くんはしっかり受け取ってくれた。


『佳織ちゃんを上から見てるよ。それじゃ俺からもひとつ。俺の両親のところに当時のものがまだ残してある。その中に佳織ちゃん宛てのものがある。それを受け取ってほしいんだ。それが俺がいた証拠になるんかなぁ』


「分かった。受け取らせてもらうね。うん。物は何であってもそう思って大切にする」


 いつの間にか雨は上がっていて、空からうっすら光が差している。


『雨上がりの虹なんか出ちゃってさ。呼ばれたなら行くしかねぇか』


「私が行くまで、あそこで待っていてね」


 雲の切れ間に見える青い空を指さす私。


『待ってるよ。佳織のこと』


「うん……。徹くんもこんな時に初めて呼び捨てにしなくていいの!」


 涙が浮かんでいる私を笑わせようとしてくれたのと同時に、徹くんの本気を示したものに間違いがないから。


 ちゃんと受け取ったよ。あなたの真心を。


「いってらっしゃい」


『これまで長いこと幽霊に付き合ってもらってありがとな。じゃぁまた必ず会おう』


「うん。絶対の約束ね」


 太陽の光が差し込むのと同時に、徹くんの姿は見えなくなった……。

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