第二章
第35話 第二章
さて、オレがすっかりこの家族の家猫として馴染んだ頃、これでもかと甘やかされ、オレは、〈猫のプロフェッサー〉として
ではあるが、何しろこの猫に憑依することを受け入れるきっかけになった三男坊ボクちゃんは、日々チョロチョロと猫を構い、挙句の果てヌイグルミか枕かと間違えているような扱いをする。そこに変化はない。その上(プロローグで触れた)放屁である。なんでオレの鼻先でするかな~。一回目に爪出し猫パンチをくらわしたので、教育的指導の効果は抜群だったはずだけどな。
ところが、毎回「シャア」されても痛い思いをするかもしれなくても、なぜか、止めない。もっとも、慌てて逃げるのでクサイがオレの鼻を直撃することはほぼない。ケツ辺りにまとったまま逃げて行く。時には走るに合わせて「ぷっぷっぷっ」とリズムを踏んだりして、自分の屁に笑い転げている。楽しそうだ。
いずれにしても、結局臭いのはボクちゃん自身というオチ。イタズラは達成されず、大抵眠りを妨げられたオレがイラっとするだけだ。ん? ケツに手で風を送りつつ逃げて行くボクちゃん、かわいいけど? リズムっ屁も愛嬌があっていいぞ?
うむ、痘痕(あばた)もえくぼじゃの……
ふっ、馴れはしたし可愛いくもあるが、「クサイ!」を表現してやるのが一々面倒臭い……そして、あっちはちょっと、いやだいぶ痛い。枕にするなっちゅーの。載せる瞬間のアレはどうにかならないものか。一度、載せる寸前に飛び退いたら嫌がっていると分かるかもしれないと真剣に考えたが、大抵丸まって熟睡している時だから始末が悪い。覚悟してない状態では構えられないからなあ、はあああ。
それから、あのマウンテンゴリラの仕草は、今のところそう何回もお目にかかっていないけれど、大体自分がポカを仕出かして叱られた時などに、悔し紛れに出る行為のようだと理解した。
まったくもって可愛い小僧じゃないの。
ボクちゃんのあらゆる行動――マウンテンゴリラを始めオレの扱いについても、家族はどちらかというと
最早、目にしていながら認識していないレベルだ。放任ともとれるが、ちょっと違う気がする。結局のところ、このボクちゃんは大層愛されているのだ。両親からも兄二人からも。オレは一人っ子だし独身だし、正直どっちの気持ちも理解できるとは言い難いが何となく分かる。
何しろ構いたくなるタイプであることは間違いない。末っ子の役得かな?
他にも、猫にとってというよりは、オレにとって傍迷惑な行為が多いことは多い。本当のところボクちゃんにとって猫はどういう存在なのか甚だ疑問だ。こらこらな迷惑行為も多いが、返事も出来ないというに、悩み事の相談も長々とする。宿題が面倒臭いから始まって、友達や先生の誰それが気に入らないとかまで……いや、小六の悩みってこんなもん? ボクちゃん、その年で愚痴ですか?
もうちょっと浮いた話がないのだろうか。女児のじょの字も出て来ないのは、どういうことだろう。このくらいの男児は奥手だからか? 特に恋バナが好きってわけじゃないが、ローティーン辺りから騒いでいる奴は騒いでいたし、デートする奴もいたような気がするけれどな。ボクちゃんが極めつけのお子ちゃまだから? ふむ、多分そうだな。
それはまあ、愚痴なんてものは実害がないのでいいとして、これは絶対やめてくれ~と思ったことが、二つある。他にも多々あるが、とりあえずこの二つは、オレにとっては大問題なのだ。いや、
続く
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