第27話 第一章 ◆兄弟以上父親未満?
★兄弟以上父親未満?
猫のお楽しみ、〇ュールを最初にくれたのは、この家の長男だった。つまり、オレが憑依して三日もしない内に、呼びもしないのに長男が帰省した。しょっちゅうきてるのかもしれないが、虫の報せだったのかもしれない。ともかく、家族全員に会えたことだし、ここいらで紹介しておこうかな。
さて、家や家人に慣れてくると、初めの頃には見えなかったモノが見えてくるものだ。それぞれの外に見える性格や家族同士の関係性、猫との位置関係なんかは、割と早い段階でオレの理解するところとなった。中身は中年に差し掛かった大人だから、さすがにその程度は難しくもない……かな?
あのクソ上司を見極められなかったオレだけれどな~
特に、お父さんと家族の関係性は直ぐに見抜いた……というより意図せず見えた。家でも外でも影が薄いのね。痩せているからってわけじゃない模様だ。いい人だけど。誰からも頼りにされていないらしいのが、たった一日で丸わかりだった。
前任者時代の猫は一目おいていたよう……だ。夜の帰宅を玄関でお出迎えするのはお父さんだけだからね。敬愛? それとも単に起きている時間だからなのか? 玄関の床が冷たくて居心地がいいだけだったりして……真実はともかく、いつも感謝しながら撫でてくれるお父さんはマジで優しいじゃない? 深く考えるのは止そう。考えるほどにお父さんが哀れになってくるもの……同じ男としてさ。ふんす
まあ、お父さんのことは、うんもういいや、丸っと受け入れればいいだけだし。よしっ決まりだ。他にも紹介したい人はいるのだからさ。それじゃ、彼の家族はどういう人達なのだろう。数日で見て分かった程度だけど、目にした範囲で簡略判断するとこんな感じだ。
先ずはお母さん、もとい奥様。
言わずもがなでこの家の中心人物だな。間違いなかろう。父親ではないけれど大黒柱という古い表現を使いたくなる。何しろ頼り甲斐は満点だ。オレのことは猫可愛がりするけれど、お父さんや子ども達には中々辛辣だ。だけど、はっきり言うからか後口が爽やかというか、切り替えが早いというか……
要は姉御肌のいい女なのだ。うむ、結構タイプだにゃ。オレ好みの丸顔系の美人さんだし、スレンダーな体形の割に出るところ出ているしな。あ、人間なら全きセクハラ発言だが、猫だもんねー。でへっ、勝った(何にじゃ)
おほんおほん。次! 未だに顔しかよく分からない長男。(まだ一回だけだもん)
現在独立していてたまにしか帰宅しないので、本当は把握する余裕がないのだけれど、拾ってくれた恩義が染みついているのか、猫としては長男様様のようである。別格の扱いと言う気がする。お父さんに優しくする(同情?)のとは違って、ボスを敬うような雰囲気だ。
あー、群れで行動する犬ではないから、敬愛の方が感情的に近い気がするんだよ。
痩せぎすで無駄な肉が少しもないのは、父親譲りだろうか。お仕事は何か分からないけれど、〈社内ランク一位の若手〉とか言われていそうな頭脳派のイケメンだ。奥様似か? うぬっ、お父さん、すまねえ、どうも評価が低くていけない。
ともかく、玄関に入る以前の遠くから足音を聞き分けて、耳を立ててお待ちしているからね。お父さんみたいに玄関までお出迎えはしないけどな。リビングに入って来るなり、オレの意思に反して、足にまとわりついて離れないのだ、これが。オレ自身は別に長男でなくてもいいのに、身体が勝手に動くからなー。
まあ、撫で方はいい。満点だ。次男と同じくらいでっかい手で、マッサージするように、全身優しくモミモミしてくれる。うぉぅ、最高だぜ。生きている時の凝りまで解れた気がするぜ。猫扱いが一番上手いのは長男かもしれない。マッサーッジ後も、オレは長男の膝に顎をのせてたもんな。
だからって、オレというより猫の行動には驚きを隠せない。最早長男神扱いか? 何しろ、長男の靴下にまで媚びを売る。すりすりねごねご……またたびか? お父さんの靴下にマーキングしたのとは随分扱いが違う。オレ、酷くね~。って、知らんがな、勝手に体がさあ……
ごほんごほん。さ、話を進めようかね。
続く
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