第7話 某逆詐欺珈琲店

 ふふふ、賢い僕は考えました。

 異世界組の四人がたくさんの量を食べることで、支払いが膨れ上がるなら。

 最初から提供される量が多い場所に連れて行ってしまえばいいのだと。

 んっん~、名案だなこれは。

 ――という事で、


「外食をしましょう」


 そうと決まれば話は早い。

 いざ行かん、逆詐欺のお店!



「この間の店とは違うな」

「ですわね」


 そう何度もイタリアンファミレスに連れて行かないよ。

 マジで見た事ない金額だったんだから……。


「珈琲と書いてあるが?」

「食事のメニューもしっかりあるんで大丈夫です」


 そんなわけで入店入店。


「確かにしっかりと食事メニューがあるな」

「カツパンやハンバーガー、パスタにビーフシチューまで……」

「珈琲含め、飲み物もかなり充実しているぞ」

「デザートもしっかりあるぞ!!」


 メニュー表をみんなで覗き込みながら、目をキラキラと輝かせてわいわいやってる四人。

 ま、俺のオーダーはもう決まってるのでね。

 ゆっくり選んでもろて。


「ちなみにカケルのおすすめは?」

「カツパン系列はどれもおススメですね。味噌カツパンやカレーカツパンはもちろん、海老カツパンもエビがプリプリと聞きますし」


 なお、早々に俺におススメを聞いてくるもよう。

 当然、逆詐欺として有名なメニューを推しておいた。

 

「なるほど……」

「あ、ちなみに飲み物も一緒に頼むんで、そっちも決めて貰えます?」

「分かった」


 ――で、悩むこと五分。


「決まったぞ」

「じゃあ、店員さん呼びますね」


 ボタンを押して店員さんを召喚。


「たっぷり卵のピザトーストを一つと、ブレンドコーヒーのたっぷりサイズを一つ」


 自分の注文をしたうえで、四人にどうぞを目配せし、


「ビーフシチュー一つとストレートティーを」

「味噌カツパン。あとクリームソーダ」

「インディアンスパゲティとコメブラックを」

「ドミグラスバーガーとブレンドコーヒー」

「こちらのブレンドコーヒーは通常サイズでよろしかったですか?」

「ああ、通常で問題ない」


 注文を終え、店員さんの復唱を聞き、少々お待ちくださいの言葉を残して去る店員さんの後姿を眺めながら。


「そのボタンで呼んだんか?」


 とガブロさんからの質問が。


「です。ボタンを押すと店員さんたちに、どこのテーブルでボタンが押されたか、が通知される仕組みなので」


 厳密には違うだろうけどね。

 大体、店内のどこかに呼び出したテーブル番号が表示される表示器があって、それを確認して来てくれるシステムのはず。

 ただ、それを説明したら、確認の為にと無駄に押しそうなエルフが一人いるのでこうやってぼかさせてもらった。

 デザートのページ見ながらどれにしようかとワクワクしながら考えてるあんたのことだぞ?


「ちなみにカケル」

「なんでしょう?」

「デザートのおすすめは?」

「断然シロノワールですね」


 そしてデザートのおススメでも、逆詐欺筆頭を推す。

 というか、俺、通常サイズのシロノワール食べた事無いんだよな。

 シロノワールミニですら普通に食後に食べると多いと感じるし。

 俺みたいな人の為に、シロノワールミニミニとか出してくれ。

 ……店員の配慮()でシロノワールと変わらない量のソフトクリームとか乗ってそうだけど。


「アツアツのデニッシュに冷たいソフトクリーム……そこにシロップだと!?」

「聞くだけで口の中が甘くなるわい」

「おおよそ最強の組み合わせに聞こえる」

「ご馳走カスタードなんかも美味しそうですわね」

「食べて珈琲ジェリーじゃな」


 もうデザートの話してるし。

 ふっふっふ、だが、実際に運ばれてきた料理を見てもその言葉が言えるかな!

 ……言えそうなんだよなぁ、この人らなら。


「お先にドリンクをお持ちしました」

「おぉ!!」


 という事で先に飲み物が登場。

 ここのコーヒーは美味いんだ。


「マジャリスのはもはやデザートなのではなくて?」

「ちゃんとドリンクのページに載っていたぞ?」


 と、クリームソーダを前にひと悶着。

 まぁ、ソフトクリームが乗ってるから、俺もどちらかというとデザート認識だけども。


「……」


 ? ガブロさんどうしたの?

 なんかクリームソーダをじっと見つめてるけど……。

 まさか飲みたくなった……とか?


「……ガラス……じゃよな?」

「そうだろうな」

「どうやってその形状に加工したのじゃ?」


 あ、クリームソーダじゃなくて、それが入ってる靴型のグラスに注目してたのか。

 ……言われてみると確かに。

 まぁでも、現代の技術なら簡単なんじゃない?

 その辺の知識ゼロだけれども。


「変なのか?」

「いや、だってガラスじゃぞ? すぐ割れる上に厚さだってまばらになる。それを均等な厚さを保ちつつ、このような形状に加工するのは……」

「難しいか」

「ドワーフでも苦戦するじゃろうな」


 へー。

 凄いんだな、ブーツグラスって。


「お待たせしました」


 と、ここで頼んでいた料理が登場。

 さてさて、みんなの反応はっと。


「……」

「……」

「……」

「……」


 あまりの大きさに困惑してるか?

 ふっふっふ。

 さぁて……しこたま卵が挟まれてるピザトースト、どうしようか。

 食べきれるかな、これ。

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