第6話 デザート

 とうとう来てしまった……デザートに。


「コーヒーゼリーとジェラートじゃな」

「私はティラミス」

「プリン!!」

「トリュフアイスをお願いしますわ」


 はいはいっと。

 ちなみに俺はミルクジェラート一択。

 ミルクジェラートをよく練って、オリーブオイルかけて食うのが美味いんだ。

 オリーブオイルの香りとミルクの風味、コクが混ざり合ってさ。

 それをコーヒーで流し込むのがもう……たまらん。


「あ、シナモンフォッカチオは必須なので頼みますね」

「ほう?」

「ジェラートを乗せたり、プリンを乗せたり。ティラミスと食べても美味しいですし、何ならシナモンパウダーとオリーブオイルをジェラートに混ぜるだけで優勝です」

「じゃあ私もジェラートを追加しますわ!!」

「わしのを少しやるからそれで我慢せぃ」


 という訳でそれぞれデザートを注文。

 さて、と。


「コーヒー注いできます」

「私も行こう」

「どうせなら私も」

「俺も」


 ドリンクバーを注ぎに行こうとしたら、みんなついてくるでやんの。

 まぁ、いいんだけどさ。

 ん~と……カプチーノにするか。


「エスプレッソというのは?」

「濃いめのコーヒーで、細かいミルクの泡が表面に浮きます」

「ほぅ」

「砂糖を入れて混ぜずに飲み、底に溜まった砂糖をスプーンで掬って食べるのが本場の楽しみ方らしいですよ?」


 聞きかじりの知識だけど。

 本来は確か角砂糖でやるんじゃなかったかな。

 まぁ、この店に角砂糖は置かれてないんですけどね。


「わしは普通にコーヒーのブラックでいいわい」


 コーヒーゼリーとジェラートを頼んでおいて、更にコーヒーを追加とは……。

 いや、普通に甘い物がそこまで得意じゃないだけだろうな。


「あら? フレーバーティーもありますのね?」

「ですね」


 そういえば試した事無いかも。

 ドリンクバーに置いてあるフレーバーティーって。

 えーっと? ダージリン、アールグレイ、アップルティーは分かるけど……。

 ホワイトワインとラフランスティーって何?

 初耳なんだけど。


「物は試しだ、飲んでみよう」

「私はアップルティーにしときますわ」


 で、その初聞きだったフレーバーはマジャリスさんが試すことに。

 リリウムさんは無難にアップルティーにした様子。

 ……で、ドリンクバーのコーヒーマシンの前でわちゃわちゃしてる間にデザートが運ばれて来てるっていうね。

 これには異世界組も顔を見合わせて苦笑い。


「このサービスの早さはチップが必要なのだろうか?」

「二割……いや、三割程度が妥当だろうな」

「チップ文化はありませんからね?」


 前菜の時からだけど、あまりにも注文してから届くのが早い商品たちに、チップの相談とかし始めたし。

 日本にはチップ文化とか無いから。

 メニューに書いてある金額が全てよ。


「……無い?」

「チップを加味しての値段設定ではないのか!?」

「違いますね」

「ホワイジャパニーズピーポー!?」


 翻訳魔法さん、適当な翻訳しないの。


「とりあえず食べましょう。シナモンフォッカチオがアツアツの内に食べないと」

「それもそうですわね」


 という事で、デザートタイム……開始開始~。


「結構カッチリとしたプリンだな」

「この苦さがいいわい」

「ココアパウダーの香りにチーズのコク……スポンジに染みたシロップ……美味いぞ! このティラミス!!」

「チョコが濃厚ですわぁ!!」


 で、一口目から既に虜、と。

 分かる。普通にデザート美味いんだよね。

 んじゃあ俺も……。

 ジェラートにオリーブオイルを回しかけて、手で温めながら練りまして……。

 滑らかになってきたら、そのまま掬って口の中へ。

 あー……これこれ。

 練ることで滑らかで伸びのある舌触りになって、そこにオリーブの香りとほんのり苦み。

 そしてそれらを打ち消すようにミルクのコクと甘さが押し寄せてくる。

 マジでこのファミレスでこのデザートが一番美味い。


「チョコアイスを一口くれ」

「ティラミスを寄越しなさい」

「ほれ、ジェラートじゃ」

「ジェラートを一口貰うぞ」


 四人もしっかりシェアしてるし、楽しんでいるようで何より。


「コーヒーゼリー単体でも十分じゃったが、ジェラートを混ぜると一気に変わるの」

「具体的には?」

「苦さと甘さのコントラスト、ゼリーの食感とジェラートの冷たさの融合、コーヒーのコクとミルクのコクの調和」

「一口くれ」


 ラベンドラさんがガブロさんのコーヒーゼリーを一口。


「美味い。いや、マジでゼリー単体が美味い」

「でもジェラートも中々じゃろ?」

「カケルの真似をしてオリーブオイルを入れて練ってみたら……これは凄い」

「返しなさい。……ん~、確かに美味しいですわね」

「シナモンフォッカチオとプリンを一緒に食べてみたか?」

「まだだ……!!? もうこれ優勝でいい」

「ジェラートを乗せても最高ですわよ!?」

「このフォッカチオがまず美味い。そこに惜しげもなく乗せられたパウダーも美味い。そして乗せるデザートも美味い」

「美味いものが三つ。来るぞ! カケル!!」


 来ねーよガブロさん。

 絶対翻訳魔法さんの悪ふざけだろ。


「それぞれもう一個ずつデザートを頼んで、シナモンフォッカチオと食べ合わせしませんこと!?」

「大賛成だ」

「うむ。カケル、すまない。もう一度デザートとシナモンフォッカチオを頼む」

「……分かりました」


 と、まぁ……もしかしたらなぁ、と考えていたデザートのお代わりが入りまして。

 それはもう四人とも満面の笑みでしっかり完食。

 デザート後に追加でコーヒーや紅茶を一杯飲み、少し落ち着いてからお会計。

 ――このファミレスで、初めて見る値段になってたのに驚いた。

 ま、まぁ、五人で食べたと考えれば……。

 このファミレスでこの値段なんだろ……?

 ちょっと姉貴からの仕送りが頑張って貰えないと、他のお店に外食って中々言えないレベル……。

 もういっその事、ビュッフェ形式の食べ放題とかに連れて行った方がいい気がする……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る