第43話 フクロウさんの魔法屋



 フランダルがいないならしかたない。とりあえず、ギルド三階にある魔法屋へ行ってみる。


 そこはモリフクロウのモンローの店だ。もちろん、ハーピー族だ。微妙に擬人化された、片眼鏡モノクルかけたフクロウ。魔法書や魔法具がところせましと置かれてる。もしかしたら、ビーストたちの国オルハイリアーニャ随一の品ぞろえかも。


「フクロウさーん。来たよ〜? 新しい魔法置いてる?」

「おお、カレン。あるとも。あるとも。このへんなんか、おまえさんの好みにあうだろう」


 フクロウにとびついてく兄貴を尻目に、あたしは初心者むけコーナーへリゲルとシガルタをつれてく。


「えっと、毒消キュアは絶対いるだろ。中回復ヒールと、全体中回復オールヒール。あとは全異常消クリアオールかな」

「わっ、ちょ、ちょっと、アニスさん」


 目当ての魔法書をポイポイなげ渡す。あたしが持っても何も起こらないけど、リゲルが受けとると本は光った。


「おっ、よかったな! ちゃんと使えんじゃん」


 本が光るのは使える証だ。


「そんだけで銀貨三枚、五枚、大銀貨二枚、三枚か。ちなみにコレは?」


 一冊、ヒョイとなげ渡すが、それは光らなかった。蘇生魔法だ。蘇生っつっても、ほんとに死んだら生き返らないよ。瀕死なら急速に回復する。仮死状態、気絶も治る。


「やっぱ、蘇生魔法はほとんど使える僧侶いないんだなぁ」

「すみません」

「ガッカリすんな。特訓して上級職につけば、使えるようになるかもだからな」

「がんばります!」


 今のとこ、とにかく死なないように早め早めに回復しながら戦うしかないってわけだ。使いすての蘇生アイテムは高価だしなぁ。


「あ、あの、アニスさん!」


 なにげに魔法書を手にとってたシガルタが叫ぶ。


「これとこれ、光るんですけど!」

「えっ? ほんとか? シガルタ、魔法使えるんだ! なんて呪文だ?」

「えーと……必中オールヒットと、遠射ファーヒットです」

「なるほどなぁ。弓使いにだけ使える魔法か。スキルに近いんだな。よし、それも買おう」

「いいんですか?」

「大銀貨四枚と二枚か。あれ? 意外と高いな。まあいいよ。二人とも、ボーナスだ」


 これでパーティーがだいぶ強化される。そう思えば安いもんだ。これを元手にガッチリ稼ぐぞ!


 そこへフワフワと黒髪清楚な美少女アニキがやってきて、おねだり始める。


「アニス。お兄ちゃん、これ欲しい」

「なんて魔法?」

変身魔法メタモルフォーゼ

「変身なんて使い道な……まさか! 脱獄に使う気じゃねぇだろな?」

「しないよ! お兄ちゃんだって、ジャバイン身代わりにして悪いとは思ってる。今日みたいに魔法きかない敵に会ったとき、ビースト変身なんてできれば、お兄ちゃんでも倒せるかなぁって」


 なんだ。ちゃんとパーティーのために考えてたのか。


「わかったよ。いいよ。あっ、待て。いくらだ?」

「ほんとは金貨三枚するけど、一枚にまけてくれるって、モンローさんが」

「……」


 コイツ、絶対、だまされてる。ほんとはもともと金貨一枚なんだ。へたすると、もっと安い。あたしがちょくせつ、ねぎってやろう。


「どれどれ」


 兄貴から本を受けとった瞬間だ。急に稲妻みたいにすごい光が放たれた。アミュレットにさわったときみたいにパチンと衝撃が走る。


「イテテッ!」

「ああっ、アニス! ヒドイよ。お兄ちゃんがおぼえようと思ってたのに!」

「へっ?」

「勝手におぼえたでしょ?」

「ええっ?」

「ほら、見て。なかが真っ白になってる。アニスが呪文、吸収しちゃったからだよー」

「ええーっ!」


 嘘だろ? だって、あたし、魔法使いの素質はまったくないはずだ。魔法書は便利だけど、もともとの素質がない人間にはおぼえられない。なのに、なんで、あたしが魔法を?


 そういや、今日はアミュレットのなかから妖精が出てきたり、なんか変だな。もしかして、あのアミュレットのせいなのか? あれを使ったことによって、あたしのなかの眠れる能力が開花した……とか?


 腕組みして考えこんでると、モンローが羽パタパタさせて飛んできた。


「アニス! 金貨一枚払ってくださいね! 大好きなカレンちゃんの妹だから、大負けに負けて一枚にしてやるけど、それ、すごく貴重だったんですよ? 店主に断りなく、買う前に使用しちゃうなんて言語道断です。非常識にもほどがありますよ!」

「いや、だって、使うつもりなんかなかったんだぜ? 本が勝手に!」

「とにかく、金貨一枚!」


 チクショウ。ねぎるつもりだったのに。まあ、しゃーないか。勝手におぼえちゃったのは事実だもんな。


「ほらよ。金貨一枚。ついでに、コイツらが持ってる本、まとめて買うから、ちょい安くしてくれ!」


 おだやかなフクロウがスゴイ剣幕で怒鳴ってたのに、お金払ったとたん、ニコニコ笑顔になった。クチバシの端がゆるんでる。


「じゃあ、まとめてキリよく、大銀貨十二枚で」

「いや、それ、小銀貨二枚ぶん値上がりしてっから」

「あ、あれ? カレンちゃんなら、これで納得してくれるのに……」

「テメェ……」


 やっぱ、そうだったか。どいつもこいつも、兄貴をチョロい客だと思ってやがる。


 ここは妹のあたしがとりもどしてやるぜ!


「ここはキリよく大銀貨十枚だろ!」

「わかりました。わかりました。大銀貨十枚でいいです!」


 ラッキー! モンローのやつ、絶対ェ、大銀貨十一枚と勘違いしてんな。へへへ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る