第25話 クオームのクレーム



 いろいろあって、えらく時間かかっちゃった。リゲルの弟たちの特訓。けど、これでタイルとタレスの適性もわかったし、よかったね。


「師匠! おれ、さっそくギルドに登録してみたいっす」

「おれも、おれも」


 ははは。アンタレスの毒が治ると、もうどっちがどっちか区別つかないや。そっくりすぎる双子。


「んじゃ、どっちみち、あたしも稼いだ金、ギルドに納めなきゃいけないから、いっしょに行くか」

「よっ、師匠!」

「にくいね。この稼ぎ頭!」


 この少年たち、たいこ持ちの才能もあるのか?


 ギルドへ行くには街外れから少し歩かなきゃいけないんで、いったんイノシシを双子の家に置いていく。


「あら、まあ。立派なイノシシだこと」

「師匠がとどめさしてくれたんだ!」

「でも、おれも一撃入れたよ!」


 少年たち、母ちゃんが大好きなんだな。とびついてく。尻尾ブルンブルンふりまわす子犬のてい。


「ありがとうございます。アニスさま。猪肉ししにく、さばいて塩漬けにしておきますので、明日にでもリゲルに届けさせますね」

「焼いてあると助かるよ」

「わかりましたよ。ほんと助かります。これだけお肉があれば、二日はもつでしょう」


 ふ、二日っ? こんだけデッカいイノシシがたった二日?

 すさまじい食欲だ。十四人家族……。


 ま、それはそれ。ギルドへ急ぐ。早くしないと日が暮れかけてる。用事すましたら、うまい晩飯食うんだ!


 街の中心部にあるギルドまで急ぐと、ちょうど帰ってきたリゲルと出会った。双子が両側からむらがって、おれどっちだクイズやってる。ほのぼの。


「アニスさん。弟たちの適性がわかったんですってね。ありがとうございます。ほんとは兄の私がしなくちゃいけないのに」

「いいってことよ。明日には猪肉も食えるし」

「猪肉?」

「まあまあ。それは帰ってからのお楽しみ」

「そうですか? じゃあ、また明日」


 双子のお世話から解放された。リゲルと受付にならんで、双子は登録を始める。あたしは借金返済だ。

 これであと、金貨九百九十九万九千九百五十一枚だ。さきは考えるな。気が遠くなる。これでも、破格のスピードで返済できてんだから。


 一日に二つもダンジョン行ったから疲れたな、なんて思いつつ、ギルドを出ようとしてたら、あたしの顔を見て、ウェーリンが血相変えてかけてきた。そういえば、今日の受付はマンデリン嬢だった。


「ちょっと、アニス!」

「あ? なんだよ? またか?」

「またって何よ? いいがかりなんてつけたことないし!」

「つけてんじゃねぇかよ、今。用がないなら、あたし行くけど?」


 すると、ウェーリンはクイッとメガネを押しあげて冷たい目をする。


「あんた、ギルドの冒険者の依頼をジャマしたそうじゃない」

「は?」

「クオーム、ユガルド、ゾイムの三人から被害届けが出てるわ」


 はあーっ! すっかり忘れてた。そういや、あいつら、仕事の最中、あたしを襲ってきたんだっけ。いや、もっと正確にいえば、あたしの依頼ぬしの息子をだ。ゆるせん!


「何いってんだ! 可愛いテディベアちゃんを襲って、こっちの仕事のジャマしてきたのはクオームたちのほうだ。悪いのはあっちだろ!」

「クオームたちによれば、炭焼き村の仕事を終えて、出ていったところをあんたに襲われて大ケガしたって」

「大ケガしたのは、アイツらが襲ってきたんで、ベアちゃんが反撃したからだよ。立派な正当防衛だ」

「そんなの誰が証明するの?」


 ああ、コイツ、うぜぇな。はなから、あたしが悪者だと決めつけてやがる。


「あたしの依頼ぬしに聞いてくれればいいよ。騎士が十人もいたし、狙われた子息も証言してくれる」


 ハッ! ここで気づいたね。もしかして、あたし、今日のクマちゃん親子の名字、聞いてなくない? そうだ。ウサギのサユリンちは白耳伯爵なんだよな。ピヨピヨんちはシャモニー侯爵(二回めのとき聞いた)。でも、テディベアは聞いてないぞ。


「依頼ぬしにすぐ連絡つくの?」

「えっ? すぐは、ムリ」


 あたしの評判聞いてやってきたってことは、逆に『ベアちゃん探してます』ってウワサ広めてもらえば、そのうち、むこうから名乗りでてくれるはず。


 ピヨピヨ奥さまあたりに頼めば、たぶん、一夜でウワサはハーピー族、ビースト族のあいだをかけめぐる。でも、次のピヨピヨ特訓は五日後だ。

 ベア親子がすんなり名乗りでてくれても、会えるのは今日から六日後。


 やっとガイドの稼ぎが軌道に乗ってきたとこなのに、ギルド裁判とかになったら、めんどくさいんだけど。


「あ、そうだ。リゲル、あんたも見てたよね? 湖のぬしとあたしらが戦闘してたら、背後から急に奇襲かけてきたの、クオームたちだよね?」


 まだ受付にいたリゲル。ちょっと困った顔をする。


「たぶん。論理的に考えて、あの状況でクオームさんたちが出てくるはずないですから、私たちのあとを尾行してきたんでしょう」


 リゲルの微妙ないいまわしを、ウェーリンは聞きもらさない。


「たぶんって、どういうことですか?」

「私がふりかえったときには、もうクマさんが巨大化してたので、クオームさんらしき人がいたのは見ましたけど。なんで、そこにいたのかまでは……」


 クソッ。リゲルのやつ、なんでこうクソマジメなんだよ!

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