終焉に極楽鳥花を:MS RE
白鳥丘鸝斗
本編
第一話 世界の始まり
アーリアは夢を見た。ドラゴンたちがぐったりとへたり込み、前のように飛べなくなってる夢を。アーリアは不思議な夢だと思いながらも朝までぐっすり眠った。
朝になり、アーリアはいつものようにパンを口に入れ、靴に足を押し込み家を出た。快晴の空、賑やかな街、アーリアはいつもの日常で過ごしていた。
しかしそんな日常に終止符を打つだろう。学校の帰り道、アーリアは何故か一度も入ったことのない近所の古い本屋に惹きつけられた。そして中に入ると埃を被った奥の方の棚に一つ異様な雰囲気に包まれた本を見つける。手に取ると、それは革の表紙で角は金色の装飾が施され、真ん中には魔法陣が描かれていた。アーリアは何故かその本に強く惹きつけられ中を覗く。
すると本から光が発せられ、瞬く間にアーリアを包み込み光が収まったと思った時にはすでに本屋にはあの本だけが落ちていた。
アーリアは目を覚ますと緑の草原と快晴の空に挟まれて寝転んでいた。
「ここは…?」
アーリアは痛くなった腰をさすりながら体を起こした。すると遠くの方から人影がこちらへ向かってくる。アーリアは身構えたがその心配はいらないようだった。
「お目覚め?いやー、私びっくりしちゃった!こんなところに人が倒れてるんだもん!」
その人物はそのまま話をするが、何も分かってないアーリアは彼女の話を一旦遮った。
「ちょ、ちょっと待って、どういうこと?ここどこ?」
「ああ、ごめんね!私はマヤ、ここはグランダリアで魔法も魔物もなんでもいる最高の世界よ!」
アーリアはマヤに事情を話した。
「なんか古い本屋さんに行ったら綺麗な魔導書があったの。そしてそれを開いたら光が…」
アーリアは吃ってしまった。あまり記憶がなく曖昧だった。しかしマヤは親身になって話を聞いてくれ、アーリアをカフェに連れて行ってくれた。
ケーキとコーヒーを注文し、椅子に腰を落とす。そしてマヤは深刻な雰囲気で口を開いた。
「実はね、この世界のドラゴンたちが危機なの。魂をザグレシアって言う悪の組織に奪われて苦しそうで…」
その時アーリアは夢を思い出した。ドラゴンたちが苦しんでいる夢、謎に惹きつけられた魔導書、それが全部繋がっているとアーリアは考えた。そしてその前兆は自分に助ける使命があると思った。
「…私がやる。」
「え…?」
マヤは顔を上げてアーリアを見つめる。光を見た目と不安が混ざったような目をしていた。
「私がドラゴンたちを助ける。」
その言葉にマヤは目を輝かせてアーリアの手を握った。アーリアは戸惑いながらも握り返し、カフェを出た。しかし2人の背後には何者かが狙う目が光っていた。
マヤはとある場所にアーリアを連れて行った。グランダリア国立魔法学校だ。ここは試験などなく誰でも入学できる魔法の小学校のようなものだった。魔力すらない普通の人間のアーリアは初級クラスで学ぶことに。するとマヤが何かを取り出してアーリアに差し出した。
「これ、クリスタルって言うんだけど、これで魔力を強化できるの。だからアーリアちゃんがこれを使ったら少しは魔力増えるかなって。」
マヤはにっこり笑ってアーリアの手のひらにクリスタルを置いた。
「握りしめてみて!」
アーリアはマヤに言われた通りクリスタルを握りしめると、たちまち青い光が握る指の間から漏れ出してそうしてすぐさま消えた。
「ほ、本当にこれでいいの…?」
「多分魔力得たはずだよ。この呪文唱えてみて!」
そう言ってマヤは分厚い魔導書を開き、一つの文を指さした。
「て、転送ライド…?」
アーリアが恐る恐る唱えると一瞬だけ体が浮いたような感覚がしたが、すぐに収まり、目を開けるとなんとアーリアはマヤの後ろにいた。アーリアは驚いて自分の体を見回して、マヤはそれを見てクスッと笑った。
「アーリアちゃん、びっくりした?これが転送魔法よ。」
「転送…!」
アーリアはただの人間である自分が魔法を使えたことがとても嬉しかった。マヤもアーリアが魔力を得ていることに喜び、二人は笑っていた。
「まあ、今日は私の寮においで。泊めてあげる。」
そう言って背を向けて少し振り返ってはちょんちょんと手招きをした。
マヤの寮に入ったアーリアは窓際にある小さなテーブルセットの椅子に座った。マヤはお茶を淹れてくれてアーリアの前の席に座った。
「アーリアちゃん、この世界はどう?まあまだ慣れないと思うけど一緒にドラゴンたちを助けようね!」
ニコッと笑うマヤにアーリアは少し正義感を揺るがされた。
アーリアはマヤが淹れてくれたお茶を一口飲んで窓の外を見た。黒い空に光る星を眺めていた途端、空に赤い雷が走って寮の中に強風が吹き込んだ。手元のお茶が
「きゃあ!!何があったの?!」
マヤは顔を手で覆ってアーリアに叫んだ。アーリアは何か嫌な予感がした。あの夢といい、不思議な転移といい、そして赤い雷。アーリアは無言で寮を飛び出した。
「ちょっとアーリアちゃん?!」
マヤは驚いて急いで杖を持ってアーリアの背中を追いかけた。
アーリアが向かったのは赤い雷が起きていたであろう校庭だった。
「はぁはぁ、アーリアちゃん!まだ魔法使えないのに飛び出しちゃ…?!」
アーリアの上を見たマヤは目を見開いて一歩後ずさった。
そこにはぐったりと倒れた炎のドラゴン、ファレントが倒れていた。
「マヤ…これって…」
アーリアはファレントの近くにしゃがんだ。
「きっとザグレシアに魂を奪われたんだわ…!」
マヤが震える声で言う。アーリアは空を睨みつけて小さく呟いた。
「絶対助けてあげる…」
二人は寮に戻ってマヤは友達のサルベスに電話をかけた。サルベスはこの魔法学校の上級クラスで炎の
「もしもしサルベスちゃん、起きてる?」
「うん大丈夫だよ。どうしたの?」
マヤはサルベスに事情と現状を話した。
「え…?!それやばいじゃん!うちも協力するよ!」
マヤはサルベスにすごい感謝して電話を切った。そうしてアーリアの顔の半分がオレンジの光に照らされる。夜明けだ。いろいろ起きているうちに朝になってしまったのだ。一睡もしていないアーリアとマヤは少し目を閉じそうになりながらも寮の部屋を出て食堂に向かった。
学校の食堂はすでに混雑しており、アーリアは思わず目が覚めた。
「さっき夜明けだったよね、もう混んでるの?」
「うん、実は人気なメニューがあっていつもすぐ混むんだよね。」
マヤは苦笑いで言った。そしてマヤはその人気なメニューが売っているところまでアーリアを案内した。
「あらいらっしゃい。お前さんは見たことないねぇ、新入りかい?」
挨拶をして迎えてくれたのは青い髪に狐の耳、狐の尻尾を持ったお姉さんだった。この魔法学校の食堂ではラゼさんと言うこの狐のお姉さんが作るレギチャオムライスが人気だ。レギチャとはウサギの姿をした魔物である。肉が柔らかく、食用にも人気だ。
魔物のオムライスと聞いて一瞬眉を顰めるアーリアだったが好奇心が勝ち、マヤと一緒に食べることにした。
出来上がったオムライスを受け取ると上にレギチャの耳が刺さった結構とんでもない見た目をした料理をアーリアは少し躊躇しながらテーブルに置いた。
そんなアーリアを他所目にマヤは「わぁ美味しそう〜!」とはしゃいでいた。戸惑いながらアーリアは一口、口に入れる。すると肉を噛んだ瞬間香ばしい匂いと魔物とは思えない味が広がる。アーリアは目を輝かせてオムライスを二口、三口と眉を顰めていた料理とは思えないほど食べていた。
「そ、そんな気に入った?」
マヤは少し戸惑いながらアーリアとオムライスを完食した。
マヤは中級クラスなので廊下で分かれてアーリアは自分の初級クラスに入った。そしてついに授業が始まった。しかしアーリアが入る初級のクラスはみんな小さい子ばかりでアーリアは少し恥ずかしくて端の方の席で小さくなっていた。
するとドアから先生らしきエルフさんが入ってきた。
「皆さんおはようございます。私はアリーシェル、このクラスの担当です。よろしく。」
表情を変えず淡々と話すアリーシェル先生のことがちょっとアーリアは怖かった。
アーリアはマヤからもらった貴重な魔力を無駄に使わないようにと手を重ねた。
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