第ニ話 魔法とアーリア
チャイムが校舎内に響き渡り、アーリアは席に着く。アリーシェル先生は大きく分厚い魔導書を教卓にドンと置き、パラパラめくり始めた。
「はいみなさん、魔導書の百八ページを開いてください。今日は浮遊魔法を勉強します。」
浮遊魔法はその名の通り、物を浮かしたり自分自身を浮かしたりできる基礎魔法だ。
しかしアーリアは魔導書をもらっていないので端っこでおどおどしていたが、アリーシェル先生はそんなアーリアに気づきゆっくりと歩み寄った。
「アーリアさんどうされました?あぁ、魔導書ですか。どうぞ。」
そう言って手渡されたのはあの時、本屋で見つけたような革製で金の装飾がされた魔導書だった。そしてアリーシェル先生は淡々と背を向けて教卓に戻った。
アーリアは百八ページを開いて黒板の方を向いた。黒板にはアリーシェル先生が何か呪文や魔法陣を書いている。
「皆さん、物を浮かせたいときはこの魔法を使いましょう。」
そう言ってアリーシェル先生が指差す黒板には「リフト・エアリア」と書かれていた。
その時、周りの生徒たちがその呪文を唱えると、指定した物が次々と浮き出した。
アーリアは遅れないように急いで唱えた。
「リ、リフト・エアリア…!」
しかしどうもうまくいかない。
アーリアは魔力が足りないのかと、マヤから貰ったクリスタルを握りしめるがやはりダメだった。
アーリアは助けを求めようとアリーシェル先生に目配せをした。目の奥でアリーシェル先生の鋭い目が光る。そしてこちらに気付いたようで、ゆっくり歩み寄ってきた。
「アーリアさん、動かしたい物に思いを込めてみて。魔法は信じる力よ。」
そんなアリーシェル先生の言葉にアーリアはこくんと頷いた。
そして目の前にあるりんごに目を瞑り、思いを寄せる。そして口を開いた。
「リ、リフト・エアリア!!」
そう叫んでそっと目を開けると、そこにはぷかぷかと浮くりんごがあった。
アーリアは内心でガッツポーズをし、アリーシェル先生はいつもと変わらず表情が薄いがどこか微笑んでいるようだった。そして他の生徒たちもアーリアの成功を祝福する。
「あ、ありがとうございます…!」
アーリアは軽く頭を下げると、アリーシェル先生はいつもと違う、暖かい笑みを浮かべて背を向けた。
アーリアはだんだん楽しくなっていろんな物に挑戦した。鉛筆にコップに魔導書自体も。机にも挑戦したがそれは流石にまだ無理だったようだ。
そしてアリーシェル先生は教卓の前に立ち、また口を開く。
「では、魔導書百二十一ページを開いてください。次は光魔法です。」
光魔法は杖などの自分の武器から光を出し、灯として使えるほか、魔力が強ければ強いほど光量も強くなり、目眩しなどにも使うことができる。
「呪文は『ルミナス・フレスト』。では皆さんどうぞ。」
アリーシェル先生がそう言うと、生徒たちは杖を光らせ出した。アーリアは浮遊魔法の時と同じように思いっきり魔力を込める。
「ルミナス・フレスト!」
しかし杖はぼんやりと今にも切れそうな光を放っていた。アーリアは首を傾げ、何度も挑戦するが、光は強くなるどころか消え入りそうなほど弱まっていった。
するとアリーシェル先生はまたアーリアに助言を渡す。
「アーリアさん、もう少し大きく杖を振ってみて。」
アーリアは先生の助言通り杖を大きく振り、呪文を唱える。
「ルミナス・フレスト!」
するとぼんやりだった光がパッと明るくなったどころか、周りの生徒たちよりも強い光を発していた。
「アーリアさん凄いじゃないですか。」
アリーシェル先生の褒め言葉にアーリアは少し頰が熱くなったような気がした。その時、教室にチャイムの音が響く。
「おっと皆さん、今日はここまでです。また明日も頑張りましょう。」
そう言い放ってアリーシェル先生は教室を出ていってしまった。
アーリアはペンを片付けて魔導書と杖を抱えてマヤの部屋へ戻った。部屋へ戻るとマヤはもう戻ってきており、アーリアを迎えた。
「アーリアちゃん、授業どうだった?強くなれるように頑張ろうね!」
「うん、いっぱい魔法使えたし楽しかったよ。」
アーリアはマヤと窓際のテーブルセットに座り、今日の授業を思い出しながら星空を見つめていた。
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