第五十二話

 と私とナキアさんがミルクの話で盛り上がっていると、微笑ほほえみながらウコジさんは話し出した。

「ああ、リーネさん。あなたは、この魔族の国のことを知りたいんでしたね。それでは、お話しましょう。この魔族の国では、職業は大体だいたい四つに分かれます。店で商売をする、工場でモノを作る、りょうをして魚をる。そして私たちのように、畑で作物さくもつを作ったり乳牛にゅうぎゅうからミルクをしぼるんです」

「なるほど、なるほど。それでは人間の国と、大体同じですね」


 するとウコジさんは、おどろいた表情になった。

「え? 人間の国もそうなんですか? これは驚いた……」


 そして、聞いてきた。

「それじゃあやっぱり人間の王も、国を毎日見回みまわったりするんですか?」

「え? いや、人間の王はそんなことはしません。っていうかそれじゃあ、ラソミ女王じょおうは毎日この国を見回っているんですか?」

「はい、そうですよ。毎日、商店、工場、漁をする魔族、そして私たちのように農業をしている魔族も見回っているんです。仕事は上手うまく行っているか、何かこまったことは無いかと」


 うーむ、なるほど。これはラソミ女王は相当そうとう、魔族に人気があるだろう。そして、ふと浮かんだ疑問ぎもんをウコジさんに聞いてみた。

「あの、ちょっと聞きたいんですけど。ラソミ女王は、どうやって女王になったんですか?」


 するとウコジさんは、微笑みながら答えた。

「それは前の王、サムオさんが指名しめいしたんです。サムオさんも我々魔族のことを一番に考える、良い王でした。なのでそんなサムオさんが指名するなら間違いないだろうと皆、賛成さんせいしたんです」


 うーむ、サムオさんか。これはぜひ、サムオさんから話を聞きたい。おそらくラソミ女王のことを、一番知っているだろうから。なので私は、聞いてみた。

「なるほど、サムオさんですか。それならぜひ、サムオさんからもお話をうかがいたいです。どちらに住んでいるのか、ごぞんじですか?」


 するとウコジさんは、腕をんでうなった。

「えーと。サムオさんは確か、この国の一番西に一人で住んでいたはずです。そうだったよな、ナキア?」

「ええ。確か、そうだったわ」


 なるほど、なるほど。これは、今すぐにでも行かねば。なので私は、お礼を言った。

「ありがとうございます。それでは私は、そのサムオさんにもお話を伺いたいと思います。あ、ミルクもごちそうさまでした」


 そうしてウコジさんの家を出た私は、早速さっそくほうきに乗って西を目指めざした。えーと、一番西と言うと……。と私は、注意深く眼下がんかを探した。そして森が見えてきたところで、一軒の家のような建物を見つけた。うん。多分たぶん、あそこだろう。


 私はその家の前にほうきで下りると、家を観察かんさつした。それは木製で、だいぶ古びた家だった。ホントにこんな家に、前の王が住んでいるのかなと疑問に思ったが私はダメもとでドアをノックした。

「すみませーん! 私は人間のリーネと申します! サムオさんはいらっしゃいますか?ー!」


 すると少しして、中から返事へんじがした。

「どうぞ。お入りになってください」


 なので私は、ドアをゆっくりと開けた。

「お邪魔じゃましまーす……」


 家の中はせまく、真ん中にテーブルが置かれていた。右側にはキッチン、そして奥にはベットが置いてあった。そしてテーブルの向こう側には、年老としおいた魔族がイスに座っていた。私はもう一度、聞いてみた。

「初めまして、私は人間のリーネともうします。あなたがこの魔族の国の前の王、サムオさんでしょうか?」


 するとその年老いた魔族は、ニッコリと微笑んだ。

「いかにも、私がサムオです。おそらく今この国で一番有名な、リーネさん」


 うーむ。やはりこの方が、サムオさんのようだ。なので私は、聞いてみた。

「ちょっとお話を伺いたいんですが、よろしいでしょうか?」

「はいはい。何について、知りたいのかな?」

「はい。ラソミ女王についてです」


 それを聞いた途端とたん、サムオさんの目がするどくなった。私が一瞬いっしゅん、サムオさんから殺気を感じるほど。だが次の瞬間、サムオさんは再びニッコリと微笑んだ。

「そうですか、そうですか。まあ立ち話もなんなので、どうぞお座りください」


 なので私は、サムオさんと向かい合ってイスに座った。するとサムオさんはキッチンから二つの湯飲ゆのみを持ってきて、急須きゅうすからお茶をそそいだ。そして私とサムオさんの前に一つづつ、置いた。

「さ、安物やすもののお茶ですがどうぞ」

「はい、いただきます」


 と私は一口ひとくち飲んでみたが、なかなか味わい深いお茶だった。そしてサムオさんは、聞いてきた。

「さて。ラソミ女王について聞きたいそうじゃが、具体的ぐたいてきには何を聞きたいんじゃ?」

「はい。私はラソミ女王は、あなたが指名したと聞きました。なのでなぜ、あなたがラソミ女王を指名したのかその理由が知りたいんです」

「ふーむ。なるほど、なるほど……」


 するとやはりサムオさんはニッコリと微笑みながら、話し出した。

「あれは、三ヵ月前のことじゃ。年を取りすぎたわしは、次の王を探していた。するとこの魔族の国の学校に、すさまじい魔力を持った学生がいると聞いたんじゃ。だから儂は取りあえず、その学生に会いに行ったんじゃ……」

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