第五十一話

 そうして朝食を食べ終わると、私はイスから立ち上がりラソミ女王に頭を下げた。

美味おいしい朝食を、ありがとうございました」

「うむ。魚が釣れたら、わらわに報告にきてくれないか?」

「はい! もちろんです!」


 と私は部屋を出て、私がまっている客室に向かった。中に入るとすぐに、私は竿さおとバケツとほうきを背負せおった。確かにこの魔族の国にきた目的は、ほんマグロという魚を釣りにきたことだ。


 だが、もう一つの目的がある。そしてその目的の方が、大事だいじだ。それはラソミ女王じょおうが、私たち人間の国を攻撃しようと考えているかどうかだ。今のところ私の印象いんしょうでは、それは無いと思う。でも、できればもっと調べたい。ラソミ女王のことを。そのためには、どうしたらいいか……。


 うーん、と私は考えた。そして、ひらめいた。そうだ、この魔族の国の魔族に聞いてみよう。例えばラソミ女王が、人間をきらっているかどうか。うん、それだ! そうしよう!


 でも、だれに聞けばいいんだろう? うーん……。するとまた、ひらめいた。そうだ、この魔族の国で初めて会った魔族にしよう! あの魔族たちのおかげで結局、私はラソミ女王と会うことができたからだ。よし、決めた!


 私はお城の外に出ると、ほうきにまたがって風の魔法をとなえた。

「風の精霊せいれいよ、おどり出せ! ウインド!」


 そして一〇メートルほどの高さまで、上昇じょうしょうした。えーと、あの魔族と出会ったのは確か東のはずれだったよね。よし、まずは東に飛んでみよう。と私は下を見ながら、東に飛んだ。


 えーと、確かこの辺りだったような……。すると眼下がんかに、一軒いっけん民家みんからしき建物を見つけた。そしてその隣には、畑らしきモノも見えた。うん、きっとあの家だ。なぜなら初めに出会った魔族は、クワのようなモノを持っていたからだ。だからあの魔族はきっと、畑で作物さくもつを作っているのだろう。


 だから私は、その家の前にほうきで下りた。その家は木造で、比較的ひかくてき新しかった。そしてドアを、ノックした。

「すみませーん! 私は人間のリーネともうします! できればちょっと、お話をうかがいたいんですが?ー!」


 すると少しして、ドアがゆっくりと開いた。ドアを開けたのは、魔族の女性だった。私はこの女性に、見覚みおぼえがある。この魔族の国に入って、いきなり私を風の魔法で大木たいぼく拘束こうそくした女性だ。


 一瞬いっしゅん、どうしようかと考えたが私は結局、話を聞きたいと思って挨拶あいさつをした。

「あの、私はリーネと申しますが、ちょっとお話を伺いたいんですが……」


 するとその女性は、何と私に頭を下げた。

「申し訳ありません、リーネさん。昨日は突然、おそってしまって……」


 なので私は、考えていることを話した。

「いえいえ。今考えるとあれは、あの子供たちをまもるために行動だったと思います。そしてそれは、当然だと思います。大事な子供たちの近くに人間がいたら、魔族なら当然そうすると思います」


 私がそう話すと、魔族の女性は少し微笑ほほえんだ。

「ありがとうございます、私の気持ちを分かっていただいて。あなたは、この国の客人きゃくじんになりました。昨日きのう、女王がそう魔法で国中に知らせました。なので、私たちもあなたを歓迎かんげいします。さあ、どうぞ中に入ってください」

「ありがとうございます、お邪魔じゃまします」


 中に入ると中央に、木製のテーブルが置かれていた。そして左側にかまどが、正面の奥にはドアが見えた。きっとあのドアの向こうは、寝室しんしつだろう。そしてテーブルの向こう側には、やはり昨日会った魔族の男性がいた。彼は私を見ると、頭を下げた。

「昨日は申し訳ありませんでした、リーネさん。まさかこの魔族の国にとっての、客人とは知らずに……」


 なので私は、右手を顔の前でブンブンと振った。

「いえいえ。昨日の時点じてんでは私は、ただの不審人物ふしんじんぶつでしたからお気になさらずに」


 すると魔族の男性は、ホッとした表情になり自己紹介を始めた。

「私はウコジ。そしてこっちは、妻のナキア。子供は男の子がトサシ、女の子がルヒカです」


 ウコジさんの自己紹介が終わると、早速さっそくトサシ君とルヒカちゃんが私のあしにまとわりついてきた。

「あー、昨日のお姉ちゃんだー!」

「お姉ちゃんは、人間なんだよねー」


 なので私は、挨拶をした。

「そうだよ。私は人間だよ。二人とも、よろしくねー」


 それを見ていたウコジさんは、取りあえず私にイスに座るようにすすめた。そして、聞いてきた。

「それでリーネさん。今日は、どのような用件ようけんですか?」


 私はラソミ女王のことを調べにきたことがばれないように、慎重しんちょうに言葉を選んだ。

「え、ええ。実は、この魔族の国のことを知りたくなったんです。魔族のみなさんが、どんな生活をしているのか」

「なるほど」


 するとナキアさんが、私とウコジさんの前にコップを置いた。一口ひとくち飲んでみると、それは濃厚のうこうな味がするミルクだった。

「お、美味しいです! 人間の国のミルクよりも濃厚で、とっても美味しいです!」


 と私が感想を言うと、ナキアさんは微笑んだ。

「ありがとうございます。実はこのミルクは、私たちが育てている乳牛にゅうぎゅうからしぼったモノなんです」

「え? ホントですか?! 実は私も人間の国で乳牛を飼っていて、毎日ミルクを搾っているんです!」

「まあ、そうでしたか」

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