第21話
「んう……? あれ、タイヨウ?」
馬車が屋敷に着くと、やっとフウロは目を覚ました。
既にウッドは降りて自宅へと帰っていた。馬車に居たのは、僕と側近の騎士だけだ。
「あれ? 私森に行って」
「待っててくれてありがとう。無事採れたよ」
タイヨウはリュックからサマリーを取り出し見せた。
「ほんと!? けがはない? もう森行かない?」
彼女は寝ぼけまなこからぱっと目覚め、タイヨウの体を触り安否を確かめる。
「大丈夫、怪我ひとつしてないよ」
ほんとうは 危なかったが、わざわざ言わなくていいだろう。
「そうだ、これ」
袋に入ったお守りを返す。
「え、いいのに」
「ううん。これ大事なものでしょ? それに――」
このお守りの効果は本当だ。それなら今後も彼女を守ってくれるだろう。
その日もタイヨウはフウロの家に泊まった。
先日同様、窓の外からふと庭を覗いた。
「えっ?」
庭になにかいる。毛むくじゃらの生き物が、目を光らせてこちらを見ていた。
こちらが見ているのに気が付いたのか、四足歩行で駆け足に逃げてしまった。
「ツ、ツキ!」
「ん? どうしたの。そんな慌てて」
タイヨウは慌てて背中のツキに声をかけたが、ツキはリュックの中だった。
「今、そこに何かいた!」
「野生の動物かしらね。こんな町の中心にいるのは変だけど。明日一応伝えといたら?」
「うん。そうするよ」
その日は結局何か分からなかった。このまま寝たら夢に出そうだ。なんて思いながらタイヨウは眠りについた。
案の定、タイヨウは夢を見た。
窓から何かが覗いている夢だ。赤い目。月光が逆光で毛むくじゃらの体は真っ黒で、赤い目だけがくっきりと浮かんでいた。
翌朝。タイヨウは起きてすぐ窓を確認した。
幸い窓の鍵は締まっていた。そもそも、もし本当に何かが来ていたとしたら、ツキにバレているだろうし、余計な心配だった。
フウロは既に食卓へ座っており、そこには当然のようにタイヨウの食事も用意されていた。
「ねぇ! 今日は暇よね?」
座るや否やフウロがそれは楽しそうに聞いて来た。
「うん。だからもう――」
「それなら、この町の案内してあげる! 今日は市場が開いているのよ!」
遮られてしまった。たまたまかな? まぁ数日遅くなったところで問題はないだろう。
「うん。それじゃあ案内お願いしようかな」
タイヨウが了承すると、フウロは立ち上がって嬉しそうにその場で跳ねた。
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