風紋

 換気扇の下で咥えたタバコに火をつける。

 家で一服するための手間もすっかり馴染んで、吐けば吸い込まれる煙を慈しむ気持ちも芽生えていた。

 昨日廃工場を探索して見つけたモノ。

 寝起きでうとうとしていたエリスのボワッを頼りに登った階段の先にあった管制室には彼女がこっちの世界に来た時着ていた服が畳まれ袋に入っていた。

 乱暴でもされて脱がされたのならこんな綺麗な状態はおかしい。

 リーズナブルな価格と豊富な種類で有名なブランドの袋を見る限り胴体自らが隠していたんだろうってのは伺えた。

 入ってたレシートの日付はハロウィンの翌日。つまり私がエリスと出会った日。

 購入したのはパーカーとズボン。察するにしばらく過ごすための衣服だろう。

 買ったのは一緒にいたって話のジャック・オー・ランタンかな?

 カボチャとはいえ顔のある存在の方が胴体より買い物はしやすいもんね。目立つは目立つけど。

 一体なんのために、は、そりゃ生首のエリスを探すためか。


 にしては私達の前に現れないのも変だなと手を灰皿へ。

 結構目立つ動きこっちもしてる自覚はあるんだけどな。


 灰を落とす、落とす、落ちる、落ちた。


「……もしかして」


 胴体も探しモノしてる?


 見つけないと会えないって思ってるぐらい大切にしてる何かとか。

 例えば、エリスの青い瞳と同じ色した石のはめ込まれた指輪とか。


「変な紋様もあったよねあそこ」


 スマホを操作し現地で撮った写真を見る。

 管制室に入ってすぐのとこに描かれた魔方陣らしきモノ。

 最初埃が風に舞って出来た風紋かと思ったけど、にしては精巧すぎる。


「どこで見たっけなぁコレ」


 あともうちょっとで思い出せそうと眉間にシワを寄せ。

 頭の回りを良くするため二本目のタバコを取り出した。



 十一月十九日。丑三つ時。

 掴めそうで掴めないもどかしさに考えを巡らせた。

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