まなざし
すれ違うたび視線を感じる。
まなざしの先にあるのはいつものチャイニーズマフィア風ファッションに身を包んだ私。
「みんな見てるのだわ。ちょっと恥ずかしいのだわ」
中から外が見えるよう工夫されたカバンに納まるエリスの生首。
昨日の早朝。買ったばかりのタバコを喫煙所で吸いながら調べモノをしていた時に見つけたこのカバンはぬいぐるみとお出掛けする用に作られたモノらしく、小さいサイズから大きいサイズまで幅広く取り扱っていた。
「見られるのが目的みたいなイベントに別の世界からわざわざ参加するのにこうやって注目されるのは恥ずかしいんだ」
「それはそれこれはこれなのだわ」
探しモノについての特徴は聞いてるからエリスは留守番でもよかったけど、彼女には自分の体をビビッ! っと感知する能力がある。
エコバッグは狭いだのゴワゴワするだの外が見えないだのでかなり不評。
どう違和感なく依頼人のご機嫌を損なわず持ち運ぶか考える必要があった。
「でも悪意や敵意は感じないのだわ」
「髪色ハロウィンカボチャの女がマネキンの首カバンに入れてぬい活? してるように見えてるんじゃない?」
違和感プラス違和感は逆に自然。
あえて隠さず堂々としていた方がファッションとして受け入れてもらいやすいんじゃないか。
「ぬい活?」
そういう結論に至り購入。すぐに届いたのもあってエリスの意見を聞きながら居心地のいい空間を作り早速今日の捜査で活用している。
「お気に入りのぬいぐるみやフィギュアと出掛けたり写真撮ったりする活動らしいよ」
とはいえあからさまにしゃべっていたらさすがにバレるので話す時はひそひそ声で。周りに悟られないよう注意は払っている。
「不思議な文化なのだわ」
「人間にも色々種族があって、それを良くも悪くも見て見ぬフリして成り立ってるのがこっちの世界だからね」
多様性ってやつなんだろう。わかんないけど。
十一月四日。昼。
エリスをぬい活用のカバンに入れて街中を歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます