第27話 命乞い的な何かですね


「……………………!!!!!!(声にならない叫び)」


 首! 首だけ! 壁から出てる!


 優斗さんは、フリーズしてる僕を見て不思議そうに…は、してない。

 無表情。


「ゆう…と…さん…。………………今までの事は誰にも言わないでください!!!」


 半泣きで言う陸を前に優斗は、

(うるさ)

と、思っていた。


「言わないでください!」


 優斗は、全力で頼む陸を前に、

(これ…いつまで続くんだろう…。)

と、思っているので、あの後も陸の命乞い? に適当にはいはいうなずく言っといた。




「優斗さんはどこに行ってたんですか?」


 そんな陸の問いに対して優斗は、

(…別にたいした用じゃないんだけどな…。)

と。


 まあ実際、トイレにいっていただけだったので、わざわざ言うようなことでもないのだ。


「………………。(伝えた方がいいのかな…?)」


「…(無言…)………ッハ。」


 陸は気づいた。


(優斗さんはしゃべれないんだった…。)


「すみません優斗さん。トラウマのせいでしゃべれなくなってしまったのに…」


(トラウマ…? あ、千代がそういうふうに誤魔化したんだっけ…。…トラウマ…?」


 優斗はその時思い出した。

 自分たちを守るべく散った、兄弟たちの死にざまを…。


「………………ッ!!!」


 何度思い出しただろう…。きっとこの気持ちは何年たっても消えてくなることなどない、憎悪の灯火。

 いつか消える嫌悪の灯火を、消えることのない憎悪に替えてしまったんだ。


 相応の裁きを受けるべきだろう。


 優斗は内心笑っているが、表情に出ることはない。

 はたから見ると、無表情のまま止まっているようにしか見えないので、現在、


    陸は本当に困っていた。


 どうしよう…優斗さんがかたまってしまった…!


 何か気に障ることを言ってしまったのだろうか…。


「どうしようクマくん。」


 陸はクマの方を向いてしゃべった。

 だが、そんな事クマに言ってもしょうがない。

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