第一章 第十四話「フェドリク」

「お前が、カレン・カミヤだな?」

「はい、私がカレン・カミヤです。初めまして」

 立ち上がって私の「付け焼き刃淑女礼」をする。一応お祖母様からokを貰ったから大丈夫、な、はず……顔を上げて相手の顔を観察する。かなり美形な令息だった。どちらかというと長めの金髪を横分けにして撫で付けている。瞳はアイスブルーとアイスグリーンの中間のような不思議な色。相手をはっとさせるようなどこか儚い不思議な光が宿っている。肌は真っ白で唇は薄く、赤い。ひょろっとした体型で、身長は低め。声色は声変わり途中の少し掠れたもの。シャツに紺色のベスト、紺色のズボンには黒いベルト。顔立ちとアンジュロンド王国語の訛り、服装からフィンデン王国のそこそこの家柄の令息なのでは、ということが窺える。

「俺の名はフェドリク・ヴァン・デル・ヘルスト。13歳。魔力を今測ってきたが中級ランクレベル2だった。お前はいくつだ」

 ヘルスト家。やはりフィンデン王国の侯爵令息だった。毎朝測りたい人はいつでも魔力を測れるため、受付に行ってきたのだろう。

「中級ランクレベル3です、ヘルスト侯爵令息」

 すると令息はあと少しだったのに、という顔をした。そして、大きく息を吸い込んで、言った。

「年下の男爵令嬢に、1レベル差でVIP室を奪われるとは、俺も落魄れたものだ。俺は、今からお前にライバル宣言をする!カレンと呼ぶから俺のこともフェドリクと呼べ。お前のレベルを超えたらすぐにVIP室使用申請を出して奪ってやる!せいせい頑張るんだな!」

 あの部屋を奪われるのは悲しい。

「わかったわ。フェドリク、これからよろしく!」

 すると、その答えが予想外だったのか、彼は咳払いをして、「失礼する」と言い、去っていった。

「あ、嵐のような方でしたわね」

 空気と徹していたセイラが声をかけてくる。

「だね!でも、また新たな目標ができたよ!」

「…お姉さまならできると信じております」

 セイラに呆れたような表情とキラキラとした表情を混ぜた微妙な表情をされてしまった。

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