第一章 第十一話「杖」

「つ、次を開けましょう!」

「う、うん」

 セイラが気まずい雰囲気を取り払うように言った。四番目は杖だった!今はただの細い木の棒だけれども、説明書の簡単な魔法陣を書いて棒に彫られた呪文をなぞると自分の杖に変身するらしい。私の初めての杖だわ!

「お姉様、見てください!私のはこういう杖になりました!」

「すごく洗練された杖ね!」

 白い樺の木でできたまっすぐな細い杖。柄の持ち手には金文字でSarah Emeralda Kamiyaと彫られている。白い木には所々様々な種類の緑色の小さな宝石が埋め込まれている。宝飾品のような美しい杖。

「お姉さまはどのような杖なのですか?」

「今完成するよ!」

 魔法陣を紙に描き、杖を置いて呪文をなぞる。魔法陣が桜色に淡く発光し、棒が強く白く光る。そして、それは水晶の軸と金の装飾でできた美しい杖に変わった。先端は片翼をイメージしたデザインでダイアモンドが翼の形に配置されている。翼の下には美しい虹色に輝く魔石。持ち手には大きなアクアマリンがはまっていて、よく見ると金の装飾にはKaren LuciaRose Kamiyaという彫刻がある。 こちらもよーく見ると金の装飾に小さい光の粒が付いている。

「なんて…美しい」

 セイラが呟く。私は杖を手に取った。ひんやりとして程よい重さが手に伝わる。杖が動くたびに照明の光を反射して輝く。

「これが一生使う杖、なのね」

 そうして私達は杖との出会いを果たした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る