第一章 第五話「カレンの図書室」
「空間の、魔法陣…?」
美しい建物の絵が浮かぶ、上級の闇属性持ちしか作れない魔法陣。闇属性とは、光属性と同じ位希少な、物理的な干渉を得意とする属性である。他の属性と合わせて持つ属性で、レベルを上げるのが非常に難しいとされている。世界に数人しかいないような魔法使いが作ったのだろうか?
カレンは魔法陣にそっと触れてみる。術式を確認してみたかった、自分は使えないとしても。すると、金文字が浮かび上がった。
「えっと、魔力を、流せよ?」
カレンは文字に向かって両手を向けた。
「ホーリー・レイディアンス!」
ー聖なる光輝。
光属性特有の淡い光、カレンの場合は淡いパパラチアサファイアの色だ、が魔法陣に注がれていく。そして魔法陣は、カレン色に染まって行った。てっぺんまで魔法陣が染まり上がると、二階の部屋に入るための扉が開いた。金文字が浮かび上がる。
『ようこそ、新しいこの部屋の主人、カレン・カミヤ殿ー』
そこに待っていたのは、本棚、本棚、本棚!下階の十倍ほどの様々な分野の学問書や魔導書が所狭しと並んでいる。そして下階程の重厚感はないがそれよりも大きい作業机。そしてシンプルな座る部分に薄いクッションが付いているだけの椅子が三脚。天井は星空の柄。カレンを跳ね上がらせたのは、作業机の引き出しにこれでもかと入っている文房具たち。マーカーペンにポールペン、万年筆にシャープペン。もちろん鋏や定規、のりなどもある。シーリングセットまで用意してあり、そのシーリングはなぜかカレンのイニシャル、家紋、カミヤ商会の紋章、カレン自身の紋章が用意されていた。空間魔法の付属効果なのだろうか。まさに、カレンのために作られたような最高の勉強場所である。
図書室の紺色の重厚感ある扉を開けると、廊下兼下階を見下ろせるテラスがあった。廊下を少し歩き、壁の窪みに入るとまた別の扉がある。そこを開けると、またまたロココ調の鏡台に大きなクローゼット、そしてカレンの荷物も運び込まれていた。衣装部屋と言ったところだろうか。その部屋にはさらに二つの扉が付いていた。右側の扉を開けると、また二つの扉に別れている。片方は御手洗、もう片方は風呂場だった。トイレやバスタブでさえも例のブロンズの装飾がついていて、鏡も豪華だ。貴族の屋敷として作られたということが思い出させられる。衣装部屋に戻ると、もう一つの扉を開ける。扉を開けるとそこにはー
テラス付きの美しい窓と、天蓋付きベッド、サイドテーブル、姿見があった。天蓋付きベッドも例に漏れずミントグリーンだったのだが、カレンはそれを綺麗だと思いながらも眠れなさそうなので、光属性の装飾魔法で星空模様に変えてしまった。床は絨毯、壁は落ち着いた水色のシルクの壁紙へと変える。ベッドに一回ゴロンとボスンと座ってから、立ち上がる。
扉を開け、一階に降りるとさっきは気が付かなかった扉があった。
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