第一章 第二話「聖コンスタンス寮」
聖女ミレンの子供たちは皆良家に嫁ぎ、その子供達も皆光属性だった。多い時には五百人もの光魔法の使い手が国内にいたそうだ。しかし、ミレンから数えて五代目のあたりには光属性の子供は生まれなくなっていき、結局王家とカミヤ家の本筋だけが残ったのである。もはや「光魔法の使い手」として名を馳せ無くなっていたカミヤ家はまたいきなり権力を取り戻し、有力な一族として名を知られることとなる。
そして約三十五年前、カレンの父、レイが誕生する。彼は三男で、父の立ち上げたカミヤ商会を受け継いだ。そして、世界にまたとないアイディアで生活を助ける魔道具を開発し、瞬く間に男爵位を与えられた。彼は没落寸前の伯爵令嬢、ジュンナと恋に落ち結婚し、カレン、セイラ、カオルという三人の子供を儲けた。
そして今年、栄えるブロンシェ王国で娘達に豊富な経験をさせたいと思った彼は、カレンとセイラをシルフィア学園に送った。これが、カレンがここに来ることになった経緯である。
話に戻ろう。カレン達は正門で警備員に通してもらい、また黒塗りの車に乗って寮へ向かった。十分ほどで寮に着く。二人が入る寮は、風属性の「聖コンスタンス寮」である。残念ながら光属性の寮は無い。白亜の壁にところどころ緑の石が嵌め込まれている美しい建物だ。大きさは中流貴族の邸宅程だが、七階建てなのが異様な雰囲気を漂わせている。屋根の四隅には風の女神アイリスの金像がついている。
シルフィアの寮の部屋決めは毎年大イベントである。その理由は、部屋の決め方による。例外が無いわけではないが、単純に言うと、魔力量が多ければ多いほど上階の大きな部屋が貰えるのだ。一つの寮はおよそ百人の生徒が生活できるように作られていて、様々な機能が備わっている。部屋の中でも七階のVIPを勝ち取ることは大変な名誉で、寮の中で一番の魔力量を有していることを示せる。よくあるファンタジー小説の設定では、貴族だったら魔力量が生まれた時から多い、などのチート設定があるが、この世界は皆初級レベル1から始まる。全ては努力次第なのだ。魔力には、初級、中級、上級があり、それぞれレベル100まである。レベル100を超えると、次の級に行く。そして、レベルは「魔晶石」という水晶のような魔道具で測るのだ。凄さで言うと、初級なら普通、中級なら生活を便利にできる、上級なら仕事に活かせるレベルだ。
金の蔦が這う扉を開けて、ガードマンに案内され、カレンとセイラは受付に辿り着いた。そこには、お団子にまとめたベージュブラウンの髪の毛にライムグリーンの瞳を持つ、若い女性が座っていた。
「こんにちは、初めまして。カレン・カミヤとセイラ・カミヤと申します。今日からここでお世話になります」
ちなみに彼女達はあまりこの学園で使われるアンジュロンド語をあまり話せない。カタコトでなんとか通じる程度だ。
彼女はニコッと微笑み立ち上がった。
「こんにちは。私はカメリア・アルフォンです。数年前にこの学校を卒業して、高校の薬草学を担当しています。寮母でもあるので、よろしくお願いします。早速、魔力を測りましょう!」
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