第52話 竜の突撃

 帝国軍が陣を張る平原に、連合軍の旗が林立した。竜騎兵団の兵たちは、ジークフリートを先頭に槍を構え、エミールの号令に従って密集隊形を取る。


 空は重い雲に覆われ、雷鳴が遠くで轟いた。まるでこの地そのものが、これから起こる激戦を予感しているかのようだった。


 ジークフリートが剣を高々と掲げ、鋭い声を上げた。


「竜騎兵団——突撃!」


 轟音とともに騎兵たちが一斉に駆け出す。地面が震え、帝国兵の盾列が揺らいだ。先頭のジークフリートはまるで疾風のごとき勢いで槍を突き出し、帝国兵を次々と弾き飛ばしていく。


 エミールは扇を翻しながらも、剣を抜けば流れるような動きで帝国兵を薙ぎ払い、敵の副将を一太刀で斬り伏せた。彼の美しい所作に一瞬見惚れた敵兵は、次の瞬間には地に伏していた。


 後方ではヨハン率いる白き契約の会の魔術師たちが、戦場を覆うように防御結界を展開し、帝国兵の投石や矢を弾き返した。


「王国と侯国の加護はここにある!」


 彼らの詠唱に呼応するかのように、槍の穂先や剣の刃が淡く光り、兵たちの士気は最高潮に達する。


 竜騎兵団の突撃が三度繰り返されるたびに、帝国軍の陣形は崩れていった。指揮官が討たれ、軍旗が倒れる。


「退け!退けぇぇぇ!!」


 帝国兵たちは我先にと逃げ出し、戦場は連合軍の完全勝利で幕を閉じた。

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