忘れられた箱

はるは

第1話

かつて二人の少女――簒奪者と堕落者――に拾われた、

ひとつの小さな四角い箱があった。

それは古びたゲームソフトであり、

もう誰にも呼ばれない“創造物”の声でもあった。

時の流れの中で、

彼女たちは忘れ、箱は沈黙する。

それでも箱は、

「音を鳴らす」ことだけを覚えていた。

――忘れられたくなかった。

それだけの願いが、

いつしか“呪い”と呼ばれるようになった。

人とモノのあいだに残された、

記憶の棘のような幻想譚。

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