第4話「幸せに向かう日」

道は二つある

その一方は見える道

もう一方は帰る道

どちらも間違いではない

だが、進んだだけ

帰りも楽しくなる

そういうものだ。

 憂塚先生 著 AnyWay.より引用


「おはようございます。」

「ああ、おはよう」

「先生、今日はどうしますか」

「のんきな質問だな、本分を忘れたのか?」

「いえ、確かに先生の助手の半面、やるべきことはあります、しかし目新しさに欠けるのです」

「君は仕事に何を求めてるんだ」

「いえ、決して、軽率な意味合いではないのですが、先生と居ても新鮮味がないのです、マンネリ感といいましょうか」

「まったく、熟達すると言うことは、呼吸と同じぐらい自然になるという事だ、つまり、その兆しが、今なのだよ、もうじき、悟れるさ」

「いえ、これはこの生活水準自体を改める必要があるのではないかという事です。」

「また向上心のあることを言って、悪くない、しかし生活を楽しむのも人生のコツさ」

「いえ、確かに上を目指すだけが全てではありません、しかし位を上げれば得るものは遥かに多くなるものですよ」

「そうか白瀬、君は頂上の景色こそ、最たるものだと言うんだね」

「はい、高見へ行くことは、人として品性と責任を伴い、より飛躍した選択をできるようになるんです」

「ハハハ、如何ともし難い、ダチョウの句だな」

「なんですかダチョウって」

「立ち居は美しい、しかし声を出せば醜い、それさ」

「私の発言がそんなふうに聞こえるんですかね」

「ハハ、そうだな、ま、とりわけ、今は動きたくないのさ、」

「そうですか、そうして昼間に寝て、いびきを垂れるダチョウなんですね」

「勝手に言葉を応用するな、誰でも生きるだけ、浅ましさは否めない、しかしな、誰かに物言うなら、リーダー性が必要だ、君はそれがない」

「私が率先できない、ぐうたれものだと、いうのですね、わかりました、ではそのまま自身の言葉だけを真意に私を抑制して、それがなんですか、何を産むんですか」

「ああ、失敬、白瀬、君はわかってない、人間とは口出しされると、嫌気を覚えるものさ」

「まさか生活をよりよくしようと言う、その問いを、まさか、口出しだと、実に偏見ですね、」

「いいかい、私は今、この平穏の中で、ただ時間を横目に生きたいんだ、それはつまり、放漫な態度ではない、生活自体を整えて、その上に寝そべっている、ずいぶんと苦労して手に入れた、ひと時なのだよ」

「まさか、何をやっていたと言うんですか、作家の仕事だってまだ1ページも進んでいませんよね」

「よく見てるんだな、しかし、時を要すほど、しのぎを削って奮闘している証拠さ」

「はいはい、わかりました、では先生、もう私、ご飯作りませんから」

「なぜ、そうなる、態度を代価に、意地悪をするな」

「でも先生は、自身のことを案じるだけ、それでは周りに居る人がどう思うと思いますか」

「そうか、すまない、確かに、へそを曲げては話ができないよな、では改めて、言おう、」

「はい」

「私は、足りない感じのする、過不足な生活に、夢を見るタイプなんだ、だからこっちの方が味があっていい、どうだ君は」

「まさか、そうして貪欲な方が、のりしろがあると言うお考えなんですね」

「そうさ、一度、上がってしまえば、大衆と距離ができる、つまり、コンスタンスに、一般で居る方が、世間話ができると言うもんだよ」

「そうですか、それを言い訳に、今、捗らない事に、注釈を入れるんですね」

「ハハ、白瀬よ、もっと肩の力を抜いてくれ、人生は何も、方向性が決まっている訳ではない、あるとすれば、その日に対する、躍動感だ、だからありのままで良いんだよ」

「そうやって、チャンスを掴まないまま、どこが立派だったと誇れる気ですか」

「そうだね、それは、黄昏のように淡いもの、喪失さえ私は楽しめるさ」

「もういいです、あなたには失望しました、だから出て行きます」

「待て、待て、ご飯はどうする」

「自分で作ってください」

「いいか、白瀬、理解を示すように生きなくては、赤子のしたいことはわからないんだぞ」

「何が赤子ですか、あなたは赤子だったんですか、先生」

「ハハ、そうさ、私は、泣くことしか出来ない赤子だ、だから出て行かれたら、シュンと消えてしまうよ」

「もういいです、そうやって情けに訴えて、心では楽がしたいと目論んで、バレバレですよ」

「それでもな、私は赤子だ」

「そうですか、そんな計算高い赤子がいるんですね、はぁーもう、知らない」

「待て白瀬、人間とは持ちつ持たれつ、そして先日は結婚しようと言っていたではないか」

「また物事を引っ張り出して、都合よく並べるんですね」

「君は私が好きだと言っていたろ」

「そうですが、それは、前向きにひたむきに、立派にあろうとする、先生の姿があの時、見えたからで、もうそれすらありませんよ」

「待て待て、白瀬、人は時に、迷いの中で、自分を失う、私も今、葛藤中なんだよ」

「では、これから先、またいい男になると言うんですね」

「ああ、なる、必ず、いい暮らしをできるように上を目指す、それでいいか」

「わかりました、ふたりで幸せ手に入れましょう」

「なんだまさか君は初めから、幸せのことを言っていたのか?」

「そうですよ、気づいてなかったんですか」

「ああ、てっきり、掃除とか、おめかしとかするもんかと」

「ま、それも大事ですけど、雑務をすると言う意味ではなく、二人のこれからを話していたんです、」

「そうか飛んだ、勘違いだった、すまない、また私をよろしく頼む」

「ええ、先生、幸せになりましょう」

「ああ、白瀬、私も頑張るよ」

「ええ、先生」


そして二人は幸せを目指して

動きだす。

いつかの未来に互いを思い浮べて

果てしない、愛を目指して

どこまでも風のように同じ歩幅で

生きて行く、

あなたはどうだろう。

幸せを知っているだろうか。

それではまた、愛のある日々で会いましょう。

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