第8話:地獄のキャンプ(エラー修正)と、二つの「才能(ロマン)」

「俺たちのチームへようこそ。俺が監督(マネージャー)の山田慎吾だ」

「エースのリゼッタです! よろしくお願いします!」

「……ルナリア、です。あの、太陽(ひざし)がまぶしいので、帰っても……」

「ガルムだ。で、監督(あんた)。いつになったら俺の『エラー』とやらを修正(なお)してくれるんだ?」

翌日。チームの初練習のため、俺たちは再び訓練場(ファーム)に来ていた。

新メンバーの二人は、実に個性的(エラーだらけ)だ。

気弱すぎる月光族(ピッチャー)と、喧嘩っ早いドワーフ(4番バッター)。

「(……これは、まとめるのが大変そうだ……)」

俺は、早くも胃が痛くなるのを感じた。

「よし、まずはガルムからだ」

俺は、ドワーフの少女、ガルムをカカシ(ダミー)の前に立たせた。

「いいか、まずはリラックスして、いつもの『フォーム』で振ってみてくれ」

「フン、お安い御用だ!」

ガルムが戦斧(アックス)を振り回す。

ブォン!

(……ひどい。完全に手打ちだ)

『監督の視点(マネージャーズ・アイ)』が、彼女のエラーを弾き出す。

> 【選手:ガルム(ドワーフ)】

> * 適性: 4番打者(クリーンナップ)

> * エラー(弱点):

> * フォーム(スイング):大振り(ブンブン丸)すぎる。

> * 軸足:ブレている。全く「タメ」がない。

> * 視線:標的(ボール)ではなく、標的(ボール)の「先」を見ている。

>

「(……リゼッタと(エラーの)種類が同じだ)」

こいつは、ボールを「当てる(ミートする)」前に、ボールを「どこへ飛ばすか(ホームラン)」を考えていやがる。

「ストップ!」

俺はガルムの前に立った。

「……なんだよ」

「その『フォーム』だと、課題(エラー)が多いな。当たらなければ意味がない、だろ?」

「なっ……! パワーさえあればいいんだよ!」

「リゼッタを見てみろ」

俺は、隣で素振りをしているリゼッタを指差した。

リゼッタの「フォーム」は、俺が昨日教えた通り、脇が締まり、軸がブレない、完璧な構えになっていた。

「な、なんだあの奇妙な構え(フォーム)は……」

「あれが基本だ。脇を締めて、腰で回す。まずは、あのフォームを真似てみようか。……とりあえず、素振り100回だ」

「ひゃ、100回!?」

ガルムは文句を言いつつも、俺とリゼッタのフォームを真似て、不格好な素振りを始めた。

「次、ルナリア」

俺は、訓練場の「日陰」に座り込んでいる月光族の少女に声をかけた。

「ひっ……! は、はい……!」

「(……こっちはこっちで豆腐メンタルか……)」

「とりあえず、あの的に向かって魔法(ボール)を投げてみてくれ」

「は、はい……!」

ルナリアが(日陰から)詠唱する。

シュッ。

魔法は、的のど真ん中を寸分違わず貫いた。

「(コントロールは本物だ……。だが……)」

俺の『視点』は、彼女の「球威(パワー)」のエラーも見抜いていた。

> 【選手:ルナリア(月光族)】

> * 適性: 投手(リリーフ)

> * エラー(弱点):

> * 詠唱(フォーム):魔力(チカラ)を込めるタイミング(リリースポイント)が早すぎる。

> * 球威(パワー):80キロしか出ていない。

>

「ルナリア。あんたの魔法(ボール)、威力(スピード)がもったいないぞ」

「ひぃ!? す、すみません! 私、生まれつき魔力(パワー)がなくて……!」

「違う。パワーじゃない、タイミング(フォーム)だ」

俺はルナリアに説明した。

「あんたは、魔力(チカラ)を腕だけで放とうとしてる。だから、詠唱(フォーム)に体重(チカラ)が乗ってない。リリースポイントが早すぎるんだ」

「りりーす……?」

「(説明が難しいな……)」

俺が頭を悩ませていると、ガルムが(素振りをサボって)割り込んできた。

「フン! 結局、才能(パワー)がないだけだろ! そんな豆鉄砲!」

「ひっ……! ご、ごめんなさい……!」

ルナリアが泣き出した。

「(……アカン、チームが崩壊する!)」

俺は、二人の間に割って入った。

「——二人とも、ちょっと待った!」

俺は、リゼッタに目配せした。

「リゼッタ! あのカカシ(ダミー)を狙え!」

「ガルム! 素振りで覚えた『腰の回転』だけで、あいつ(リゼッタ)の動きを真似ろ!」

「ルナリア! 泣かなくていい! 俺の声(サイン)だけ聞け! 太陽(プレッシャー)なんか見るな!」

俺は、あの『応援(チャンステーマ)』を歌い始めた。

「(♪)——勝利を掴むぞピジョンズ! 決めろリゼッタ! 踏ん張れルナリア! 叩き込めガルム!」

「「「!?」」」

光の「バフ」が、三人を包む!

ルナリアの「恐怖(エラー)」が、応援(バフ)で上書きされる!

ガルムの「雑念(エラー)」が、応援(バフ)で強制的に集中される!

「ルナリア! 俺が言った『タイミング(リリースポイント)』で放て!」

「は、はい……!」

ルナリアが(太陽の下で)詠唱する!

「ガルム! 相手(カカシ)の『芯』だけを見ろ!」

「お、おう!」

ガルムが、脇を締めた「フォーム」で戦斧(アックス)を構える!

「今だ! 二人とも、やれ!」

シュッ——パァン!

ルナリアの魔法が、今までとは違う、鋭い音を立ててカカシに直撃する! (80キロが95キロになったぞ!)

カキィィン!

ほぼ同時に、ガルムの戦斧(アックス)が、コンパクトな『フォーム』でカカシの胴体を完璧に捉えた!

「「あっ……」」

二人の攻撃を受け、カカシ(ダミー)が粉々に砕け散った。

「……やった」

「……当たった……」

二人が、あっけにとられて立ち尽くす。

「(よし……!)」

慎吾は、汗を拭った。

「(エラーだらけのロマン砲と、神コン投手(ピッチャー)……。これはポジっていいだろ!)」

慎吾は、新しくなった「チーム」を見渡した。

「エース(巧打者)」リゼッタ。

「投手(ピッチャー)」ルナリア。

「4番(大砲)」ガルム。

「(よし、攻撃陣は揃った。エルミナは『盾役(キャッチャー)』がどうとか言ってたが……)」

慎吾は、自信に満ちた新人(ルーキー)たちの顔を見た。

「(フン。攻撃は最大の防御なり、だ。この戦力なら、バルガスにも勝てる!)」

慎吾はまだ気づいていなかった。

それこそが、自分自身の、監督(マネージャー)としての致命的な「エラー」であることに——。

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